『安保法制』についての熟慮のすすめ
反対派のようなのに、それを明言せず、中立派として意見を述べるとミスリードに繋がるという、的確な指摘をいただいたので(ありがとうございます)、これを書くにあたっての、僕の立場を明言しておきます。
僕の立場は「反対したいけれど、反対し切れない」です。
ただし、基本的には考える為の材料を提供したいというつもりで書きました。中立で書きたかったけど、無理だったというのが真相です。
■はじめに
2015年7月下旬現在。
自衛隊を海外に派遣できるようにする『安保法案』が衆議院を通りました。
この法案がこのまま参議院も通ったならば、アメリカに協力して、日本の自衛隊が世界中で戦争に参加する可能性が出て来ます。
正直に告白するのなら、僕はこの問題についてはあまり触れないでおこうと思っていました(集団的自衛権について、一度述べていますが)。何故なら、僕は軍事方面の知識も国際政治の知識もそれほど持っていない上に、情報が公にされていない範囲の事柄まで踏み込んで考えなければいけないので、どうしても陰謀論紛いの憶測で考えを述べていかなければいけないからです(なので、この文章はその程度のものである事を承知して読んでください)。
ですが、世間の人達の『安保法制』に対する反応を観ていて、どうしても我慢ができなり、こうして自分の考えを述べてみることにしました。
普通、“物事を判断する”にはできるだけ視野を広く持ち、そして、公平にメリットとデメリットを評価した上でそれを勘案してみるといった手続きが必要です。そうじゃなければ的確な判断は下せませんから。
ところが、一部の人達は、こういった手続きをほとんど無視して、メリットばかり或いはデメリットばかりに注目をして、賛成、或いは反対しているのです。
例えば、僕は『安保法案』に反対している若者達への批判として「自衛隊員でもない人間が、何を勝手に反対しているのだ?」といった主張を見かけました。
これはいくらなんで酷過ぎます。
『安保法制』によって自衛隊が海外で活動するようになれば、当然、その費用を今後、国民が負担しなければいけませんし、テロリスクも負わなければいけません。つまり、『安保法制』の被害を受けるのは、自衛隊員だけではないのです。
高校生や大学生といった若者でも、当然、反対する権利はあります。
『安保法案』に賛成するのなら賛成するで別に構わないのです。ただ、この程度の認識で賛成するのは流石に問題があります。浅慮が過ぎるでしょう。もう少しじっくりと勉強した上で、より深く考えて結論を出すべきであるはずです。
もちろん、「反対する」場合も、「賛成でも反対でもない」という場合も同様です。
僕がここで自分の考えを述べる目的は、そういった深く考える事を避けている人達に対し、この問題を深く考える為の“切っ掛け”及び“情報”を提供するというものです。
■メリットとデメリット
さて。
まず、問題を整理する為に、『安保法制』についてのメリットとデメリットの洗い出しを行います。単純に考えて、恐らくは以下になるだろうと思われます。
・メリット
1.中国の軍事的脅威を抑える事ができる
2.アメリカとの信頼関係を強固にできる
・デメリット
1・軍事費が増える
2.テロリスクが増える
3.戦死者が出る可能性がある
4.憲法無視の前例を作ることで、政治家や官僚が暴走してしまう可能性がある
5.隣国を刺激してしまう
・価値観によってメリットにもデメリットにもなるもの
1.軍事ビジネスを活性化できる可能性がある
2.(ある種の価値観を持った人達の)プライドを回復できる
3.(ある種の価値観を持った人達の)平和主義という信念を傷つける
(順不同)
これらを見比べた結果、メリットの方が大きいと判断できる場合は賛成するべきだし、デメリットの方が大きいと判断できる場合は、反対するべきなのですね。判断がつかない場合は「どちらでもない」でしょう。
(一応断っておきますが、これに数の多さはそれほど重要ではありません。仮にメリットがたった一つでも、その影響がとても大きければメリットの方が大きくなります)
ただし、こうして挙げたメリットとデメリットの中には本当にそうなのか疑ってみるべきものがあります。
それは「1.中国の軍事的脅威を抑える事ができる」です。
■中国の軍事的脅威に対する疑問
中国に軍事的脅威がある事は確かですが、それがどれ程のものなのかと問われるのなら、思わず首を傾げてしまうようなポイントがいくつかあります。
一つめは、経済面です。
中国が軍事活動を活発化させて来た背景には、経済成長があります。ところが、近年に入ってその中国の経済活動に陰りが見え始めているのです。
まず、人件費が高くなってきた点があります。結果として、他の発展途上国に、生産拠点を奪われ始めています。ならば、当然、人件費の安さ以外の強みを手に入れなくてはなりませんが、これがそれほど上手くいっていないのです。
中国人が日本製品を“爆買い”している事は有名ですが、その背景には製品のクオリティが日本製の方が依然高い事があります(中国共産党が、これに関して「中国製品のクオリティを高めろ」といったような発言すらしています)。
しかも、中国は一人っ子政策の所為で、経済が成熟する前に高齢社会を迎えようとしているのです(高齢社会が最も急速に進行しているのは日本だと言われていますが、日本の場合は経済が成熟しているので、中国の方がより深刻ではないかと思われます)。
更に、この現状に追い打ちをかけるように、最近になって、中国のバブル経済は激しく崩壊をし始めました。普通の資本主義国家では、信じられないような方法で、大崩壊をなんとか回避したようですが、まだ終わってはいないでしょう。その被害がどれほどのものになるのか、予断を許さない状況です。
果たして、その中国に大規模な侵略戦争などしている余裕があるのでしょうか?
