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転生幼女アイリスと虹の女神  作者: 紺野たくみ


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第3章 その19 精霊様からの贈り物

         19


「精霊様から賜った『精霊石』のレプリカをあえて用意し、アイリス嬢に身につけてもらった。それには重要な意味がある」


 エルナトさまの表情が、あらたまる。

 急に、クールな印象になった。


 これは、大公さまのご親戚である、大貴族さまとしての顔?


「ラゼル家の一人娘アイリス・リデル嬢は《世界の大いなる意思》精霊セレナンの恩寵を受け、カルナック様と魔道士協会がバックについていると周知させることだ。そのために、人目につくよう首飾りにしたのだからね」


「周知させる?」

 思わず聞き返してしまった。

 だって、よくわからなかったのです。


「わたしが、この首飾りをつけていることは、やくにたつの?」


「その通り、アイリス嬢。どんなに厳重に保持していても秘密は漏れる。ラゼル家のように重要な家であれば尚更。どこかの貴族や外国、その他の勢力が必死になって情報を得ようと手駒を潜り込ませていることは疑う余地もない。偽の情報をつかませても良いのだけど。情報を操作し、こちらの優位に事を進めるのがよいと、カルナック師匠は言われた」

 ふだんは、わりと砕けた言い方をなさる、わたしの魔法主治医エルナトさま。

 公式の場ではクールビューティーなのだろう。

 丁寧な言葉使いになればなるほど、エルナト・アル・フィリクス・アンティグアさまは、怖い。

 そんな気がするの。


 なんのことをおっしゃっているのか、わたし……アイリス・リデル・ティス・ラゼルにも、あたし、月宮アリスにも、わからないのですけど。


「アイリス嬢。あなたが精霊、しかも『第一世代の精霊の長』から贈られたものには、きわめて重要な意味がある。詳しいことは後で、カルナックお師匠様が直々にお話しになる」


 そこまですらすらとまくし立てたあとで、エルナトさまは、真面目な仮面(被っていたネコ、とも言う)を、潔くすっぱりと、かなぐり捨て。

 にやり、と笑った。

 やだ、これ。

 マッドサイエンティストとしての顔だわ!


 ええ、もうわかります! 慣れてきたから。


「さて、中庭の眺めも堪能したし、美味しいお茶もいただいたし。そろそろ場所を移そうか。エステリオ・アウルの部屋にでも」


「あらやだ妙ねえ、わたし、耳のせいかしら。いいから早く、エステリオ・アウルが作り上げた、本物の『精霊石の首飾り』が見たいって、エルの本音がダダ漏れで聞こえてくるんだけど?」


 サファイア=リドラさんの頬が、ぴくぴくしてる!


「奇遇だな、あたしもだ」


 ルビー=ティーレさんは、両手の指を組んで、パキパキ鳴らした。


「こんなに素晴らしい中庭の眺めを放っておいて、エステリオ・アウルの地下室に行きたいなんてな。この○○○○な研究バカが、エルレーン公国でも特別の大貴族様だってのが不思議でならねえよ」


「あらティーレ。いつの世も権力者は始末に負えないものと相場は決まっているわ。わたしたちみたいな平民には、なすすべなんてないのよ」

 

「待って! もう、やめていただけませんか、先輩がた。アイリスの教育に悪いですから!」

 エステリオ・アウル叔父さまが割って入る。

 まじめな叔父さま、我慢していたんだろうなあ……。学院での先輩にあたるサファイアさんとルビーさんに対しては特に、遠慮があるみたいなの。


『そうですわ!』

 風の守護精霊シルル。


『いい加減にしてくださいませんこと!』

 光の守護精霊イルミナ。


『あたしは新参の妖精だったから気を遣ってましたけど』

 水の守護精霊ディーネ。


『あ、ぼくは関係ないから』

 地の守護精霊ジオ。


『『『ジオ!!!!! あんたって子は! それでも守護精霊なの!?』』』


 守護精霊さんたち、いらだっている。

 困ったわ……。怒るわけにもいかない。この子たちのせいじゃないもの。

 悩んでいたら、どうやらサファイアさんとルビーさんは察してくれたみたいで。


「あ~、悪い悪い。あたしら調子に乗っちゃって! ごめんよ!」

 ルビーさんが率先して謝ってくれて、その場はおさまりました。


 入り口に控えてくれていたメイドさんたちには、何が起こっているのかは、わからないようです。

 のんびり午後のお茶を楽しんでいるように見えただろうけど、話しているのは機密事項だらけ。会話の内容が漏れないように、叔父さまを始め、みんな用心して遮断効果のある魔法を使っていてくれたみたい。


 メイド長のエウニーケさんにお茶のテーブルを片付けてもらうようにお願いして、あたしたちは場所を移ることにしたの。

 エステリオ・アウル叔父さまの、隠し部屋に。


          ※


 こんどは、お部屋に入るのに迷わなかった。

 叔父さまの書斎で自室である部屋の、いちばん奥の床と壁が、入り口になっていて。


 床に描かれた魔法道具の『銀輪鍵』の上に立つと、銀色の、魔法陣に似た輪が床に浮かび、地下にある隠し部屋につながっている、壁に穴があくの。

 魔力がすごく多い人しか通れない設定になっているそうだけど。


 もちろん、あたし、叔父さま、エルナトさま、サファイアさんとルビーさんは、条件に叶っている。


 家人に知られたくないことは、この隠し部屋でしか、できない。

 誰に知られてもかまわないこととか、わざと情報を流すときは、どこで何を話してもいいのだと、サファイアさんは、ちょっと怖い笑顔で言ったのです。


 考えてみると、怖いことはいっぱいあるのね。

 サファイアさんとルビーさんが護衛についてくれたのも、カルナックさまがご自分の従魔を貸してくだsったのもきっと深い理由があるんだわ。


 あたしたちは、隠し部屋に入った。


「ここは久しぶりだな」

 エルナトさまは部屋の中を見回して、嬉しそう。


「さあ、見せて貰えるかいエステリオ・アウル。魔道士養成学院にもかかわらず、ほぼ魔力を持たないテノール青年を講座に迎え入れて、こき使った成果を!」


「人聞きの悪いことを言うな! テノール君にはちゃんと自分の意思で手伝ってもらってるんだ!」


 例によってエルナトさまとエステリオ・アウル叔父さまの掛け合いが始まる。


 すると……

 部屋の奥のほうから、聞こえたのだ。

 くすくすと、

 笑い声が。

 誰もいないはずなのに!


「まったくもって、若い者たちは、面白いな……」


 低く、けれど、よく通る、楽しげな声が。


 あたしは、抱っこしていてくれた叔父さまの腕の中で、じたばたして。

 ぽーんと床に降り立った。


 誰がこの隠し部屋に一足先に来ていたのか、すぐにわかったから!


「カルナックさま!」



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