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アストリア精霊剣士譚  作者: Eclipser
8/24

初めての戦闘?

008

今日は初めて家に帰る日、ヴィオラとリンスも仕事せずに家で待機しているとの事だった。


(そういえば二人はなんの仕事をしてるんだろう)


ふとそんな事を思いながらベッドから降り、ネロから貰った服に着替える。

エクに合わせられた服はサイズもピッタリだった。


「ほう、似合うじゃないか、中々決まっているぞ」

「あはは、有難う御座います」


ニヤニヤ顏でテーブルのある椅子に腰掛けるネロを横目にエクは立ち上がる。

元々荷物が殆ど無いエクはすぐに準備が済んだ。

マスト町の方角だけは事前に聞いていたので早速向かおうとする。

するとネロが何かを思い出すように立ち上がる。


「そうだ、これをお前に託す、マーサの形見だ」


ネロが徐にホルマリン漬けされてある生物が置いてある棚の中から綺麗なネックレスを取り出した。


「それはな、フェイがマーサに贈った物だ、大事にしろよ」


それは過去に父が母に贈った物だと言う。

革の素材の紐の中央に少し尖ったダイヤのような原石が付いていて、それは微かに輝きを放っている。


「これは...」

「それは精霊の結晶という稀少な物だ、売ってみろ、お前をどこまでも追いかけるからな」

「あはは...」


(売るなんて有り得ないだろ...)


「それとな、お前の「精霊に愛されし者」について伝えておく」

「その称号は精霊と契約せずにどの魔法も使用出来るお前だけの物だ、この意味を理解しておけ」

「はい、分かりました」

「あとは...まぁいい、何かあればいつでも訪ねてこい」


ネロはそう言うとゆっくりと奥の部屋に入っていった。

エクは軽く会釈をし、マストへ向かう為ドアを開ける。

まだ朝早い時間のはずだがエルフの顔がちらほら見える、小さなエルフ民も手を振ってくれている。

エクは嬉しそうに、そして少し寂しそうに俯く事を我慢し顔を上げ、笑顔で手を振り返す。


「ブースト」


全身に魔力を流し、ブーストを掛ける。

目指す方角を見つめ、一度俯くように目を閉じ、エルフ領での思い出に耽る。


(そういえば過酷な思い出しかないな...)


そんな事を思いつつ後ろを振り向く。

そしてボソッと呟いた。


「行ってきます」


エクはそう言いながらエルフ領に軽い会釈をする、半年間過ごした家の方を見やるとネロがドアにもたれ掛かる体勢で手を挙げていた。

それを見て少し笑顔になりつつ、また目指す方角へと向き直る。

そして普段通り走ったはずがブーストが掛かっている為、驚異的なスピードで体が前へ進んでいく。


エルフ領を少し離れると道が舗装されていた為、迷う事なく進む事が出来そうだ。

まだ町らしき物は見えない、そこそこ距離があるようだ。

エクがかなりのスピードで舗装された道に沿って走っていると、前方に馬と荷台からして馬車らしき物と複数人の人影が見えた。

人影が見えた事が嬉しかったエクは何の警戒もなく近づいて行く。

そこには血を大量に流しているヒュームの若夫婦と見るからに怯えている少し着飾った金髪の少女、そして怯えつつも立ち向かおうとしている犬の耳と尻尾が生えている亜人の少女、それを悪い笑みで対峙しているいかにも悪役な中年のヒュームとその後ろには部下らしきヒュームが五人立っている、ブーストによって視力も上がっている為、鮮明に確認出来た。

慌ててエクは倒れている若夫婦のもとへ駆け寄る。

エクの速度を視認出来るほどこの場にいる人たちはステータスが高くない為、急に現れたように見えただろう。

その場に居る者全員驚いた顔をしている。

エクは迷わず深傷を負っている若旦那へと向かい、体を少し起こすように抱き上げる。


「ぐ...ぅあぐ...ぁああ...」

「静かに、もう大丈夫です」

「なあんだ貴様、お前も死にたいのかあ?」


突如現れた事で少し顔が引き攣っている中年ヒューム、しかしその右手にはナイフがあり左右に振っている。


(なるほど、盗賊か...飛び出したはいいけど怖え...)


喧嘩も碌にした事がないエクだが、ここまで飛び出した以上引くに引けない状況でもある。


(一か八か、やるしかないか)


「ヒール」


エクは中年を睨んでから無視し、まだ試した事が無いヒールを唱える。

すると深傷を負っていた若旦那の傷が見る見る内に癒えていく、千切れかかった腕もくっつく程に。


(良かった、成功だ...)


「あ、ありがとう御座います、しかし私なんかより妻と子供たちを!」

「大丈夫です、すぐに治療しますので」


エクはそう言い奥方の方へ近付いていく。

その隙にさっきまで対峙していた亜人の少女と怯えていたヒュームの少女は若旦那の方へ駆け寄る。

エクがヒールを唱えようとした時、中年盗賊の威勢のいい声が響く。


「やらせるなあ!やっちまえ!」


中年の掛け声と共に一人の下っ端ヒュームがナイフ片手にエク目掛けて走ってくる。

その時エクは驚いた、ブーストのお陰か下っ端の動きがスローモーションに見えているのだ。

エクは襲いかかる下っ端のナイフを持つ右手の腕を振り向きざまに右手でチョップするように払い退ける。


「ぎぃいいやぁぁあああ!」


エクもその光景には驚いた。

なんと30mほどの距離も飛んでったのだ。

下っ端の右腕もあり得ない角度に曲がっていて、明かに骨が折れている。

慣れない恐怖もあり、かなり力んだがそこまで吹っ飛ぶとは予想もしていなかった。

しかし冷静を装い意識が朦朧としている奥方へすぐさま振り向く。


「ヒール」

「...」

「スコラ」

「...あ、ありがとう御座います」


ヒールとスコラの回復コンボで漸く目を覚ます。

すぐに若旦那と子供たちが駆け寄ってくる。

そして奥方を若旦那に託し、軽く会釈をして盗賊たちへ向く。


「ひ...や、やめてくれ!お前には関係無いだろう!」

「子供が怯えている、もうここまで関与した、関係なくはない」


(今の若干ネロっぽいな...)


そんな事を思いつつ対峙する。


「っく...クソがあ!やっちまうぞお前ら!」

「...ぃ...ぃや...ひぃぃいい!」


盗賊頭の中年ヒューム以外の下っ端は全員猛スピードで走って逃げていく。

盗賊頭も臆したのかその場にへたり込む。


「か、勘弁してくれ、もうそいつらに手は出さねえ!」

「...どうしましょうか?」


エクは襲われていた若旦那夫婦に選択権を委ねる。

すると若旦那が勇気を振り絞るように少し声を張る。


「そ、その人たちは前々から手配されている盗賊達です、報酬金も街へ行けば出るはずです、出来れば捕らえて頂けると...!」

「なるほど...分かりました」


エクは盗賊頭である目の前の中年に意識を向ける。

ゆっくりと近付きへたれ込んでいる盗賊頭の胸ぐらを掴み軽く持ち上げ、溝にボディを打つ。

すると意識が無くなりその場に倒れ込む。


(力の加減調整は出来たようで良かった)


そしてエクは少し思考顔で若旦那の方を向く。


「すみません、何か縛る物あったりします?」


若旦那もハッとした顔で慌てて馬車から縄を取り出した。

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