一応、書いておきますが、もし仮に中国が大規模な侵略戦争をし始めたのなら(例えそれがどの国であろうが)、当然、中国の経済は大ダメージを受けます。場合によっては、自滅すら有り得るかもしれません。日本だって、アメリカだって、ヨーロッパだって、アジア諸国だってそれを無視できるはずはなく、何らかの制裁を行うだろうからです。
仮に日中開戦に至れば、中国も日本も無事では済みません。その経済被害の大きさに仰天して、開戦後早々に停戦なんていうコメディな展開だって有り得るかもしれません。
二つめは、中国がAIIBを設立した事です。
上記に関連した話ではありますが、中国は世界各国を巻き込んで、国際的な投資銀行を設立しました。
この銀行に関しては、様々な事が言われていますが、その目的がなんであれ、これで中国が国際社会をより無視できなくなった事だけは確実です。早い話が、より侵略戦争し難くなったのです。
因みに、中国が自国の経済を支える為には、AIIBに限らず国外を無視できません。例えば、2014年にベトナムとの間で緊張状態をつくった結果、中国はその利益を、日本、韓国、インドなどの国々に奪われました。こんな事を繰り返していては、いずれは自壊に向かってしまうでしょう。
三つめは、尖閣諸島に膨大な海洋・海底資源が埋まっているという話が、実は間違っていたようだという点です。
気付いている人がどれくらいいるのかは分かりませんが、以前は中国が日本の尖閣諸島を手に入れようとする目的は資源だとマスコミによって報道されていました。ところが、いつの頃からかは定かではありませんが、マスコミ報道の内容が変わり、海洋進出が中国の目的だとされるようになりました。
僕はこれがどうしてなのかと思って調べてみたのですが、どうも尖閣諸島周辺の海洋・海底資源の埋蔵量が、実は大したものではない事実が調査によって明らかになった事がその原因のようです。とてもじゃないですが、投資額に見合うだけの資源は手に入れられないのですね(だから、日本の企業は尖閣諸島で開発を行わない、という話を読みました)。
つまり、仮に侵略戦争で尖閣諸島を奪い取ったとしても、中国はほとんど利益を得られない可能性が濃厚なのです(戦費や日本と戦争による損失の方が大きい)。
中国は今現在、東シナ海でガス田開発を行っていますが、実際、わずかしかガスは採掘できていないそうです。例え利益があったとしても極わずかだろうという話です。
一応断っておくと、この話が本当なのか嘘なのか僕には分かりません(検索すると、ヒットするので興味のある方は調べてみれば良いかと思います)。
では、中国がどうして東シナ海のガス田開発を行い続けているのかといえば、面子の為ではないかと予想している人がいました。早い話が、後悔をしているのだけど、退くに退けず、一縷の望みに賭けて、開発を行い続けているというのですね。
この話は憶測に過ぎません。流石に、少し中国を馬鹿にし過ぎかとも思いますが、それでも僕がこの話にリアリティを感じてしまうのは、中国のバブル経済があまりに酷いと知っているからです(「中国 ゴーストタウン」で検索すると、視覚でよく分かる例がヒットします)。もしかしたら、中国による東シナ海のガス田開発は、中国のバブル経済の一つなのかもしれないと疑っているのです。
最近になって、日本政府は東シナ海のガス田開発の写真を公開しましたが、こう考えると中国がやや憐れにすら思えてきませんか?
