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アストリア精霊剣士譚  作者: Eclipser
18/24

アイラ

018

(...消えろ)


炎を纏っている剣がフッと無くなり、いつもの薄く光を帯びている剣に戻る。

エクは他の大精霊も使役出来る、だがイフリートの力だけであの威力だ。

ブーストをかけながら瞬速で動き、剣をただ振っていれば軽く一国も潰せるだろう。

しかし出来れば目立たず平和に世界を見て回りたいのがエクだ。

封印されてはいるが事実魔王は存在する。

これをすると自身が魔王になりかねないと思い今後の立ち回りを再確認する。

エクはその場に座り込み、何も書いていないギルド証を取り出す。

もしやと思いギルド証に魔力を流してみる、すると剣士と書かれていた所が精霊剣士に変わっていた。


(魔力で感知してるのか、自動更新は楽だけど凄いことばかりだ...)


ふと気付けば外は少し暗くなり始めていた。

今日は帰ってゆっくりしようとエクは荷物をまとめて剣を鞘に納め、ブーストをかける。


マストの検問所が見え始めた頃にブーストを解除、と言うのも普通ブーストは誰でも使用出来るものでは無く、mp消費も激しい為持続してかけ続ける事は不可能だからだ。


舗装された道をマストへ向かってゆっくり歩き、検問所前で渡されたバッグからギルド証を取り出して見せ、真っ直ぐ家に向かう。


「ただいま」

「お兄様、おかえりです」


帰宅するとリンスがリビングの椅子に座っていた。

店舗側は照明が付いていたのでヴィオラはそこに居るのだろうとエクもリビングの椅子に座る。

すると店舗側からヴィオラと声からして女性の話し声が聞こえてくる。


「お客さん来てるの?」

「はい、何度か来てるお客様ですけど、またいつもの様に言い争っています」

「ほぉ〜、僕も行って大丈夫かな?」

「...それは大丈夫かと思います」

「ふむ、少し覗いてくる」


エクは警戒しつつそーっと店舗側の扉を開け、確認する。

そこには洒落た薄いブルーのドレスを着た金髪の綺麗なヒューマン女性が立っていた。

右腕で豊満な胸を支え左肘を持ち左手で顎を抑えている。

そしてエクはその女性と目が合う。

すると女性は両手をパッと広げこちらを振り向く。


「あら初めまして、新しい店員さん?」

「あ、エクおかえり!この子は弟です。」

「ただいま姉さん。初めまして、エクリプサーと申します」


エクは軽く会釈する。

ヴィオラの顔を伺うと少し険悪そうな顔をしていた。


「改めて初めまして。私はノイン貿易都市で商業を営んでいますアイラと申します。以後お見知り置きを」

「はい、宜しくお願いします」

「で、話を戻すけどさっき言った商品はどれくらいの期間があれば出来るの?」

「何度も言ってますけど、作る気はありません」

「そう...、ならいつうちの商会に入ってくれるの?あ!あなたも歓迎するわよ。リンスちゃんもね」

「だからっ!わたしはこの店を離れる気もありませんし弟と妹を商会に入れるつもりもありません!」

「今よりずっと良い暮らしが出来るのに。気が変わったらいつでも連絡して頂戴よ」

「結構です!」

「そう、また来るわ」


アイラは左手をスッと上げやれやれ顔で店を後にする。


アイラとは、大陸中心部にあるノイン領の都市、ノイン貿易都市。

その都市内には凡ゆる商業が盛んでその中でもトップクラスの商会を営んでいる。

所謂この世界の大社長だ。

ヴィオラにしか作成出来ない魔導具、この腕を買われ毎度勧誘してくるらしい。

ヴィオラは母が作ったこの店を離れる気は微塵もない為、移籍する気は一切ない。


「姉さん、商会に所属するんじゃなくて、商品を提携販売したらどうかな?」

「うん、それも考えた。でもね?わたしが作った物はわたし達で売りたいの。誰とかじゃなく平等にね」

「なるほど、姉さんのやり方なんだね。差し出がましい事言ってごめん」

「ううん気にしないで、エクにもリンスにも売って貰わないとだしね!」

「でもノイン貿易都市か、行ってみたいね」

「色々見て回るんでしょう?必ず行くと思うよ。その時会っても断りなさいよ」

「あはは、分かりました」

「そういえばあの人が言ってる商品って何?」

