それから
「終わった」
自分でも驚くほど大きな声が出た
そりゃそうだ
やっと洗濯が終わり時計を見たら日番も終わりの時間だった
「柚奈〜帰ろ〜」
ウキウキ気分の私は柚奈に抱きついた
「もー暑いから離れて」
「相変わらずだな」
私達は毎回こんなことをやっているのだ
「柚奈好きだもん」
「うちも凜華好きだよ」
「うわっ」
少し引く仕草をした優羽
「あ、引いた〜」
「そろそろ慣れて」
「はーい」
というやる気のない返事と同時に
「生徒会室に戻るのが最後の人が鍵当番」
とだけ言い残して走っていった
「あ、待て!優羽!」
私は叫びながら優羽を抜かすべく走った
「はい、凜華お願いします」
結局鍵当番は私か
長距離は得意だが短距離は大の苦手
合宿棟から生徒会室はあっても300m
途中に階段あるけどね
「長距離だったら負けない」
「確かにね。でも短距離遅すぎるんだよ」
「認めるけど」
語尾を小さめに言い、生徒会室のドアを開けようとした時に
「柚奈も行こう!」
と、割と大きめの声で言った
教室の3分の2もあるのか微妙な生徒会室で出す声ではないんだけどね
「もー声でかい」
2人からのクレーム
「1人じゃ寂しいし」
「わかった行くから
じゃーね優羽」
「バイバイ優羽」
「おぅまた明日」
そう言って終わった今日の仕事
鍵を返し終わり、リュックを教室に取りに行った時
「あ、凜華!ワッペン手伝ってくれない?」
クラスメイトに捕まってしまった
「いいけど?」
私の学校では体育祭でワッペンを作るのだ
ワッペンを体育着につけて競技をする
蛍光のフェルトとか使ってるクラスはすごく目立つ
「ごめん、柚奈
ワッペン作らないといけないんだった」
「そう、うちも」
どのクラスも大変だな
そう思いながら下書きをしたぐでたまを切った
「終わったー」
やっと終わった
クラス、40人分を部活のない10人で作るのはどうにも厳しかったらしい
「最終下校時刻過ぎてんぞ」
「やばっ!」
日番の先生が下の階で呼びかけているのが聞こえた
「早く帰ろう
良かった階段の近くのクラスで」
階段がなければ下の声なんて聞こえないから
そう言ってダッシュで校門から出た
「もう疲れたよ」
「あ、お疲れ様凜華」
「あ、千夏〜」
丁度部活の終わった千夏が帰るところだった
「美波達もいるって事はワッペン?」
「お!正解!」
美波は私のクラスの体育委員
「凜華帰ろ」
「もちろん!」
これから長い長い道を歩くのかと思うと憂鬱だけど
「疲れた〜」
「凜華はいつも疲れてるよね」
「そりゃ15分も歩けないから」
やっとの思いをし、駅にたどり着いた
「優羽は帰ったん?」
「日番が終わって帰ったよ
ワッペン作りサボったよ
明日お仕置きしないとね」
声調が明るくなったのは自分でも分かった
ただその理由は分かんないけど
「長田とめっちゃ仲良いよね」
「うん!ってか生徒会はみんな仲良いよ」
生徒会に入って後悔したことは…
人間面ではないかな
勉強面では後悔しかしてないけどね
「なーにニヤけてんの」
「え?あ、」
生徒会の事考えてたらニヤケてたらしい
恥ずかしっ
「耳赤いね可愛い」
千夏がめっちゃからかってくる
「もーうるさいな」
少しすねてみると
「あ、拗ねてる凜華」
千夏ではない声が聞こえた
「優羽」
めっちゃびっくりした
「三吉にいじられたのか?」
「うちは何もしてないよ
凜華が勝手に」
そう言って2人して私のことを笑った
「もー」
「次は坂奈〜坂奈〜」
私の声と被せるように最寄り駅を知らせるアナウンスが聞こえた
「神は俺たちの見方をする。な」
優羽は爆笑し始めた
「明日覚えてなさいね」
そう言い残して電車から降りた
家に帰っても優羽のことが忘れられなくなっていた
「千夏のせいじゃん」
ぼそっと呟く
幸い自分の部屋にいるため誰にも聞かれてない
何故か明日が楽しみになってきた
いつもと変わらずだと言うのに
ん?いつもと変わらず?
「あー、体育祭じゃん明日」
今度は近所迷惑になるほどの声が出た
「やばい、体育着にワッペン縫い付けないと
あ、学級委員の集まりあるし
明日早起きだったー」
一気に絶望が押し寄せてきた
縫えない男子のを女子がやらなくてはいけない
私は優羽と奏芽のだ
3人分…
今日はALLかな
大きめの溜息をつき机に向かって縫い始めた