念の為、もう一度断っておくと、僕はこの話が何処まで本当かを知りません。
さて。
これらの要因から、中国が侵略戦争に踏み切るとは考え難いと僕は考えています。
と、或いは2012年の中国における反日暴動が起こる前なら、僕はそう言い切っていたかもしれません。
ネット上で「中国は絶対に日本との戦争は起こさない」と断言している人がいたのですが、その根拠を読んでみると、中国が合理的な判断基準に基づいて行動する事を前提条件としていました。
確かに、それなら僕も同意見です。
が、それは逆を言えば、中国に合理的判断力がないのならば、戦争は起こり得るという事でもあります。
そして、2012年に起こった反日暴動で、中国が非合理的な行動も執り得る事が分かってしまいました。
当時、中国は発展途上国型の経済から、先進国型の経済への成長を求められる時期に既に達していました。先にも述べましたが、中国は経済が成熟する前に高齢社会に突入しようとしているので、時間もあまりありません。
ところが、その重要な時期に中国は、どう考えても損にしかならない大規模な反日暴動を起こしてしまったのです。
僕はその時、あるSNSで「損にしかならないのに、どうして?」とそんな内容の文章を投稿しましたが、その後、やはり中国は世界中から批判され、実体経済は損害を受け、日本などからの投資は減り、どう考えても自滅としか思えない経過を辿ったのです。結果として中国は「日本は、国は悪だが、民間は善良だ」といったような主張をするようになり、親日に傾き、日本へ投資を促すようにすらなりました。
これはどう考えても不合理な行動です。
恐らく、中国の上層部の中には、とんでもない経済オンチがいるのではないかと考えられます。もし、今後もこういったような不合理な行動を中国が執るのなら、起こるはずのない戦争も起こってしまうかもしれません。
更に言うと、先の中国の海洋進出の話ですが、海底・海底資源がないにもかかわらず、中国がガス田開発を行っている本当の理由が、軍事目的である可能性だってあります(あまり説得力はないかもしれませんが)。それに尖閣諸島には充分な資源はありませんでしたが、スプラトリー諸島には豊富な海洋・海底資源が存在します(ここは、紛争の火種として有名で、周辺各国が狙っています)。侵略戦争を行う理由は、充分にあるでしょう。
こう考えるのなら、中国の軍事的脅威に警戒するべきという主張は理に適っているように思えてしまえるのです。
何より、実際に中国は強引に軍事目的の人工島を、南シナ海に建設してしまいました。この島の最終的な目的は、スプラトリー諸島を奪う事かもしれませんが、それでも日本も安心はできないでしょう。
正直に告白するのなら、僕は中国の軍事的脅威がどれほどのものなのか、判断が付いていません。
ですが、仮に中国の軍事的脅威は恐ろしいとした場合でも『安保法制』の「中国の軍事的脅威を抑える事ができる」というメリットにはまだ疑問を覚える点があるのです。
『安保法制』は、果たして本当に対中国政策にそれほど大きな影響を与えるのでしょうか?
■『安保法制』の効果
一部の人達は、『安保法制』がなければ、例えば中国にベトナムやフィリピンが攻められた時、日本が参戦する事はできないと考えているようですが(以前は、僕もそう考えていましたが、最近になって考えを改めました)、この点に疑問を持っている人達もいます。
日本近海なら、集団的自衛がなくても、強引にやれば充分に参戦は可能だというのですね。
例えば近年、アメリカは「大量破壊兵器がある」と言ってイラク戦争を始めましたが、結局はそんなものは発見できませんでした。これを観ても分かる通り、戦争の理由なんて、いくらでもつくれるのです。
一応、断っておきますが、人類の歴史上、この程度の事は頻繁に起こっています。だから、仮に中国にフィリピンが攻められたなら「日本の物資輸送船が中国に攻撃された」とでも言って日本が戦争に参加するなんて事も恐らくは可能です。後で「誤報だった」と分かっても、既に手遅れですから。卑怯に思えるかもしれません。もちろん、僕だってそんな手段には反対ですが、それが人間社会の現実です。
もちろん、『安保法制』があった方が、より参戦はし易くなるでしょうけど、その程度のものである可能性もあるのです。
では、何のために『安保法制』は必要なのでしょうか?
「アメリカに中国から守ってもらう為に必要だ」
と、そう主張している人達がいます。
ですが、僕はこれにも疑問が思い浮かびます。
『安保法制』の賛成者の中には、軽々とアメリカが中国と戦争してくれると考えている人もいるようですが、果たしてそうでしょうか?
