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最強令嬢は甘い言葉に弱い。  作者: 葉山 一
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噂の双子


「さっきの入学式はさすがでしたね」


ぶすくれた表情のリュカを楽しそうに見ているエリック。


「何がさすがなんだ。俺は手を振って笑っていただけだろ」


少し笑顔を作って手を振って、中身なんてあってないような祝辞を述べただけだ。


「にしても初めて僕はシエル殿下を見たけど、あまり似てないんだね。君たち兄弟は」


見た目はどちらも美しく、似たような雰囲気をしている。

ただ性格はあまり似ていない。


「シエル様の方がまだ少しお子様というか、結構気持ちがすぐ表情に出ちゃうタイプだからね」


リュカとは幼馴染のエリックは当然弟のシエルとも関りがある。


リュカ王子はいつも笑顔で優しい穏やかな方、というのが世間の声だ。

それに対してシエル王子はどちらかというと子供っぽく、荒い性格だと思われている。


「シエルは世渡りがあまり上手くないだけで、俺と比べたらよっぽど可愛らしくて素直な性格をしている!世間というのは本当に表面しかみていないっ」


「確かに、性格の悪さで言えばリュカ様の方がよっぽど腹黒でいらっしゃるのに」


「おいこら」


「冗談ですって」


ふふっとにこやかに笑うエリック。

エリックもたいがい腹黒い性格をしている。


(ユリアーナ嬢はこのことを知っているのだろうか)


少し心配になる。


「へぇ、世間では兄弟不仲説が流れてるけど、案外そうでもないのかい?」


「全然不仲じゃない…不仲なんかじゃ…」


どんどん声が小さくなるリュカを横目でみて笑いながらエリックは答える。


「どちらかといえば、シエル様がリュカ様のことを嫌っているんですよ。本当は弟のことを可愛がりたくて仕方がないのに相手してもらえないんだ」


「ち、違う!ちょっと反抗期なだけで!別に嫌われてなんか!!!」


「あははっそんなに焦るリュカ殿下も珍しいね」


エドアルドが笑うと、リュカは少し拗ねた表情で黙った。


昔はとても仲のいい兄弟だった。

いつも2人で遊んでいた。


兄弟仲が悪くなったのは、世間が本格的に跡継ぎ問題を意識し、二人を比較し始めてからだ。


シエルは正直あまり強い魔力を持っていない。

ランクで言えばBランクだった。


シエル以外の両親、リュカはAランクに対してシエルだけがBランクだったのだ。

魔法力測定の結果以降、周りの反応は大きく変わった。


『あの子は劣等生だ』


『可哀そうに、良いところはすべて兄に奪われてしまった』


そういった陰口はシエル本人の耳にも届き、深く彼を傷つけていった。

魔法大国と呼ばれるこの国では、魔力主義の面が強く魔力がただ低いというだけで、シエルは劣等生のレッテルを貼られてしまったのだ。


(逆に俺がシエルに勝てるところなんて魔力ぐらいしかないのに)


「兄弟で能力が違っても全然いいだろ…逆に違う長所を持っていたほうが支え合えるのに」


ぽつりとリュカが呟く。


「兄弟で全然違うといえば、エリックの婚約者の双子ちゃんたちもそうだよね」


「あの姉妹の場合は能力どころか、見た目も性格も正反対だけどね」


エリックが苦笑いで答える。


「なんだよ、エドもユリアーナ嬢たちに会ってきたのか?」


「帰ってきたらちょうどばったり会ってね」


あの日2人して寮に遅くまで戻ってこないと思ったら、そういうことだったのか。


「で、どんな感じだったんだ?」


「んー簡単に言えば太陽と月って感じかな」


「いや、どちらかといえば光と闇じゃ…」


エドアルドの例えにエリックが訂正を入れる。


「レディに向かって闇は酷いんじゃない?確かに無表情なレディだったけど、とても美しい女性だったよ」


「エドは女だったらなんでもいいんだろう!俺はユリアーナではなく姉の方と婚約することになっていたらと思うと少しぞっとするよ」


元々エリックは女性が苦手な質だ。

むしろユリアーナと上手くいっているのがびっくりなくらい。


(元々エリックも女に関しては俺と同じような意見だったしな)


「ふーん。でも聞いた感じ仲の良い姉妹なんだろう?そんな正反対でも上手くいくもんなんだな」


「ユリアーナはとても優しく可憐な女性ですからね!」


「でも、あの噂が本当なら将来的にはリュカ殿下の近くに来ることになるかもしれないよ。あの氷の令嬢は」


氷の令嬢?

なんとなくワードは風の噂では聞いている。

とても冷たく恐ろしいご令嬢がいるらしいと。


「ユリアーナちゃんのお姉さんのことだよ。氷の令嬢って」


「へぇ、近づいたらやばいって噂されてたご令嬢か」


「まぁ、話してみたらそんなことはないよ。ちょっと口下手なだけ」


「いやまて、あの日挨拶以外で何か会話したか?ずっと無言で睨んでたぞ」


どうやらエリックはあの氷の令嬢が苦手らしい。


「その令嬢が将来なんで俺の近くに?」


「あぁ……どうやらクリスティーナ様は今我が国にも10人程度しかいないSランクのご令嬢だったんです」


エリックはあの日のことを思い出す。

普通だったらまだ魔法の鍛錬を行っていない人間が作り出せるような魔法の質量でもスピードでもなかった。


田舎に引きこもっていたご令嬢が魔法を学べるわけがない。

しかも、魔法は独学で学べるような代物ではない。


魔力量もそうだが、魔法のセンスも桁違いだった。


ぶるっと身が震える。


「恐らく将来この国の魔法省のトップに君臨するのは彼女だと思います」


「えぇ、そんな恐ろしいご令嬢が側近になるの?」


まだ会ったこともないご令嬢に対して失礼な言葉ではあるが、正直気が重くなる。


「何考えてるかわからないご令嬢ですから、リュカ様の身が心配になります」


「こらこら、憶測だけでレディを判断するのはそろそろお終いにしようか?そんなに気になるのなら、先に仲良くなって味方につけたらいいじゃないか」


「……お前、たまには良いこと言うな」


「たまにはって何気に酷くないかい?」


「リュカ様お待ちください!本当に何を考えているかわからないご令嬢なんですよ!?考えもなく突っ込んでは危険です」


「エリック、仮にも婚約者の姉に向かって言うセリフじゃないと思うよ。不安ならエリックも今のうちに仲良くなろう」


エドアルドの提案で昼休みは噂の双子を迎えてランチをすることにした。


(あんまりエリックが脅すもんだから、ちょっと緊張してきたじゃないか)


ただSランクの人間であれば、将来王宮勤務になることは間違いない。

であれば、お近づきになって損はない。


入学式当日は全学年授業は午前中まで、簡単な教師の話が終わるとあっという間にランチの時間になった。


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