~2014年 6月3日~
~2014年 6月3日~
6月の上旬。
気温は少しずつ上がり、夏が足音を立てて近づいてくる。
太陽はいつもより高い位置に止まって、じりじりと地面を照らしていた。
もう少ししたら、蝉が騒ぎ出す夏が来る。
あつい、あつい、夏が来る。
「お世話になりました」
病院の玄関には、複数の病院スタッフと1人の患者がいた。
柊未羽がスタッフに向けて頭を下げている。服装は空色のキャミソールと長めのロングスカート。肩には白色のカーディガンを羽織っている。
「元気でね」
「体調に気をつけて」
「たまには検査入院に来てもいいよ」
病棟の看護師、主治医の北部長。受付の事務員に、そしてなぜか心臓血管外科の榊までいた。そこに雨宮の姿は見えない。
「はい、また何かあったらお願いします」
笑顔を浮かべながら、玄関に横付けされた車に乗り込む。鞄を後部座席に入れて、未羽自身は助手席に座った。
「それじゃあ、運転手さん。出してください」
未羽はシートベルトとして、運転席へと笑顔を向ける。
すると、とても不機嫌そうな声が返ってきた。
「……いつから俺は、お前の運転手になったんだよ」
そこには顔をしかめてハンドルを握る、雨宮の姿があった。
「いいじゃない。私を守ってくれるんでしょ。安全運転でよろしくね」
「ふん」
諦めたようにため息をつきながら、雨宮は静かにアクセルを踏みだした。