まず、アメリカと中国が戦争になれば、両国とも経済的に大ダメージを受けます。また、アメリカには中国と戦争するような戦費がありません。更に、中国はアメリカ国債を膨大に保有しているので、もし売られでもしたら大ピンチです。
これらの問題は、仮に『安保法制』があったとしても解決できません。アメリカが中国と小競り合いをする程度なら有り得るかもしれませんが、全面戦争となると、そこまでしてくれるようにはとても思えないのです。もしかしたら、何か解決できる手段があるのかもしれませんが、少なくとも僕には思い浮かびません。
もちろん、アメリカが何もしてくれないという認識も間違っています。実際、アメリカはもう何度も中国を抑えてくれています。つまり、アメリカにとってのデッドラインは、開戦前なのではないかと思えるのです。もっとも『安保法制』がなければ抑えてくれなくなるのかといえば、そんな事もないと思いますが。
アメリカにとっても中国の軍事路線の拡大は脅威ですから、仮に『安保法制』がなかったとしても抑えない訳にはいかないはずです。
ならば、『安保法制』はやはり不要なのではないでしょうか?
正直に告白すると、僕は『安保法制』は世界各地で行われるアメリカの戦争に付き合う為のものではないか?とそう疑っています。この場合、日本にとってのメリットは、再び実質的な軍事力を手に入れられるという事になるでしょう。
確証はありませんが。
つい最近、僕のこの疑いは更に強くなりました。衆議院を『安保法制』が通過した際、中国がそれほど反応しなかったのです。むしろ、東シナ海のガス田開発の写真を公開した時の方が反応が強かったような印象を僕は受けました(飽くまで、印象ですがね)。
もし、『安保法制』が中国にとって大きな脅威になるのなら、いつものように過剰ともいえる反応をしているのではないでしょうか?
まだ参議院があるので、その時になったら反応するのかもしれませんが。
ただし、冒頭で述べた通り、僕は軍事方面も国際政治も詳しくはありません。僕のこの考えは間違っているのかもしれない。
それに、どれほど強いカードなのかという点は置いておいて、『安保法制』が中国と交渉する際のカードになる点だけは確実でしょうし。
■デメリットについて考える
物事を判断する為には、メリットばかりに注目しても駄目で、デメリットにも注目しなければなりません。
一応、ここで先に挙げた『安保法制』のデメリットをもう一度おさらいしてみます。
1・軍事費が増える
2.テロリスクが増える
3.戦死者が出る可能性がある
4.憲法無視の前例を作ることで、政治家や官僚が暴走してしまう可能性がある
5.隣国を刺激してしまう
少し説明を補足します。
「軍事費が増える」という点ですが、今日本は酷い財政状態なのでこのインパクトは、一般の認識よりも重いかもしれません。
また、「憲法無視」について、それほど心配していない人もいるようですが、いつの時代でも政治家や官僚といった権力者は、国民から富を吸い上げようとするものです。それを抑える為にあるのが憲法です。ですから、先に説明した財政問題とも合わせ、この問題は非常に重要なのです(因みに、韓国で政治腐敗が酷い一因には、遵法精神が弱い点があるそうです)。
デメリットの中で、僕が特に気にしているのは「2.テロリスクが増える」です。自民党政権は意図的にこの問題から目を逸らしているようにすら思えますが、果たして目を逸らしてしまって良い問題なのでしょうか?
何故なら、テロリスクは『安保法制』の運用そのものに影響を与えるからです。仮にテロの被害が大き過ぎた場合、『安保法制』が運用できない事態すら起こり得ます。小規模なテロ被害でも充分に自民党政権にとってダメージになると思いますが、大きな被害ならば、自民党政権は存続が危ぶまれる程の大ダメージを受けるでしょう。
そうなれば、『安保法制』は使えなくなるかもしれません。
そして、テロ被害が「原発テロ」ならば、自民党政権は、よっぽどの事が起こらない限り確実に終わりです(そして、日本社会は再び大ダメージを負います)。
テロ対策不充分なまま、強引に原発推進を行ったのは自民党ですし、テロに狙われるリスクを『安保法制』によって高めたのも自民党ですから、その責任からは逃れられません。
そして、ここからがより重要なのですが、テロ行為は、その効果に疑問を抱きたくなるようなものが多いですが、以上の理由から、日本での『対安保法制テロ』に関してはほぼ確実に効果があるのです。
日本で原発テロを起こせば、自民党政権は倒れて、日本はアメリカに協力しなくなる。テロリスト達は、その目的を果たせてしまう。そして、日本の原発は、世界で最も脆弱と言われる程にテロ対策が甘い。
この構図は、はっきり言って危険過ぎます。
まるで、原発テロを積極的に招いているようにすら思えます。
