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クレマチス~老師と共にロレンソを去る。03

クレマチス~老師と共にロレンソを去る。03



ロイヤル三世、治世暦三年【AB-03】





《漁村、ロレンソ》



痩せた白髪頭の老人がロレンソ湾の岸壁に座り、海の底で輝く美しい珊瑚帯エメラルドリーフに見入っている。



折吹く海風を楽しみながら、お気に入りのパイプ煙草をふかしている。



その先から出る煙の輪が、隣に座っている孫娘の方へ流れてゆく。。。



『この村も、昔はもっと賑やかだったんじゃが……』


『若い衆は、ほとんど戦に刈り出されて残っているのは、年寄りと子供だけじゃ…』


水平線に目をやる老人ドンキーが、となりで釣竿を垂れる孫娘パピヨンに呟いた。


『お前も、まもなく砲術学校卒業じゃのう~』


『やはり、皆と同じように、離宮仕えを考えておるのか?』


パピヨンは竿を上げて針の先を見ながら答えた。


『わたし、じっちゃんの後を継ぐ気は更々ないからね~』


『海賊の娘て、皆から言われて、肩身の狭い思いをするのは、もう懲り懲りだから~』


『パピヨンよ! 何度言ったら分かるんじゃ、海賊ではない、義賊じゃ!』


パピヨンは針の先に着けてあった餌が無くなっているのを見て、ひとつ、ため息を吐いた。


『また、餌だけ持っていかれたー!』


困惑の表情を見せるドンキー。


『お前は、いっも人の話しを聞かぬのう~』


『おや?……珍しい事もあるもんじゃ』


岬の小高い頂き、見晴らしの丘に立つシャンソニア離宮を見てバルトが呟いた。


『どうしたの? じっちゃん。』


パピヨンも、ドンキーの視線の先に目を移した。


『この片田舎へ何の用じゃろう?』


『あの、銀翼の機体は、確か双剣のバロン』


『帝国機と、一緒になって離宮へ降りたようじゃ……』


『帝国のスパイの噂は本当だったんだー!』


暫くした後、パピヨンが離宮を指差して、驚きの声を上げた。


『あー!、だれか、離宮の窓から海に落ちた!!』


『じっちゃん! わたし行ってくるー!、助けなきゃ!!』


『気をつけるんじゃぞー!』


走り出すパピヨンの背中に、ドンキーが声を掛ける。


岬の下、人が落ちた海の辺りを目指して全力で駆け出すパピヨン。


馬車が、砂ぼこりを上げ、パピヨンの横を通りすぎる。


馬に、激しく鞭むちを入れる長い白髪と白髭しろひげを蓄えた老人。


パピヨンに視線を移して、過ぎ去っていく。


息絶え絶えで、岬の下の海辺まで辿り着いたパピヨン。


近くに落ちていた豪華な装飾が施された竪琴を拾い、辺りを見回す。



美しい女性を抱えて馬車に乗せ、馬の踵きびすを返して鞭を入れ、走り出す白髪の老人。


パピヨンの前で老人が手綱を引き、馬車を止めた。


老人はパピヨンが持っている美女の竪琴を受け取った。


その後、肩掛けの袋に手を伸ばして、七色に輝く石ホリーロックをパピヨンに手渡した。


『王都、エマールへ行け……お前の未来はそこにある。』


再び走り出す馬車を横目で見送るパピヨン。


『あれは、クレマチス姫!』


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