Artistic mad doctor…~博士の狂気…~
筆先で
君をなぞる…
理性を信じて
筆先で
君をなぞる…
理性の枠を超えて
超えてはならない…
これは
実験だ…
知っている
君の体は
暗闇の中
月の光を
反射する…
肌色の光…
君を
頼りに…
信じてる…
倫理の枠を超えて…
海辺に裸で立つ少女
月夜に
漣
真夏の暑さと
満月に…
それは
君だった…
融合よりも
刺激よりも
美に…
特化された
わたしの
欲望を
超えるもの…
理由をつけて
君の
体を
なぞる…
月のあかりよりも
まぶしく
筆先を
反射させながら
君を
なぞる…
これは
芸術なのだ…
わたしは
何もしない…
ただ
筆先の
君の
反応速度を
身体の
随所に
記録し…
わたしと
君との
美の
記録は…
永遠に
まわりつづける…
わたしが
知りたいこと…
不可侵な
人の心は
侵入をこそ
歓びと望み…
緊縛をこそ
心の
よりどころとする…
その理由…
実験なのだ
事故ではない…
ただ
美は
わたしの
あやまちを
後悔させつづける…
つまり
わたしは
身体の奥深い内部から
あふれる
君の
美の
虜に
なったのだ…
心奪われた…
償いと
君の
幸せを
約束する…
月あかりを
たよりに
わたしの
筆先は
何を
求める…?
身体の
反応速度と
確かな
表情筋の
偽りのなさに
満足する…
計測の末
ついに
ひとつの
化学式に
たどりつく…
これを解くには
君の
心と身体を
細部に至るまで
解いてゆかねばならない…
宿命…?
あるいは
君は
運命と感じるかもしれない…
…
命題は与えられた
わたしと君との命の間に…
この美しい化学式に
答えを求めるなら
君との過程を経なければならない…
それを愛とよぼう…
愛なくして
答えは
導かれない…
君の
心と
身体に
化学式を
ゆっくりと
浸透させてゆく…
「 博士… 。」
君の瞳の奥に
解をみた
さらに
その奥
連綿と連なる
命の螺旋が遥かかなた奥まで
つづいている…
君の姿をみた…
それは
君の成り立ち…
すべてを
解くカギ…
「すまない…。」
君を
犠牲にしてまでも
答えに
たどりつこうとしている…
許してほしい…
しかし
それは
すでに
許されていた…
彼女の身体の上に
浮かびあがる
無数の数式が
無限に
ひろがりつづける…
それらを
幻覚とよぶには
あまりに
確かで
その
ひとつひとつが
わたしの
脳のもっとも奥深くへと
たどりついた…
あぁ…
これが
君なのか…
君は
数式になった
わたしは
彼女の
愛に
答えなければならない…
そして
問いに…
もういちど
彼女を
つくりだす…
わたしが
生きている
死ぬまでの間に
彼女を
再構築させる…
彼女の
心と
たましいをも
取りもどさせる…
「博士…。」
耳の奥で
君の声が
きこえた…
幻聴とよぶには
それは
あまりに
確かで
語りかけると
すぐ
返事が返ってきそうな実感をともなった…
しかし
目の前に
君は
いない…
なぜ
もっと
彼女を
生きさせようと
しなかったのか…
数式よりも
はるかに
たいせつなものを
失った…
わたしの
償いは?
彼女の
幸せは…?
…
これより
再構築の実験に
とりかかる…
君から得たものを
君にかえす…
君を再構築させ
わたしをも再構築させる…
もういちど
出会うのだ
もういちど
はじめるのだ…
今度は
しっかりと
愛したい…
君を…
君を…