第3章 その18 レプリカとオリジナル
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あたしはエステリオ・アウル叔父さま、エルナトさまと一緒に、お父さまご自慢の中庭を眺めながら、おいしい紅茶とお菓子をいただいていた。
テーブルの脇には、サファイアさんとルビーさんもいる。
守護精霊さんたちも、いつもいてくれるし、従魔のシロとクロもいる。
きれいなお庭を見て、まったりしていた、あたしだけど。
ふと、ある疑念がわいてきたの。
もちろん、『先祖還り』の、いろいろな謎も、とても気になることだけれど。
だから、聞いてみた。
「ところで、エステリオ叔父さま」
「ん? なんだい、もっとお菓子がほしい?」
スミレの花の砂糖漬けがいっぱいに盛られた、きれいなガラスの器ごと、渡してくれる。
むうう。
叔父さまの鈍感。子供っていうか幼女扱いはやめてほしいのに。
エルナトさまも、サファイアさん、ルビーさんも、なんだか生温かいまなざしを向けているような。
「さっき、みんなと話していた、カルナックさまからの課題のことよ」
「ああ、そのことか」
「いま完成したって言ったでしょ? アイリスは三歳のときから、この、叔父さまが持たせてくれた首飾りをずっとつけているわ。精霊石というのが中に入った、黒いロケットペンダント。これのことではないの?」
細い銀の鎖を通して、いつもつけている首飾り。
黒くてつやつやした材質の、ロケット。中には透明な石が納められていて、開くと、石の表面に、青い光が浮かび上がって見えるの。
「精霊石って、とても、きれいね……」
「あ、あの……その、アイリス……」
ん? エステリオ叔父さまの様子がおかしいわ。
すると、サファイアさんが、やれやれ、と前置きして、言った。
「あのねアイリスちゃん。実はそれ、レプリカなのよねぇ」
「え!?」
衝撃発言です!
「エステリオ・アウルは細工物が得意だけどさ。精霊石と、精霊白銀、おまけに黒竜のウロコっていう特別素材だ。ひと月ふた月やそこらじゃ、できないって!」
ルビーさんは「まだ学生だしね」と付け加え、にやりと笑った。
「宝石としては本物の最高級品なんだけどね。ロイヤルブルー・ムーンストーンっていって。ロケットの黒い素材は黒蝶貝の真珠質の貝殻で、希少な品だよ。わたしが手配したんだ」
エルナトさま、誇らしげにおっしゃったわ。
そうでしょうね。
最高級品だって!
だいたい、普通に買えるものなの?
エルナトさまが大貴族だから入手できるのに違いないわ。
「どうして、レプリカを?」
そこは疑問だわ。
「それには意味がある」
エルナトさまの表情が、あらたまる。
急に、クールな印象になった。
これは、大公さまのご親戚である、大貴族さまとしての顔?
「ラゼル家の一人娘アイリス・リデル嬢は、《世界の大いなる意思》精霊の恩寵を受け、カルナック様と魔道士協会がバックについていると周知させることだよ。そのために、人目につくよう、常に身につけていてもらっているのだからね」




