第1章 その27 宴は続く
先日アップした27話、改稿しました。
27
カルナックさまは、完璧なまでに美しい眉を、ひそめる。
その、ブルームーンストーンのような青い光を浮かび上がらせた目で、いったい何を見ているのだろう。
あたしは震えが止まらなかった。
鳥籠を思わせる瀟洒な銀の檻。絡みつく細くしなやかな鎖。カルナックさまの身体全体を包み込む、青白くほのかに光る、おびただしい数の《精霊火》が。
どうしよう、どんどん見えてくる。こんなにたくさん……
「とりあえず、その『眼』を閉じなさい。開いているだけで魔力を消耗する。君のように保有量が多ければ問題ないレベルだが。鬱陶しいだろう? 閉じるとイメージすればできる」
「は、はいっっ。閉じる、閉じる……っと」
ぎゅっと目をつぶって。イメージする。
閉じて、閉じて、閉じて、閉じて、閉じて!
「君が『観測して』いるのは『加護』と呼ばれるものだ。常に纏っている、もう一枚の皮膚みたいなもの。私などはすでに『在る』と意識もしていないのだが、他の人から見れば、ちょっと変わった服みたいだろうね」
あれを、服に例えるとは。どんだけその状態がカルナックさまの『普通』なんだろう。こわいです。
おそるおそる、目を、あけた。
よかった!『あれ』が、見えなくなった!
「はいっ。できました!」
「その『観測眼』を意識して開く、閉じるが自然にできるようにするといいい。スキルもレベルアップするし、魔力の最大容量も上がる」
さらっと難しい課題を出された。
いいですよ、やりますとも。
あたしはカルナックさまのお弟子志望ですからね!
「はいっ!」
「返事は良いね」
にっこり笑った。
あら、急に雰囲気が柔らかくなったわ。
「ところで……そろそろ宴に集まっている客人たちにご挨拶しなければね。私の隣に座りなさい。君が魔導師協会の長『漆黒の魔法使いカルナック』の弟子になったということを今から周知しておこう。ふむ。そうだな、宴のほうはコマラパがうまく采配してくれてるから、その前に、少し話をするゆとりがあるな」
何かしら?
「イリス・マクギリス嬢。言っておくことがある。君の意識が最前列に出ている、この状態は、長く続けられない。現在の、三歳幼女であるアイリスの肉体にとって負担が大きい」
「あたし引っ込むの!? イヤです! せっかく転生したんだから! この世界を体験したいわ!」
「ああ、大丈夫。引っ込まなくてもいい」
「どういうこと?」
「最前列ではなく、アイリス、月宮アリスに次ぐ階層に在れば良い。その下にはもう一つの意識が存在するわけだが、今はまだ知らなくてもいい。ピラミッドのように、土台が一番大きいという状態は、とても安定しているから。つまり、アイリスにも人生経験を積ませてやってくれないかな。ご褒美をあげるから」
「どんな?」
疑わしそうに見つめるあたし。
「これだよ」
くすっと、笑って。
目の前に差し出されたのは。
もふもふ!
それも、三匹!
白いの、黒いの、真っ白な柔らかいの!
「えええええ何これ、反則ぅぅ~!」




