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~2014年 5月14日~

~2014年 5月14日~


 5月も中旬になり、赤木山の桜も散って、若葉が芽吹く季節となっていた。肌寒いということもなくなり、朝方は爽やかな空気に包まれる。

 だが、そんな季節の移ろいなど、空調が完備されている病院内では関係なかった。いつだって患者が過ごしやすいように、冷房や暖房をつけているからだ。季節感を感じないのは働いている側も同じで、1年中を同じ服装で過ごせてしまう。そんな白衣や手術着も、病院側が洗濯してくれるおかげで、いつでも清潔な服装でいられる。そうでなくては、掃除も洗濯もできない榊が真っ白な白衣を着ている理由などない。

「でさ、雨宮はどう思っているわけよ?」

「何の話だ?」

「惚けんなって。4階看護師の下澤ちゃんだよ。向こうは乗り気なんだろ?」

「だから何の話だ?」

 雨宮は電子カルテから目を離して、隣に座る榊のほうを見る。

 ICUのナースステーション。雨宮は時間が空いたなら、ICUを覗くようにしている。必ずといっていいほど、自分の担当の患者がいるからだ。

「俺達の間じゃあ、結構な噂になっているんだよ。実際のところどうなんだよ。下澤ちゃんと付き合ってもいいとか思ったりするわけ?」

「下澤? 誰だ、それは?」

「4階の看護師の下澤ちゃんだよ。あの可愛くて、目がくりっとしている」

「ふむ。覚えてないな」

「そんなことはねぇって。よく思い出せよ。今年で2年目の若い看護師で、よくお前のところに顔を出しているだろうが」

 榊に説明されて、雨宮は少しだけ考え込む。やがて、その人物に思い当たり、納得したように頷いた。

「あー、413号室の受け持ちの看護師か」

「そうそう」

「点滴を間違えて、俺のところの平謝りに来た看護師だな。そのあとも何度も小さなミスを重ねている」

「え?」

 間抜けな顔をしている榊に、雨宮は腕を組んで唸る。

「あの人はよくないな。確かにミスは誰だってするし、決してなくなるものではない。だが、失くそうという努力をしないのは問題がある」

「い、いや。そんなことじゃなくて、もっと違うことを―」

「今度、看護部長に会ったら注意してもらうように言っておこう」

 そう言って、再び電子カルテに向き合ってしまう。

 そんな雨宮を見て、榊がため息を漏らした。

「なぁ、雨宮。前にも言ったと思うが、仕事以外にも目を向けたほうがいいぞ」

「たしかに以前聞いたな」

「だろう。だったら―」

「だが、それと下澤看護師とどう関係があるんだ?」

 榊の言葉を遮るように、雨宮が言った。自己主張の強くない雨宮にとって、それはとても珍しいことだった。

「別に下澤看護師に限ったことではない。今の俺は、女性と交際する気がないというだけだ。噂をしているやつらにも、そう言っておいてくれ」

「あぁ、わかった。だがな、雨宮」

「何だ?」

「女と付き合う気がないなんていわれると、男となら気があるように聞こえるぞ。お前はそっち系か」

 榊の言葉に、雨宮はキーボードを打つ手を止めた。

 そして、蔑むような目で自分の同僚を見つめる。

「……たしかカテーテル室の奥に、使用期限が切れた高カリウム製剤があったな。お前も知っている通り、高濃度のカリウムは心臓を止めることができるんだ」

「俺が悪かった! 二度とこんなことは言わねぇ!」

 榊が凄まじい勢いで頭を下げた。

 そんな同僚の姿を見て、雨宮はすぐさま電子カルテに目を戻す。患者氏名とIDを入れて、今朝の採血結果を表示させる。そして、画面上に羅列されている数値を見ると、雨宮は思案顔で目を細めた。