「あーね、これ見て」


ヴィオラはカウンターの引出しからハンドガン程の大きさの銃を取り出した。


「これは魔導ガンと言って、うちの護身用にと思って一個だけ作ったの。危険だから販売してないんだけど売ってくれってうるさくって。アイラさんに見せなきゃ良かったなぁ」

「なるほど、それがあれば少ない魔力でも戦えるって事か...」

「そうそう、アズベアボアくらいなら1発で簡単に倒せちゃうのよね」

「アイラさんの目的は何だろうね」

「んー、分かんないけどこれがきっかけで犯罪が起きちゃったらお母さんに顔向け出来ないし売らないけどね」

「まぁ確かに。でも僕は安心したよ、それがあれば襲われても大丈夫だね」

「?、これが無くてもフェリが居るから大丈夫!」

「あはは、フェリは可愛いし優秀だよね」


二人はカウンターの横で寝そべるフェリを見て笑みを溢す。

エクはそのまま振り向きリビングへと戻る。

リビングではリンスが魔導コンロで食材を温めていた。


「そろそろご飯出来ますので、ヴィオラを呼んで欲しいです」

「あ、了解」

「お兄様、あと今朝アキさんとエミ、エキノちゃんに会いましたけど、顔出すのはいつ頃になりそうか聞かれました」

「げ、忘れてた。明日にでも行ってくるよ」

「そうですか、明日ならわたしも一緒に行きます」

「お、助かるよ。ありがとう」


リンスは満足そうな顔で料理を並べていく。

エクはヴィオラを呼び、ヴィオラも店を閉めてリビングに入る。


「それでは、頂きます」

「頂きます」

「頂きます」


毎度ヴィオラの掛け声で食事が始まる。

内容はほぼ同じスープに炒め物だ。

食事も食べ終え少しゆっくりしてる時にヴィオラがマジックバッグツーを取り出した。


「見て、ツーが完成したよ!」

「おお!案外早かったね!」

「!、お兄様それでは旅立たれてしまうのですか?」

「あー、うん。そうだね、明日ヨシキさんの店に顔出してそのまま行こうかな」

「エク目的地はあるの?」

「特に決めてないけど、どこから行こうかな」

「なら、アズベア王都に寄ってって。アズベア王都ギルドにショーナって名前の職員が居るからその人にこれを渡してね」

「了解、一先ず目的が出来て良かった」

「あ、お金は基本先払いだから貰ってるのよ。だから渡すだけお願いね」

「了解、ギルド職員のショーナさんね」


エクはツーに小さな小包を入れ、二階の自室へと戻る。

机の上に置いていたアキさんから貰った地図をツーに入れ、ツーと形見の剣を机に置く。

いよいよ明日から冒険が始まる、エクは少しワクワクしつつも不安もあった。

出発の準備を済ませてエクはリビングへと戻る。

そこではまだリンスとヴィオラが話していた。


「あ、エク。魔導リングはちゃんと持った?連絡手段はそれしか無いんだからね」

「魔導リング?ああ、イヤリングだね。ちゃんと今でも付けてるよ」

「ならよし、後は服だけどお父さんの適当にツーに詰め込んで行きなさい」

「了解、後で見てみる」

「お兄様、今日も一緒に寝ます」

「う、うん。そうだね、明日からは別々だから」

「はい、でもわたしもいずれは付いて行きますので」

「え、そうなの?」

「まぁここがある程度落ち着いたらね。でもかなり先だけど」

「うぐぐ...仕方ありません。でも必ず」

「あはは、リンスが居てくれると心強いけどその分家が心配だからね。無理はしないで」

「分かりました」

「じゃあそろそろ寝るよ、おやすみ」

「おやすみー」

「わたしも行きます」


エクとリンスは二人で部屋に戻る。

エクはハッとした顔で部屋を出て奥の両親の部屋に向かう。

両親の部屋の中に入り両親の似顔絵がある棚の横のタンスを開ける。

中には革で出来た鎧らしき服とスーツのような綺麗目の服、後は白の肌着が何着か入っていた。


(これは所謂レザーアーマーか、持って行こう)


エクはレザーアーマーを装着し、サイズを確認する。

それがピッタリだったのが驚いた、さすが親子だと。

肌着も綺麗目の服も合うだろうとどちらもツーに入れる。

そしてリンスが居る自分の部屋へと戻る。

暗い部屋の中、リンスはベッドに座り横の窓から外を眺めていた。

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