もちろん、実際に原発テロが起こるかどうかは分かりません。ですが、それでも、どう控えめに言っても『安保法制』が施行され、アメリカと共に戦争をし始めたら「日本の歴史上、最も原発テロのリスクが高くなる」点だけは確かなのです。
だから、自民党政権を支持していて『安保法制』に賛成している人ならば特に自民党に充分なテロ対策の実施を求める理由があるのです。当然、反自民の人も、自民党政権が倒れると言っても、その代償が膨大な数の人命ならばテロなど望まないでしょう。中立の人も同じです。
つまり、『安保法制』を施行するのならば「テロ対策を充分に行う」事を求める理由が、日本国民全員にある事になります。
少し前に、国から年金情報が流出する事件が発生しましたが、その犯人は中国人である可能性が濃厚です(中国共産党が関与しているかどうかまでは分かりません)。つまり、国際的なサイバー攻撃に分類できるのですね。そして、その手口ですが、実はそれほど高度なものではなく、かなり以前からよく知られていて、注意喚起を促すビデオさえ作られているような有り触れたものだったのです。
つまり、これはテロリスク意識が充分に国にあったのならば、防げいていたサイバー攻撃だったのです。
この国のテロリスク意識の低さは、呆れるを通り越して恐怖さえ覚えます。
もっとも、そういった甘さは、『安保法制』が施行された後に多少は改善されるのかもしれません。
今、テロリスクの話題を自民党があまり持ち出さないのは、より強く国民が『安保法制』に反対する事を恐れているからでしょう。ならば、ほとぼりが冷めた辺りで、あまり目立たないように、テロ対策を実施していくかもしれません。
ただ、一部の自民党議員の執った行動を観ていると、そもそも適切に状況認識できていないのではないかとすら思えて来るので、不安になってきます。
最近、一部の自民党議員達が会合を開き「マスコミに圧力をかける」といったような発言をして社会問題となりましたが、真っ当な状況認識能力を持っているのであれば、それが自民党にとってマイナスになると分かるはずです。
これがもし政治家一般にも通用する問題なのだとすれば、『安保法制』にとって、テロ対策がどれほど重要なのかを政治家達が理解していない可能性もあります。
また、原発のテロ対策を充分に実施する為には、そもそも原発の安全基準から見直さなくてはならないので、やはり放置してしまうかもしれません。
原発の杜撰な管理体制については、かなり昔から忠告されていました。ところが、政治家も官僚もそれを無視し、結果として福島原発事故を引き起こしました。つまり、日本の政治家も官僚もリスク評価能力が極めて低いのです。簡単に誰でも分かるような取るべき対策の判断さえできない。責任意識が希薄で、だからリスクを野放しにしてしまう。
その体質が、今もそのままなのは、多くの不祥事を観れば明らかです。
そして、そのリスクを野放しにする体質の被害を受けるのは国民です。
これを読んでいるあなたが、『安保法制』に賛成でも反対でも中立でも構いません。広い視点から熟慮の上で出した結論ならば、あなたのその考えを僕は否定する気はありません。ですが、ただ一点だけお願いがあります。テロ対策だけは充分に行うように、自民党に求めてください。今は反対の声を強くするから嫌だと言うのであれば、法案が通った後でも構いません。
このままでは、本当に原発テロが起こってしまうかもしれないんです(或いは、他のテロかもしれませんが)。
国が出した試算では、もし原発がテロリストに狙われたなら、最悪、1万8千人が急死するそうです。“急死”ですから、長期的な死者や罹病する人間の数はそれを遥かに上回るでしょう。当然、容認できるものではありません。
一応断っておきますが、原発がテロリストに狙われ得る事は、国際的に認められています。だから、日本もその対策を義務付けてはいるのですが、それが甘過ぎるのです。
因みに、『安保法制』について、テロ対策がマスコミの報道で話題のなった事もありますが、一番心配な原発まで言及されたケースを僕は見た事がありません。『安保法制』で原発が話題になったを僕が見たのは、野党が追及しているただ一度だけで、しかもほんの数秒で、それに与党がなんと応えたのかも分からず終いでした。
■終わりに
『安保法制』を判断する為には、情報が公にされていない範囲の事柄まで踏み込んで考えなければいけないので、最終的には各個人の信念に従って賛成・反対を判断するしかないと僕は考えています。
だから、メリットの方が大きいのか、デメリットの方が大きいのか、その判断がつきません。
ですが、最後に述べたテロリスクが大きくなるという点だけはほぼ確かで、そして充分なテロ対策さえ取れば、そのリスクを低くできるだろう点もほぼ確かなのです。
そして先に述べた通り、テロ対策に関しては、賛成・反対にかかわらず、求めるべきものです。
もちろん、完全にテロを防ぎ切る事はできないでしょうが、原発等の重要施設のテロに関しては少なくとも防げるようになるはずです。
以上です。