「検査結果か?」

 さっきまで頭を下げていた榊が、雨宮を押しのけるように画面を覗き込む。そんな同僚に、少しだけ不機嫌そうな顔を浮かべた。

「新しい患者か。動作時に胸痛があって、CKが400を超えている。……狭心症だな」

「あぁ。おまけにクレアチニンが8.2だ。腎臓の状態も悪い」

「過去に心臓カテーテルもやっているんだろう? 画像を見せてくれ」

 榊が真面目な顔で言うと、雨宮も黙ってカテーテルの画像を表示させる。

「……厳しいな」

 榊が呟く。

「これじゃ、いくらカテーテルで治療しても、またすぐに血管が詰まっちまうぞ」

「その通りだ。すでに同じ場所で、3回も再狭窄を起こしている。……榊。お前なら、どう考える?」

 雨宮が問う。

 榊が即答する。

「俺なら冠動脈バイパス術を薦める。開胸手術で左内胸動脈と冠動脈と繋ぎ合わせることで、狭くなった血管を迂回させるんだ。この方法だったら、たとえ再狭窄しても心臓への不安は減らすことができる」

「外科的に治療するということか。だが、腎臓の機能が悪いことはどうする? 開胸手術で心臓を止めたら、腎機能は急激に悪化するぞ?」

「なら、手術は心臓を止めない、オフポンプ冠動脈バイパス術でいく。腎臓への血液の流れを止めなければ、腎機能も維持できるはずだ」

「ふむ、なるほど」

 雨宮は呟きながら、同僚の意見を反芻するように頷く。

 そしてすぐに、首を横に振った。

「いや、ダメだ。いくら心臓を止めない手術だからといって、腎臓の機能低下を軽視しすぎている。やはり、カテーテルによる治療を目指すべきだ」

「あ? なに言っているんだ? それじゃ再狭窄を招くだけだと言っているじゃねぇか。心臓を治療するのが俺たちの仕事だろう?」

「患者の全身状態を見ろと言っている。カテーテルなら腎臓に負担をかけない」

「だから、オフポンプ冠動脈バイパス術なら問題ないって言ってるじゃねぇか! わからない奴だな」

「わかってないのは、お前のほうだ。目の前の心臓を治療することだけが、俺たちの仕事ではないんだよ。腎臓を悪くさせて血液透析になったらどうするつもりだ?」

 真剣な目でカテーテル画像を見ながら、雨宮と榊は意見を交わしていく。循環器内科と心臓血管外科。2人の医師が、2つの異なる治療法を説いたあとで、榊のほうが肩の力を抜くように息をついた。

「ふん、まぁ好きにすればいいさ。後で、俺に泣きついても知らないからな」

「問題ない。たとえ心外の手を借りることになっても、お前だけには頼まない」

 雨宮が淡々と言うと、榊が不快感を顔に浮かべる。

 だが、次の瞬間。

 その表情は、にやりと嫌らしい笑みへと変わった。

「……そういえば。雨宮のことで、面白い噂話を聞いたんだけどさ」

「お前の話はあてにならない」

 雨宮が呟くのを無視して、榊はさらりと言ってのけた。

「3階の特別個室の未羽ちゃんだけどな。何やら、お前に興味があるらしいじゃないか」

 ぐっ、と雨宮が声を漏らした。

「いやな、俺も聞いた話なんだが。看護師とかにお前のことを訊いているらしいんだ。雨宮先生ってどんな人とか、彼女はいるのとか。最近だとナースステーションまで来るくらいにな」

「そ、そうなのか?」

「それもこの数日で、まるで人が変わったかのように元気になったとか。病棟の看護師も不思議に思っていてな。入院生活が長引いて、変なストレスを与えたとか。お前が影で何かやっているんじゃないかとか」

