太陽神からの賜物~光のミニヨン、闇のルージュリアン。
太陽神からの賜物~光のミニヨン、闇のルージュリアン。
マナトリア朝暦995年。 MH-995
《梟ふくろうの森。
(((カーン カーン)))
鬱蒼うっそうとした木々が繁る梟ふくろうの森に斧を振るう音が響く。
『あなた…少しお休みになったら』
夫である天人ミストラルの額から流れる汗を拭き取る妻の美空。
二人には五歳になる息子の翔ブァンがいた。
ブァンは生まれつき、足が不自由で未いまだに立って歩くことができずにいた。
そこで、父のミストラルは梟の森にあると言われる聖木で、車椅子を造ることにしたのである。
草木をかき分け斧を振るっては、辺りを見回すミストラル。
『これほど探しても見付けられないとなると、聖木の話は、やはり伝説上のお伽噺おとぎばなしだったのかもしれない…』
ミストラルは、ひとつ大きく溜め息を吐いて、近くの木に寄り掛かった。
美空がミストラルの寄り掛かった木の根本を指差し囁ささやく。
『あなた! その木の根本、青白く光っているわ。』
美空の、その声に振り返った ミストラルは、光る木の根本に斧を振るった。
(((カーン カーン))
『聖木の光ルミエール…間違ない!』
『この木で、ブァンの車椅子を造ることにしょう!』
ミストラルは手早く聖木を切り出し車椅子を組み立てていった。
『あなた…車椅子を聖木で造ると太陽神からの賜物があると以前、私に話して下さった事がありますね…』
『私の願いが叶うかしら…』
ミストラルは、美空の方を向いて深く頷うなづいた。
美空は笑顔を浮かべて、水を汲みに近くを流れる小河の方へ駆け出し、水筒を水辺に浸した。
すると美空の手元に、上流から竹で編んだ籠かごが流れ着いた。
籠の中を覗くと、沢山の花に囲まれた女の子の赤ちゃんが満面の笑顔で、こちらを見ていた。
美空は、思わず大きな声でミストラルに声を掛けた。
『あなたー! こちらへ来てくださる!』
ミストラルは車椅子を造る手を休め、美空の元へ駆けつけた。
二人は竹籠の中で笑っている赤ちゃんを見詰めて、その後、視線を合わて、そっと呟いた。
『ブァンの妹ができたね。』
『あなた…この子の名前は花ミニヨンにしましょう。』
その時、梟の森、空高く虹の光輪が現れた。
『太陽神様、天からの賜物と祝福に心より感謝いたします…』
ミストラルと美空は、その場に膝まづき
天を仰ぎ祈った。
…………………………………………………………………☆
その頃、王都エマールでは……☆
《王城.ガリウス王の寝室。》
『私は、もう、そう永くは生きられまい…』
『ドンデン……あの者が聖剣エメダリオンを携えておるとは夢にも思わなかった……』
『闇と光、二振の剣を同じ国に置くと、滅びもたらす。』
『彼の者と共に聖剣エメダリオンは、シャンソニアへ留め置く。』
ソフィア妃の手を取り、微かな声で囁く様に話すガリウス。
かつての、勇者の姿の片鱗も見られない痩せた姿となっていた。
王宮医師のホーミンがガリウス王の脈動を計る。
『王様、余りお話しを、なさらない方がよろしいかと…お身体に障さわります。』
ホーミン医師は、いつもの様に傷口に塗り薬をして包帯を巻き、飲み薬を調合し器に注ぎソフィア妃に手渡した。
『ホーミンよ。、金は、いくらでも出すゆえ、どんな遠方からでもよい、良薬を調達してくれぬか……』
ソフィア妃は、痩せ細ったガリウス王に器に満たされた薬を飲ませた。
ホーミン医師はソフィア妃の願いを汲み王の寝室を出た。
『まだ、死なれては困る…』
『わしの、量子理論が正しい事を世に知らしめるためには、まだ、金が足りぬ。』
『後、五年もすれば、わしの孫、愛娘まなむすめが支配する理想郷アルカディアができあがる。』
『わしも、齢よわい65じゃ…愛娘の喜ぶ顔を見るまでは死ねん!』
ホーミン医師は、腰を曲げて杖を付きながら階下にあるロィヤ王子の部屋を訪ねた。
((コンコン……))
ドアの磨りガラスに写る影を部屋の中から見ていたロィヤ王子は、無言でノブを引いてホーミン医師を招き入れた。
『ロィヤ様…もう間もなくで、ございますよ。』
『あなた様が、この世界を支配する時代が直ぐ側まで来ております。』
『わたくしの孫娘、ルージュリアンが、どうしても、あなた様と添い遂げたいと申しております。』
『町娘という身分を承知で、お願いしております。』
『この、余命、幾ばくもない年寄りの願いを聞いてくださるのであれば、あなた様を帝王の座へとお連れいたします。』
ホーミン医師は、そう言うと杖を、ひと振りして叫んだ。
『出いでよ! 闇の王冠!』
『大跳躍クオンタムリープ!』
すると、ロィヤ王子の前にある円卓に、天上の宝石アルビレオ王冠が姿を現した。
赤と青の二重星の輝きは、真理の言葉と量子理論の申し子を現していた。
ホーミン医師が王冠の二重星を指差した。
『この青い星は、あなた様です。』
『そして、隣に寄り添う赤い星は、わたくしの孫娘、ルージュリアンにございます。』
『この王冠は、二人が一つになつた時、無尽蔵むじんぞうの力を発揮いたします。』
ロィヤ王子は、深く頷いて、ホーミンに応えた。
『必ずや、ルージュリアン殿を、私の妃にいたします!』
『血の契約により宣誓いたしましょう!』
ホーミン医師は懐刀を取りだし、自分の掌てのひらを、わずかに切り円卓に置かれている王冠に注いだ。
その後、懐刀をロィヤ王子に手渡した。
ロィヤ王子も、同じ様に掌てのひらをわずかに切り王冠に血を注いだ。
『契約は、成りましたぞ!』
『この、ホーミン、身命を尽くして、ロィヤ王子にお仕えいたします!』




