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掌編小説集7 (301話~350話)

フラストレーション

作者: 蹴沢缶九郎

「やあ、どうもお久しぶりです」


道を歩いていると、前方からやってきた四十代半ば程の男に、すれ違いざま声を掛けられた。男の顔を見るが、一体何処の誰であったか、思い出そうとするも心当たりがなく、そんな私に構わず、中年の男は続ける。


「いやぁ、本当に懐かしいなぁ…。十年ぶりになりますかね?」


「え、ええ…、そうですね…」


本当に誰なのだ。いっその事、「あなたは誰ですか?」と聞いてしまおうかとも思うが、にこやかに、とても懐かしそうに話す男に、そんな失礼な事を聞いてしまって良いものなのか…。

私は、過去にこの男と会っているのだが、一方的に忘れてしまっている可能性もある。そうだった場合、私はこの男を傷つける事になる。いやいや、そんな失礼な事はとても出来ない…。

だが、例えば、この男が私を誰かと人違いしているという事も考えられる。その場合はどうだ…。言わない事の方が失礼なのではないだろうか…。間違いを指摘するのは男の為であり、優しさである。

でも待て、指摘した後はどうする。お互い気まずくないだろうか…。知り合いと思い込んでいた相手が見ず知らずの他人で、急に間違いを指摘されるのだ、それはさぞ恥ずかしい事だろう…。私も気まずい。

でも本当に男が正しかったとしたら…。



「…ではまた」


そうこうする内に、中年の男は軽い会釈をして去っていった。

男の後ろ姿を見送りながら考える。私は男に聞くべきだったのか否か、どちらの勘違いなのか、一体あの男は誰だったのか…。私の心を、濃い霧となったフラストレーションが支配した。


この濃い霧のモヤモヤを晴らす為に、私が取った行動は一つだった。前方からやってきた見知らぬ青年に声を掛ける。


「やあ、どうもお久しぶりです」

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― 新着の感想 ―
[一言] 私は、固有名詞特に人の名前出てこない病 で、あせります。でも、若い人に声をかけても、”人違いです”と断定されそう^^; 同年代でボヤっと歩いてる人をターゲットにしよう
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