「……」

 雨宮は黙って何も答えない。

 誤魔化すことも嘘をつくことも苦手な雨宮は、きまりが悪くなると必ず黙り込んでしまう。下手に喋って、ボロを出してしまうのを恐れてのことであった。

 だが、この場では無理にでも反論をするべきだったと、後になってから気づくのだった。

「おい、雨宮。何で黙り込むんだよ。せめて反論してくれないと、笑い話にならないだろう」

「……か、回診にいかないとな」

 慌しく立ち上がる雨宮。

 そして、逃げるようにICUから出て行った。

「ははっ。単純なやつだ」

 その場に残された榊は、電子カルテに表示されたままの検査データを見る。そこに表示されている患者の名前が、柊未羽に変わっていることに気づき、思わず笑みをこぼしてしまった。

「さぁ、どうする。雨宮紡人よ」


 ICUを飛び出した雨宮は、真っ直ぐ循環器内科の医局に向かおうとする。だが、その途中で院内用のPHSが鳴り出した。

 雨宮にとっては好都合だった。妙な思考に囚われるくらいなら、仕事に打ち込んでいたほうが気が紛れるからだ。

「はい、雨宮です」

「3階の相川です。お忙しいところすみません、雨宮先生」

 電話をしてきたのは3階病棟の看護師長、相川京子だった。

「大丈夫です。どうされましたか?」

「いえ、それが」

 珍しく歯切れが悪い。京子は少しだけ間を空けて、たどたどしく話し出した。

「先生の担当させている患者さんと、ご家族の方が揉めていて手をつけられないんです。もし、時間があるなら顔を出して頂けませんか?」

「わかりました。どちらに向かえばいいですか?」

 雨宮は何となく嫌な予感がしていた。

「3階の…、特別個室です」

 思わずため息を漏らしてしまう。電話の向こう側でも、同じような空気が漂っているに違いない。

「やっぱり、ですか」

「やっぱり、です」

 お互いの意思を共感し合えたところで雨宮が電話を切る。そして、真っ直ぐ3階病棟に向かった。


 雨宮は3階特別個室の前に立っていた。部屋の中からは、激しい言い争う声が廊下まで漏れている。

「これは凄いですね」

「そうでないと、先生を呼んだりはしませんよ」

 後ろに控えている相川京子が答える。話がこじれないように、聞き上手な京子を連れてきたのは雨宮の意見だった。自分一人では、穏便に事を運べないと言うと、ベテランの看護師長は納得したようについてきたのだ。

「すみません、失礼します」

 扉をノックする雨宮。了解を得られるはずもないので、返事を待つことなく扉を開けた。

「いい加減にしなさい! 私はお前のために言っているんだぞ!」

「おじいちゃんこそ、いい加減にして! 私の人生なのよ! 私のしたいことくらい、私の好きにさせて!」

「そんなわがままを言うんじゃない! お前は病人なんだぞ!」

「わかってるよ! だからこそ、残された時間くらい自由にさせて!」

 思わず耳を塞ぎたくなるような惨状だった。ベッドの上に立った未羽が罵倒するような大声を上げていて、その向かい側にいる初老の男性、柊葉蔵も負けないような大声で怒鳴っている。ベッドの周りには衣類や小物が散乱としていて、足の踏み場もなかった。

