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最強令嬢は甘い言葉に弱い。  作者: 葉山 一
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私の家族

私には前世の記憶がある。

辛くて悲しい過去。


でも今世では素敵な家族に恵まれて

私はこの家族を一生守りたいと思った。


私が前世の記憶を思い出したのは、約10年前。

まだ6歳の時だった。


兄と遊んでいる時に、私が階段から足を踏み外して落ちてしまったことがきっかけだった。


私は頭を強く打ち、丸3日も寝ていたらしい。


『甘えるな。強くなれ』


『泣く暇があったら鍛錬をしろ。時間の無駄だ』


見知らぬ光景。

知らない男の人から言われる厳しい言葉。


知らない人?

違う、本当はよく知っている。


私の大嫌いな…とてもとても厳しい父親。


剣道一筋だった父。

自分にも子供にも厳しい父親だった。

私がどんなに大会で優勝をしようとも、今まで一度だって褒めてくれたことはない。

当然だと呟いて、休むことなくその足で道場に向かい、次の練習に臨むのだ。


どんなに勝利しても、優勝を飾っても全く笑わない。

ただただ目の前の相手を無表情で倒していく様を見て、世間は私のことをこう呼んだ。


『冷酷な侍』と。


私に心が休まる時間などは一切なかった。

友達も作れず、ただただ剣道だけをやってきた。

むしろ剣道しかやらせてもらえなかった。


一度だけ、何もかも嫌になって稽古をサボったことがある。


その時は竹刀で何度も殴られ、暗い物置に閉じ込められ、食事も十分にあたえてもらえなかった。


誰かが助けてくれるわけもなく、ただひたすら痛みに耐え、暗い倉庫でただじっと待っていた。

余計なことは言わず、ただただ従うだけ。

そうしないと殺される。本気でそう思った。


(あぁ、なんでこんなことをわざわざ私は思い出してしまったんだろう)


思い出す必要なんてなかったのに。


次に目を覚ますと、まず最初に見えたのは、心配そうに私を見つめる兄と泣きそうな顔をした双子の妹の顔だった。


「お姉さま!お姉さまが起きました!!」


妹のユリアーナが叫ぶ。


「クリス…良かった…僕がついていながらごめんね。本当にごめん…」


アンリお兄様がぎゅっと手を握る。


(あぁ、今世ではなんて素敵な家族に恵まれたんだろう)


私はお兄様の手をきゅっと握り返した。


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