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アストリア精霊剣士譚  作者: Eclipser
17/24

精霊剣士誕生

017

昼前に目覚めた時には既にリンスは部屋に居なかった。

エクは寝起きの伸びをし、徐ろに立ち上がり机の上に置いてある剣を手に取り腰にかける。

部屋の扉を開けゆっくりと階段を降りる。

リビングにも誰も居なく、店舗側を覗くとヴィオラが店番をしていた。


「あ、おはようエク。遅い起床ね」

「おはよう姉さん、そうだよね。剣の稽古に行ってくる」

「はーい、あ!これ付けて行きなさい」


にまっと微笑むヴィオラが差し出したのはリンスとの通信機器だ。


「マジックバックツーはもう少し待ってね」

「うん」

「出来上がるまでこの鞄を使ってて良いからね」


そう言ってハンドバック程の鞄を差し出したヴィオラ。

エクはそれも受取りポケットに入ってあるギルド証をそこへ入れる。


「じゃあ、行ってきます」

「気を付けてね」


ヴィオラとの軽い会話も終え、エクは外に出る。

エクはリンスにも起きた事を知らせる為、魔力を流し通信機を鳴らす。


(そういえば姉さんリンスから発信するって言ってたけど、別にいいよな)


「ピー...ツー...あ、お兄様?」

「あーあー、聞こえる?」

「はい、しっかりと聞こえます」

「おはようリンス、少し町外に出掛けてくるね」

「おはよう御座います、分かりました。何かあれば通信して下さい」

「うん、ありがとう」


(これじゃどっちが上か分からないな...)


しっかり者のリンスに心配されそんな事を思いながら、エクはマスト町の外へと向かう。


「よう坊主!気を付けてな」

「おじさんおはよう御座います、行ってきます」

「おはような時間じゃねーわ!」

「あはは...ですよね」


検問所の警備おじさんに軽く突っ込まれつつも町外に出る。

検問所から視認出来ない位置まで舗装された道沿いを歩き、エクはブーストをかけ一気に走っていく。

ある程度離れ舗装道から若干逸れた周りに何もない場所まで来ると、エクは剣を抜く。

素振り100回、腕がパンパンになった頃にヒール、これを10セット繰り返す。

予定していた素振り1000回も難なく終え、次は何をしようか悩む。


(何するかな...そうだ、魔法剣ってのをやってみよう)


未だに見た事がない精霊、しかも各属性精霊の中でも頂点に君臨する大精霊と契約している事になっている。

しかしエクは直接会って契約した訳では無いので大精霊のイメージが湧かない。

今までイメージを頭の中で描いて魔法を発動していた為、どうするか悩んでいた。


(んー...取り敢えずイフリート、いでよイフリートとか...?んー...)


目を瞑り腕組みをしながら悩むエク。

全く現れる気配が無く、ただただ立ち尽くす。

すると段々頭上が熱くなる感覚になり、腕組みをやめふと上を見上げる。

そこには火を纏った3m程の人型でバッファローの様な顔をした生物が腕を組みながらゆっくり降りてくる。

エクはたじたじになり冷や汗をダラダラ流しながら静かにブーストをかける。

一瞬も目が離せない程の圧力がかかる。

火を纏った生物は腕組みをやめず熱風を放ちながらエクの付近にそっと立ちはだかる。


(我を呼んだか?)

(!...何だこれ、心の中に話しかけているのか?!)


目の前には目も口も閉じたままただ威圧的に腕を組んだまま立ちはだかる生物。

その生物が心の中に話しかけてくる。


(我が名はイフリート、我を呼んだか?主よ)

(イフリート?!主?!)


実際に会って契約した訳では無い為に初めて見るサラマンダーに若干怯えていたが、敵意も全く感じず更に主と呼んでくる。

そのせいあってか恐怖心も殆どなくなりエクは冷静さを取り戻す。

そしてエクはイフリートに一つ尋ねてみる。


(そうだ、我が力は主のみ使用できる、何がしたい?)

(凄いな...、じゃあこの剣に魔力を流し込むのは出来たりする?)

(容易い事)


すると持っていた剣が真っ赤に染まり炎を纏う。

見た感覚に熱を一瞬感じたが冷静になれば全く熱くない。


(これは凄いな、剣から力が伝わってくる)

(我の力をその剣に移した、消えろと念じればその剣は普通に戻るだろう)

(なるほど、ありがとうイフリート)

(...主も前主の輝きが見える、また発現させたい時は剣を握って我を念じろ、ではさらばだ)


エクの剣は炎を纏ったまま、イフリートは一瞬にして消え去った。

イフリートが去った事を見届け、エクは炎を触ってみる、やはり熱は感じない。


(どうゆう原理なんだこれ...)


熱を感じない為本当に炎なのか少し疑問に感じるエク。

近くにあった草に纏っている刃部分をそっと当ててみる。

すると草は散り散りに焼き尽くされた。


(!...これ炎ってレベルじゃないぞ...)


予想以上に早く瞬く間に燃え去った草を見てエクはゴクリと唾を飲み込む。

付近を見渡すと一本だけ離れた場所に生えている木があったので、エクはその木に向かって剣を横振りに振ってみる。

すると振ったモーション同等の炎の斬撃が木に向かって放たれ、斬撃は木を真っ二つに斬り、切れた上部分に斬撃が追尾するように追いぶつかった瞬間、上部分が一瞬で焼け去る。


(凄まじいなこれどうしよ...)


魔法剣と言うよりは精霊剣、火魔法を遥かに凌駕している大精霊の力はあまり多用出来ないと判断したのであった。

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