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第8章 閑話 黒竜アーくんの優雅なモラトリアム

 ※ この物語をひもといている『あなた』へ。※

 

 黒髪に黒い目の、白い肌の少年が登場する。

 年齢は十二、三歳かそこら。

 もちろんそれは外見の年齢にすぎない。


 その証拠に、『あなた』を見上げる少年の顔は、妙におとなびた表情をしている。

 落ち着き払い、王者のような風格を漂わせている。

 けれども同時に、人をくったような蠱惑的な笑みさえ浮かべている。


 彼にとってこの世のすべては、遊び。本気になっても、つらいだけ。


 自分たち『色の名前を持つ竜』だけを取り残して、ヒトなんて存在は、いつかは皆、塵に還ってしまうのだと。

 無常感に包まれている少年。


 ここは、とある亜空間。

 エナンデリア大陸の東を南北に貫く二つの山脈のうち東に位置する『夜の神の座』と呼ばれる黒の山脈ソンブラの、地下深く、または遙か上空に位置する場所だ。


                ※


 やあ、ようこそ。


 はるばる、ぼくを訪ねてきてくれたのかい?

 さてさて、どこから話そうか、お客人?


 ぼくは、黒竜アーテル・ドラコー……ater draco……。

 ぼくの活躍、見てくれた?

 うん、まだ、ちょっとしか話には登場してないけどね。


 竜たちのご多分に漏れず、ぼくも、ものぐさだから。

 積極的に『ヒト』の歴史に介入するとか、面倒くさいよ。

 そんなのはセラニス・アレム・ダルにでも、まかせとけばいいのさ。


 ねえ知ってる?

 あいつと、ぼくのプログラムは、元々は同じなんだよ。


 だけどあいつは、生まれるときに、ひどい『怨み』を抱えているから。

 歪んじゃったわけだ。

 ぼくは、そういうの無いから、自由に、引きこもり生活を楽しんでるよ。


 他人事みたいだって?

 だって他人だもん。

 ぼくはセラニス・アレム・ダルじゃない。向こうは、ぼくのこと知らないしね。


 ……え、ぼくがあいつのスペアだって?

 そんな言い方、きらいだな。


 いつか、責任ってやつが降りかかってくるかもしれないけど。

 まだモラトリアムを享受していたいんだよね。


 お昼寝、午後寝、朝寝、朝風呂も大好き。

 おいしいものを食べて、面白そうな『漂着物』を集めるのが好きさ。

 青竜が住んでる水底の異界には、どこかから面白い道具とか本とか服とか流れ着くんだ。


 こんなぼくを、いつか引っ張り出すようなことがあるとしたら。

 よっぽどのことだよ。


 はあぁ。


 この世界セレナンを揺るがすような大事件?


 やだな。

 そんな日は来ないといいな~。


 なんちゃって。


 ま、いつかは起こるんだろうけど。

 そのときは、ぼくも活躍しちゃうから、よろしくね!


 自分で言うのもなんだけど、ぼく、けっこう可愛いし、役に立てる、いいヤツだよ!


 ふふん。


 セラニス・アレム・ダルが、ぼくを、どう思うかは、わからない。

 対決してみたいって気持ちも、ちょっとは、あるんだ。


 そうそう、さっきまでここで、『あなた』が見ていた物語についても、触れよう。


「そして、みんな、いつまでも幸せに暮らしました」


 ざっくりすぎる?


 そうだね、この続きは…。

 物語の主人公アイリスの物語が、彼女自身の口から語られることになる。

 あの子も苦労しているけど、良い子だから。

 幸せになってほしいなぁ。


 あ、時々っていうか、かなり頻繁にカルナックも絡んでくるんだけど、あいつは自分で勝手に出番を増やしてるんだよね……ボクが主人公の話はないのに。


 まったく、「精霊の愛し子」では主役なんだし……自重しろって。


 そうそう、

 今のサファイアとルビーではない初代のサファイアとルビー、のちに「エメラルド」になる「魔女と呼ばれた少女ルース」と、初代ルーナリシア姫は「リトルホークと黒の魔法使いカルナックの冒険」に出てくるよ。あっちはまだ、その時点までは記されていないけど。

 よかったら見てみてね。


 これは、ほんの、黒竜の独り言、ってことで。


 ばいばい。

 いつかまた、急に出てくるから、よろしくね!


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