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アストリア精霊剣士譚  作者: Eclipser
5/24

旅立ちまでに 1

005

全長約20mほどある地面がエクの立っていた木の上の高さまで浮き上がっていた。

それはエクがレビータを唱えた場所ごと浮き上がっていたのだ。

小さな空中都市かのようにフワフワと浮いている。

ネロは驚いた顔のままエクの方へ顔を向け、エクに問う。


「...これはお前がやったのか?」


気付けばエクは空中で上手くバランスが取れるようになっていた。

そしてゆっくりとネロが立つ場所へ移動する。


「多分...」

「...一度家の中へ戻れ」


ネロに言われるがまま家の中へ入る。

すぐにネロも家の中へ入る、そしてすぐさまテーブルがある椅子へ腰掛け、エクを向かいの席へ座れと促すように目を少し見開き顎をクイッと上げる。


「さっきの揺れはなんだったのですか...?」


リンスがネロに問うが、その問いを無視してネロは話をする。

エクを一点集中するように見つめながら。


「エク、今のはレビータを使ったのか?」

「はい、以前見たネロさんの真似をしようと」

「はっ、あれはレビータではない、アースグラビティという魔法だ、この意味が分かるか?」

「いえ...」

「あれはな、地の大精霊であるノームと風の大精霊シルフと契約した者しか使用出来ず、この世界でも片手で数えれるほどしかいない、いつの間に契約した?」

「いえ、契約した覚えはないですが...」


ネロはしかめっ面で思考する。

そして何かを閃いたのか、目を見開き更に問いかけてくる。


「ステータスに何か書いてあったか?例えばノームとシルフの契約者とか」

「...もしかして、精霊に愛されし者というのが関係しているのかも知れません...」

「なんだって?!それは本当か?!」

「はい、これを意味する事が分かりませんが、さっきのを見て少し理解しました...」

「エク、アースグラビティを使用してもあの暴れようはmp枯渇はしなかったな?一体幾つある?」


地属性魔法と風属性魔法の融合魔法であるアースグラビティ、融合魔法は全て上級認定されており、消費mpも莫大な数値になる。

レベル1のエクが使えば間違いなくmpが枯渇する魔法だった。

mp枯渇とは、意識が朦朧とし、立っている事さえままならず、ましてや空中でジタバタするなど有り得ない事なのだ。


「それが、実は数字が書いてなくて何とも...」

「それは事実か?測定不可能なほどなのか」

「はい、だと思います」

「そうか...」


(無限の事は流石に言えないよな)


ネロは更に思考する、テーブルに片肘を付き手に顎を乗せ、目を閉じているネロを片目にエクはリンスと顔を合わせる。

リンスは不安そうな顔でエクを見つめている。

するとネロが大きな溜息を吐く。


「エク、先ずは体力作りだ、下までは私が降ろす、お前は私が決めたメニューの基礎トレーニングを今日から毎日行え、いいな?」

「はい、分かりました」

「それに慣れれば次は魔力コントロールの練習だ、あと幾つか魔法も教える、いいな?」

「はい!」


正直魔法練習は有難い、それもそうだろう、誰もが憧れる魔法だ。

ここではそれが実際に使用出来るのだ、内心ウキウキしているエクを余所目にネロが立ち上がる。

そして家から出ようとするネロを目で追いかけるとネロが早くこっちへ来いと言わんばかりに力強い手招きをする。


「リンスも来い」


エクだけではなくリンスまで呼び寄せる。

三人は家を出て木の上に立っていると、ネロが風魔法で拡声器の様な風の輪を作る。


「皆んな驚かせてすまない!今のは私の手違いだ、あそこに浮かぶ土の塊は気にせず過ごしてくれると助かる!以上だ」


エクは先程自身が使用した魔法の驚きとネロの無言の圧力によって今まで気付かなかったが、外がかなり騒ついている事に気付く。

だがネロの言葉でざわざわとしていたエルフ領の民は理解したのか、少しづつ鎮静化していく。

しかし浮いている小さな島を見たリンスはネロに問う。


「あれはお兄様が...?」

「そうだ、だがヴィオラには私がやったとでも言っておけ」

「分かりました...お兄様、凄いです!」


横でぴょんぴょんとエクに向けて飛んでいるリンスを余所目に、ネロは言葉を続ける。


「ではレビータを掛ける、エクさっきの感覚で下へ降りてみろ」

「やってみます」


ネロがレビータを唱える、すると体がフワッと軽くなり、恐る恐る宙に浮くイメージをする。

そしてここである事に気付く。


(俺は何で自分自身じゃなく木の棒に標準を置いたんだろう...)


そんな事を考えながら少し宙に浮くと、先ほど咄嗟とはいえ出来ていたのを思い出すように、イメージ通りといった具合に上手くコントロールする。


「上出来だ、そのまま降りて行け」


ネロに言われるがままゆっくりと降りて行く、イメージ通りにその事だけに集中して。

地面に足が着いた途端、エクは安堵したのか着地の流れで地面に座り込む、既に自分で自身にレビータを掛けて降りていたリンスが駆け寄ってくる。


「お兄様、流石です!」

「あはは、ありがとう」


エクはリンスの頭を撫でながら感謝を述べ、リンスも撫でられた事が嬉しいのかニヤニヤしている。

そうこうしてる間にヴィオラが顔を出す。


「エク...ちゃんと起きてたのね!おはよう!」

「おはよう姉さん」

「リンスは今日も可愛いね!」

「...」


ある程度ヴィオラとリンスの距離感を理解しているのでリンスの少し冷たい反応にも特に思う事はなく、エクはヴィオラの方を見る。

ヴィオラもいつもの反応なのか特に気にする事もなく、エクが浮かせた小さな島を見つめている。


「ねえ、あれはネロさんがやったの?」

「そうだ、エクの練習用にな」

「あ!なるほど!レビータの練習ね!」

「そうだ」

「え...」


ネロはニヤニヤとエクを見やり、エクはそんなネロの顔を見て俯きながら覚悟を決めていた。

そして予想通り、エクはレビータの練習を重ね浮き島と地面との行き来をする羽目になった。

2時間ほど繰り返し、浮遊にもかなり慣れてきた頃、ネロが声を掛ける。


「よし、レビータはこの位で充分だろう、ではこれから1時間昼休憩をして基礎トレーニングを行う」


ヴィオラが持って来たお弁当を広げ、リンスは既に食べる気満々で構えている。

mp消費がない分、正直レビータの練習はかなり捗った。

その事もあってか、エクは油断していた。

この後の基礎トレーニングから本当の地獄だとはこの時は思いもしなかったのだ。

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