「さぁ、雨宮先生。出番ですよ」

 そう言って、京子は雨宮の背中を押す。なんだがこの状況を楽しんでいるかのようだった。彼女を連れてきたのは自分のミスであった、と自らの行いを反省する。

「えーと、すみません」

 雨宮が声をかけると2人は同時に振り返った。

「あっ、雨宮先生!」

 ぱっ、と明るい表情になる未羽。

 そして、自分の今の姿を見下ろすと恥ずかしそうに座り込んだ。

「ふんっ」

 葉蔵は気に入らなそうに雨宮のことを見る。それでも、大声をあげるのをやめて、近くのイスに腰掛けた。

「ここは病院ですよ。喧嘩はやめてください。一体、何があったのですか?」

 穏やかに声をかける雨宮。

 それに対して、不機嫌そうに何も答えない2人。しばらく黙りこんだままだったが、葉蔵のほうが先に口を開いた。

「孫娘が病院を出て行く、と言い出したのだ。人様に迷惑をかけておいて、何を勝手なことを」

「そんなこと言ってないでしょう! 私は、退院したらどこに住むのか聞いただけじゃない!」

「そんなこと、お前が考えなくてもいい! お前は病院で治療に専念しなさい!」

「おじいちゃんはそればっかり! 全部、おじいちゃんが決めて相談もしてくれない! この病院に転院するのだって、おじいちゃんが勝手に決めたんじゃない!」

「それがお前のためなんだ!」

 言い争う2人を見て、雨宮は頭をかく。ため息をはきながら部屋の中心に歩いていき、未羽と葉蔵の間に立つ。そして、2人の視線に挟まれながら、穏やかな口調で話し始める。

「落ち着いてください。先ほども言いましたが、ここは病院です。他の患者さんの迷惑になるようなことは容認できません」

 未羽と葉蔵を順番に見比べる。どちらも頭に血が上っているようだが、冷静さを失っているわけではない。雨宮は未羽のほうに振り向くと、淡々とした口調で言った。

「柊未羽さん。ご家族がおっしゃるように、あなたは病人です。体の負担になるようなことは、なるべく慎んでください」

 事務的な口調の雨宮を見て、未羽は不機嫌そうに唇を尖らせる。そして、誰にも聞こえないような声でぼそぼそと呟いた。

「敬語、やめてって言ったのに…」

「そして、未羽さんのご家族の方も。何か治療方針や今後の希望などがあるのであれば、我々に相談してください。未羽さん本人の意思を確認して、その後に対応させていただきます」

 葉蔵にも似たような口調で告げる。

 すると、葉蔵は不機嫌そうに鼻を鳴らした。

「ふんっ。希望などあるものか。お前達は黙って孫娘の治療をしていればいいんだ」

「もちろん、治療は続けさせてもらいます。定期的の採血データを元に、内服薬を調節していく予定です」

 雨宮は一度言葉を区切ると、再び口を開いた。

「ですが、それ以上のことはできません。内科的な治療では、病状を安定させるくらいで、心不全の根本的な治療はできません。そのことはご理解いただけますか?」

「……何が言いたい?」

 ぎろり、と鋭い目つきが雨宮を襲う。

 だが、急性期の病院に勤めている雨宮にとって、それは脅しにすらならない。雨宮にとって恐怖とは、患者の命が失われることだけだ。

 雨宮はいつものように淡々と答える。

「退院、というのも一つの選択です」

「なんだと! 貴様、孫を見捨てるつもりか!」

 葉蔵が勢いよく立ち上がる。そして、雨宮の白衣を掴むと、怒鳴るような大声で叫んだ。

「貴様のような若造では話にならん! もっと上の人間を連れて来い!」

「北内科部長は忙しくて手が離せません。それに柊未羽さんの担当医は私です。何か意見があるのであれば、私に言ってください」

 雨宮は自分に掴みかかってくる男を冷ややかに見下ろす。

「それと、見捨てるという言い方は誤解があります。私はあくまで選択肢の一つとして、退院を例に上げただけです。未羽さんやご家族が望むのであれば、いつまでもこの病院にいてもらって構いません」

