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最強令嬢は甘い言葉に弱い。  作者: 葉山 一
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新しい生活に向けて


「あぁ…可愛い妹達に当分会えないかと思うととても悲しいよ…何故神はこんな残酷なことをなさるのか…もう国の命令なんて無視しよう?2年も寮生活なんて耐えられない。うんやっぱり止めてしまおう」


過保護で超が付くほどのシスコン兄、アンリは妹たちの手を握り嘆く。


「アンリお兄様、そんなこと出来るわけないでしょう!貴族の私たちがそんなことしたら色々まずいことになるんですから!それに、お姉さまが来ないってなったら大事件になるわよ」


「大丈夫…手紙書く…」


ふわふわとした赤毛の髪がとても可愛らしく、ピンクと白のリボンがとても似合うくりくりとしたお人形のような瞳の少女がユリアーナ。

同じ髪の色だが、ストレートでさらっとした髪で切れ長の目で無表情な少女がクリスティーナだ。


この正反対の外見と性格のグレンウィル家の双子といえば社交界では結構名物になっていたりもする。


とは言っても、妹のユリアーナはよくパーティー等に顔を出すものの、姉のクリスティーナはそういった場にはほとんど顔を出さない。

噂だけは知っているが、クリスティーナの顔を知らないという人も少なくはない。




魔法大国といわれるソレイユ国。

この国では魔力の量に応じて子供たちがA~Dとランク付けをされ、Bランク以上の魔力を保持する子供は2年間、国が運営する魔法学校へ入学することが義務付けれらている。


魔法大国とは呼ばれてはいるが、近年魔力を保持する子供が減っている。

それでも近隣国に比べるともちろん発達はしているものの、Dランク所謂魔力が全くない子供は6割を超えているのが現状だ。


そんな中、魔法省や魔法騎士などの職に適合する人間を正しく育成するために用意されたのがこの魔法学校の制度だ。


少しでも可能性があるBランク以上の子供は平民貴族問わず、必ず全員召集されることになっている。


グレンヴィル家は代々南の国境に近い領地を治めている伯爵家だ。

とても豊かとは言い難いが、それなりに資源は豊富で領民が飢えるような心配はない程度に上手く運営は行っている。


国境が近いということもあり、たまに隣国の野蛮人が襲撃に来たりすることもあるが、そこらへんも国に頼ることなく、自分たちで対処できるくらいには、田舎といえどしっかりとした地域だ。


「私がいない間、自警団の方はお願いします…」


「クリスお嬢様!ご心配は無用です!私、自警団団長ジャンにすべてお任せください!!」


クリスティーナがちらりとジャンを見ると、視線の先の20代半ばくらいの好青年が敬礼をした。


「お姉さまが心配しなくても大丈夫ですわ。彼らもだいぶ成長しましたし、元々最近はお姉さまの出番も

なくなってきていたではありませんか」


「うん…でも、いざって時に守ってあげられないのは心配」


「クリス、お前が強いのは重々承知だが、お前は自分が伯爵令嬢だということも忘れないでくれよ…立ち上げ当初は人手が足りなくて色々お願いしてしまったが、今はしっかりと機能しているし、そっちの仕事はやらせてあげられないぞ」


アンリがクリスティーナの頭を撫でる。


実をいうと、少し前までは治安が悪く、安心して過ごせるような地域ではなかった。

それが改善され始めたのはここ3~4年くらいの話だ。


治安の悪さに悩んでいた父に、当時12歳だったクリスティーナが進言したことがきっかけだった。


『国が守ってくれないなら、自分たちで守ればいい』


父は大変驚いた様子ではあったが、幼い娘から提案される案はとても現実的で実行可能な策だった。

クリスティーナの武勇伝は数多く存在する。


(前世の記憶があったからこそ出来たことばかりなんだけどね)


とは口が裂けても言えないが、大事な家族や領民を守れたのであれば、悲しい過去を思い出してでも前世の記憶が戻ったのはよかったのかもしれない。


「さぁさぁ、そろそろ出発しないと」


母がそう言ってお弁当を手渡す。

学園では寮生活になる為、母の手料理は当分食べれなくなるなぁ。と思いながらそのお弁当を受け取る。


母は伯爵夫人だが、料理が好きでよく作ってくれる。

料理長の食事ももちろん好きだが、母の食事もとても気に入っている。


(日本食とは違うけど、お袋の味って感じがするし)


まぁ、前世ではお袋の味というものを知らないのだが、そういった暗い話は止めて、二人は馬車に乗り込む。


「お父様、お母様、お兄様!それでは行って参ります!!」


ユリアーナが元気よく手を振りながら馬車に乗り込む。

クリスティーナはぺこりとお辞儀をして小さくいってきますと呟いて馬車に乗った。


(ユリアーナがいるとは言え、この世界の学園生活はいったいどういうものなんだろう…少し不安だな)


人見知りが激しいクリスティーナにとってはかなり不安な2年間である。

せめて一人じゃなくてよかった、と大きく安堵した。

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