エピローグ ~2015年 2月4日~
~2015年 2月4日~
「…まぁ、こんな感じだ。お前らの望みどおり墓を作ってやったから、そこで仲良く喧嘩でもしてろ」
榊は立ち上がって、体についた雪を振り払う。
思いのほか長居をしてしまったようだ。体の芯から、寒さが染み込んでいるようだった。
「じゃあな。気が向いたら、また来てやるよ」
榊は身を翻して、ダリオ宮から去っていく。
一度だけ、振り返った。花束が添えられた墓と日本酒が置かれた墓が、雪の中で静かに佇んでいる。
「…冥福は祈らないぜ。だってお前らは2人だ。どこに行ったって、幸せに暮らしていけるだろう」
目を細めて、榊は踵を返した。
足跡のない真っ白な雪を見て、榊はもう一度泣きそうになった。
了
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・後書きめいたもの
ここまで読んでいただいて、本当にありがとうございます。この作品は、自分が急性期医療に携わっていたときから温めていたもので、実際に形になるまで2年かかりました。
毎日のように救急患者が運ばれて、医者や医療スタッフは文字通り、身を粉にしながら職務を全うしています。彼らがどのような心境で働いているのかわかりませんが、少なくとも自分は死に物狂いで働いてきました。ミスしても言い訳ができず、風邪であっても休むことは許されない。絶え間なく運ばれてくる患者を前に、一人のスタッフの都合などまるで意味がないのです。働いて、食って、寝れるときに寝る。それが全てでした。
そんな時に、ふと思ったのです。こんなに大勢の患者ではなく、たった一人の患者のために働いてみたい、と。その人の幸せのために、医療スタッフとして最善を尽くしたい。そんな想いが形となって、この作品ができあがりました。少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
少し手を加えたら、どこかに応募しようと思っています。もしよかったら、直したほうがいいポイントや感想などを書いていただけたら嬉しいです。
本当に、ここまで読んでいただいてありがとうございました。
敬具