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アストリア精霊剣士譚  作者: Eclipser
16/24

変態お兄様...

016

階段下の扉を開けると左右にまた扉があった。

右はトイレ、トイレと言っても用を足すプラスチックのような便器があり、便器の横に一つのボタンがあった。

エクは気になりボタンを押すと水が流れると共に便器の穴の底が見えないくらいの空間が出来た。


(魔導具って便利...。でもどこに流れてるんだろう)


そんな事を考え次は湯浴み場の扉を開ける。

そこは3畳くらいのスペースになっており、赤ちゃん用サイズの湯船程の桶があった。

その桶の上に青いボタンと赤いボタンがあったのでこの事かと理解する。


(青はおそらく水で赤がお湯だな)


エクの中でそう解釈し、服を脱いで赤いボタンを押す。

すると桶の底からお湯が湧き水のように湧いてきて桶いっぱいに貯まった所で止まる。

エクはそれを見てまた魔導具って便利だなと頷く。


(温度も丁度良い温かさ、浸かりたいなぁ)


しかし赤ちゃんサイズなのでそこは我慢と言い聞かせ、別に置いてあった小さい桶でお湯を汲み身体を流す。

そして石鹸のような物もケースに入れられていて、泡立たない事に疑問を抱きつつ身体を洗う。

しかしネロは魔法で綺麗にしていたので久しぶりなお風呂にエクは満足していた。


(あ、タオル忘れてた)


子作りの話から逃げるように入った為、肝心なタオルを忘れている事に気付いた時は既にびしょびしょだ。

エクはタオルをヴィオラに取ってもらおうと扉を開けようとしたが、さっきの会話の流れでリンスが来る事を恐れ、別の方法を考える。


(どうしようかな...魔法でなんとかやってみるか)


四属性を扱えるエクは初めて四属性を使える事に感謝し、身体を乾かすイメージをする。

すると温かい風がふわっと全身を纏い一瞬で乾く。


(魔法をありがとう、精霊さん達)


そんな事を考えたエクは次に、洗ったけど洗えてないような身体を更に綺麗にするイメージをする。

すると若干の光を帯びゆっくりと光が消えていき、先ほど石鹸のような物を使った際に付いた若干のヌルヌル感も無くなり、全身が更に綺麗になる。


(お、これお風呂要らないな。いや、日本人としてお風呂は必須よな...)


エクはイメージすれば魔法が発動する事が分かり、喜びと共に色々と試したくなり、目を瞑りながら湯浴み場で思考しだす。

するとその時、ガタッと扉が開く音がした。


「お兄様...裸で何をしているんですか...」

「いや...開けないでよ...」

「変態お兄様...」

「う、うそぉん...」


真っ赤な顔をしたリンスはバタンと勢いよく扉を閉め、階段を上っていく音が響く。

見られたエクも赤面しながらゆっくりと服を着る。


(こんなの誰得だよ...)


エクは下を向いたままヴィオラと目も合わせず、ゆっくりと階段へ向かう。


「あ、変態お兄様!もう寝るの?」


ヴィオラが茶化すように声をかけてくる。

エクは泣きそうになりつつそれに応える。


「おやすみ姉さん...」

「あはははは、おやすみエク」


エクはヴィオラの顔を見る事も出来ずそのままトボトボと階段を上っていく。

そして真っ暗な自分の部屋に入り、夜空の星の光で見える窓際にあるベッドへと進む。

そしてエクはダイブするようにベッドへ倒れ込む。


「ぐえっ」

「へっ?!」


カエルの鳴き声のような声にエクは驚きバッと立ち上がる。

そこにはリンスがベッドの中で寝ていたのだ。

てっきり自分の部屋に駆け上がって行ったのだと思い込んでいたエクは完全に油断していた。

今は会いたくなかったリンスが寝ていたのでエクは咄嗟に部屋を飛び出る。

そして階段を駆け下りヴィオラと目が合う。


「あ、おはよう」

「いやいやいや」

「あはははは、なーに?忘れ物?」

「う、そうそう、お父さんの剣を湯浴み場前にね」

「あーね、ちゃんと肌身離さず持ってなさいよ」

「うん、じゃあおやすみ」

「うんおやすみ」


ヴィオラと軽く会話した事で何とか落ち着きを取り戻し、剣を持って部屋へと戻る。

そこにはやはりリンスが寝ている。

エクは手に持っている剣を机に置き、冷静を装いさっきは何も無かったかの様にベッドに入り隣で寝転ぶ。

リンスもそれに驚いたのか、固まったように動かなくなる。

微妙な空気感の中、ギクシャクしたくないエクは言葉を発する。


「リンス、さっきは魔法を色々試してたんだ」

「だから目を瞑っていたのですね、わたしはてっきり...」

「変な想像してた訳じゃ無いからな、そうだ、まだ湯浴みしてないだろ?」

「はい、もう明日で良いかなと思ってたりしてます」

「じゃあさ、さっき考えた魔法試してもいい?」

「?、どうぞ。え?裸になった方が良いです?」

「いやいやいや、そのままでお願いします」

「そうですか、ではお願いします」


エクは自身に試した身体を綺麗にする魔法をリンスに掛けるようイメージする。

するとリンスが着ている服ごと若干の光を帯び、綺麗になっていく。


「ぉお、お兄様これは何て言う魔法ですか?」


(!!...そういえば考えてなかったな...)


「そうだね...んー、リフレッシュなんてどうかな?」

「...とても良いと思います」

「決まりだね、リンスそろそろ寝るよ」

「はい、おやすみなさいお兄様」

「うん、おやすみ」


エルフ領から帰った初日に色々な事があったエクはどっと疲れた身体を癒すように深い眠りについた。

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