 雨宮は視線だけ未羽に向ける。

「柊未羽さん。あなたはどうしたいのですか?」

「……わ、私は」

 ベッドの上で座っている未羽が、視線を落として背中を丸める。

 だが、すぐさま顔を上げて背筋を正した。

「私は、近いうちに退院したいと思っています」

「退院して、どうなさるつもりですか?」

「まだ、わかりません。でも、自分らしく生きたいと思っています。残された時間が少なくても、その間だけは精一杯生きていきたいです」

 真っ直ぐと雨宮を見つめる。

 初めて会ったときとは比べ物にならないくらい、強い決意を感じた。

 その表情を見て、雨宮は笑みを浮かべる。

 そして悟った。

 自分自身こそが、この少女が退院することを願っていたことを。

「ならば」

 雨宮はゆっくりと口を開く。

「担当医として、未羽さんの意見を尊重したいと思います。内服薬の調整が整いしだい、退院する予定でよろしいですか?」

「えっ?」

 信じられないというような表情で、雨宮のことを見返す。

「……はい」

 未羽は力強く頷いた。

 頬が綻び、笑みを浮かべる。

「そんなこと許されるはずがない!」

 未羽の返答を見ていた彼女の祖父は、我慢できなかったように大声をだす。

「孫は重病なんだぞ! 退院して何かあったらどうするつもりだ! 誰が責任を取るつもりだ!」

 ……責任、ときたか。

 雨宮は表情に出さないように苦笑する。

「責任ですか。それならば私がとりましょう」

 雨宮の答えに、未羽の祖父が驚いて目を見開く。

「退院先には私が往診します。未羽さんが希望されるのであれば、住み込みでも構いません。急変時には、救急車でもドクターヘリでも何でも呼びます」

 雨宮の襟を掴んでいた手から力が抜ける。

「ですから、未羽さんの望みを叶えてやっては頂けませんか? 彼女は、もう十分に頑張ってきました」

 雨宮は、彼女の祖父に向かって静かに頭を下げた。

「お願いです。彼女を、自由にさせていただけませんか」



 雨宮が頭を下げてから5分後、柊葉蔵は相川看護師長と一緒に病室から出て行った。退院に向けて書いてもらわないといけない書類があるためだ。理解こそ得られなかったが、未羽の退院には一応の承諾を得られた。今はこれだけでも十分だ。

「ふぅ」

 雨宮は静かに息をつく。

 壁に寄りかかりながら、薄く目で天井を見上げている。

 そんな雨宮を、未羽がじっと見つめていた。

「悪かったな」

 雨宮が未羽のことを見ながら口を開く。

 不意に2人の視線が混ざり合った。

「へっ、な、なにが?」

 なぜか顔を真っ赤にさせる未羽。あたふたと両手を振りながら答える。

「退院のことだ。話を急に進めてしまって」

「あ、あぁ。大丈夫。退院したいと思ってたのは、本当だから」

「そうか」

 再び天井を見つめる雨宮。

 そして、独り言のように呟いた。

「……正直に言うとな。たぶん、これは俺のためなんだ」

「え?」

「医者として何もできない自分が許せなくて。せめてお前を退院させてやることで、自分を許してやろうとしているんだ。本当に情けない」

 雨宮は深いため息をはく。

 だが、そんな担当医の姿を見て、未羽は笑い声をあげた。

「ははっ。そうかぁ。雨宮先生も悩んだりするんだね」

「何も笑うことはないだろう」

「ごめんごめん」

 不機嫌そうに顔をしかめる雨宮に、未羽は朗らかな笑みを浮かべる。

「じゃあ、その雨宮先生の自己満足に付き合ってあげるかな」

 未羽はベッドから降りると、雨宮の元まで歩いてくる。

 そして、そっと右手を差し出した。

「これからよろしくね、雨宮先生」

「あぁ」

 未羽の手に、雨宮の手が重なる。

 しっかりと握り合う。

「何かあったら先生が守ってくれるんだよね」

「そうだな。医者の義務と責任にかけてな」

「むぅ。もっとロマンチックなことが言えないの?」

「ロマンスなんて必要ない。俺は医者で、お前は患者だ。その関係に変わりはない」

「ははっ、先生らしいね」

 声を出して笑う未羽。

 それに釣られて、雨宮も苦笑いを浮かべた。 

 10分後。未羽の病室を出た雨宮は、真っ直ぐ医局にいる北部長の元へと向かった。そこで北部長としばらくの間、……とても大切な話をした。


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