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アストリア精霊剣士譚  作者: Eclipser
15/24

リンスの行方

015

エクは不安に煽られながらマストの町中を走りだす。

町中ならばまだ良い、しかし外なら危険しかない為一旦町を出る為検問所へと向かう。


「おじさん!」

「おう坊主、どうしたそんなに慌てて」

「リンスを、妹を見ませんでしたか?」

「いやぁ、見てないぞ?」

「ここ以外に外へ出る場所ってありますか?」

「いや、マストへの出入りはここしかねぇな」

「...そうですか、有難うございます」

「もう暗くなってきたし早く帰るんだぞ」

「はい、失礼します」


ここを通っていないとすれば外へは出たのは考え難い、エクはリンスをよく知るヴィオラにある程度の目処が立っているのでは無いかと冷静になってから考えを改め、また家へと向かう。

そして家の前に着いた時、ふと川辺にある原っぱの方を見る。

そこには伏せ状態のフェリにもたれ掛かる様に眠っているリンスを発見した。

それを見たエクは安堵し、ゆっくりと近付く。


「リンス、もう暗いから帰るよ」

「ふぇ、お兄様?」

「おはよう、夜眠れなくなっちゃうよ」

「お兄様と寝るので問題ありません」

「あはは...」


リンスがむくりと起き上がり、詠唱を始めるとフェリの足元に魔法陣が現れ、フェリが飲み込まれる様に消えて行く。

しかしそれよりも寝起きでこんな事を言えるリンスを物凄く心配していた自分が少し恥ずかしくなりつつも、すぐそばにある家へと二人は帰る。


「姉さん、ただいま」

「ただいまです」

「あ、おかえりー!エク急に飛び出さなくてもリンスはよく原っぱで寝ているのよ」

「そうだったんだ...知らなくて」

「ううん、お兄ちゃんだもんね、心配するよね」

「う、うん...」


妙に冷静だったヴィオラの理由が分かり、また少し恥ずかしくなりつつも、料理が既に並んでいる食卓の椅子に座る。

リンスの隣に座り、ヴィオラは向かいに座る。


「よし、じゃあ食べよっか!」

「はーい、頂きます」

「頂きます」


リンスはお腹が空いていたのかムシャムシャとアズベアボアの肉にかぶり付き、スープで流し込む。

寝起きなのにすごい食欲だなとエクは若干呆気にとられつつも食事に手を伸ばす。

そしてある程度食べ進んでからヴィオラが口を開く。


「それで?試験はどうだったの?」

「うん、剣技でなにも出来なかったけど何とか貰えたよ」

「おおお良かったね!おめでとう!」

「当然です、おめでとうです」

「ありがとう二人とも、明日からは剣技も訓練に加えて頑張るよ」

「うんうん、旅をするならある程度は出来ないとね。お父さんの剣もそう言ってるよ!」

「うん」


エクは食事の手を止め、腰にかけてる剣を見つめ、コクっと頷く。


「まぁ今日は早く食べて湯浴みして寝なさい」

「湯浴み?お風呂があるの?」

「へ?お風呂?湯浴みは身体を綺麗に流すとこよ」


(お風呂とは言わないのかな?、でも身体を流せるのは嬉しい)


「お兄様、一緒に入ります?」

「ダメよリンス、エクは男性なのよ。子供もその内作るのだからその時にしなさい」

「あはは...って、兄妹で子供は作らないでしょ」

「え?わたし達半神族は半神族同士じゃないと子供が出来難いから兄妹で作る事が一般的よ?」

「...ぇぇぇええええ?!」

「お兄様、そんなにわたし達が嫌ですか...?」

「いや...嫌じゃないけど...って、ええええ...」

「なぁにその嫌そうに困った顔は!」

「でも、出来ないことも無いんだよね?」

「まぁそうね、お父さんもかなり頑張ったんじゃない?」

「なるほど...」


エクは驚いた、半神族な事は母がそうだった為知っていたがまさか兄妹でそのような行為をする事がどうしても抵抗があった。

そしてエクは恐る恐る二人に確認する。


「二人は子供が欲しいの?」

「んー、わたしは別に要らないかなぁ」

「わたしは将来欲しいです」


ヴィオラの返事にホッとしたがリンスの返事にはドキッとした。

そしてまた恐る恐る尋ねる。


「リンスは僕との子供でも良いの?」

「?。お兄様との子供が欲しいのです」

「...そっか...」

「何ですかその顔は」

「え、いやぁ、んー、ええええ?」

「...わたし達しか半神族は居ないので当然です、男女が出来るまで作りますよ?」

「で、また子供同士が...」

「当然です」

「そっかぁ......」


エクは前世の記憶のままこちらの世界に来ている為、自身の一般常識まるで違う文化に抵抗を感じつつも、いつか受け入れないといけないのかと諦めた。

それは兄妹と言ってもエクからすればほぼ他人な事がせめてもの救いだった。


「せめてリンスがもう少し大きくなってからね」

「はい、胸も大きい方が良いみたいです、なので大きくなったらお願いします」

「あはは...」


エクは苦笑いするしかなかった。

“いつか”と“胸が大きくなったら”の言葉を言い訳を利用しながらある程度回避しようと考え、エクは湯浴みの話を戻す。


「姉さん湯浴みってどこで?」

「ん?そこの扉を出たらトイレと湯浴み場があるよ?」


ヴィオラは二階に上がる階段下にある扉を指差し伝える。

エクは階段にばかり気を取られて気付かなかったのだ。


「そこか、トイレもあって良かった...」

「あるに決まってるでしょ...」

「だよね...」


二人はそう言い目を合わせ笑いだす。

最後のサラダを食べながら二人を見たリンスはもぐもぐしながら若干微笑む。

そしてエクとヴィオラは食べ終わり、リンスも追うようになって食べ終わる。


「じゃあ湯浴みしておいで、赤いボタンを押せばお湯が出てくるからね」

「はーい、じゃあ先に入ってくる」


(赤いボタン赤いボタン...)


エクは取り敢えず赤いボタンを押す事だけを覚え後は何とかなるだろうと思い湯浴み場へ向かう。

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