解毒魔法と解呪魔法
眼を開く、パチっと擬音が聞こえそうなほどすっきりとした目覚めだ。
体にかけられた薄い布団を剥がし辺りを見回す。
見たことのない部屋だ、そうだった俺は魔法がつかえる世界にいるんだ。
部屋には窓が無いように見えるが、壁の隙間から入る光のおかげで部屋の中は暗いながらも物の輪郭をみることができた。
「…知らない天井ってより、何もわからないが」
襲ってきた奴を殺さないように雷魔法を放った後回復魔法を使ったんだった。縛られたりしていない状況を見るにうまいこと行ったようだ。
そうだ、タブレットは。と考えるて寝ころんだまま頭の上あたりに手を伸ばすと、タブレットに触れた。
タブレットの電源を入れて画面を見てみると
「…なんか項目が増えているな」
各種魔法の項目に、【呪文:○○ナイフ(至近距離持続型)】のように呪文が書かれていた、○○の部分にはファイアとかサンダーとか入っている。
なんとなくタブレット画面の字に触れると、書かれている文字の意味を理解することができた。
どうやら「ファイアソード」のように呪文を呟くとその形に魔法を生成するようだ、そして持続型魔法の場合1度使ったものは消えない限り再使用MPはいらないらしい。
「…消える条件が書かれていない。」
他にも○○バーナー(放出型)、○○ライン(貫通型)、○○バレッド(射出型)等々最初に見たときとは打って変わってしまっている。
威力に関しては任意に下げることができると書かれているため俺は「サンダーナイフ」と唱えてみる。
念のため目を瞑って唱えたが、すさまじい光量で目を瞑っているのに目を焼かれそうだった。
もっと、下げる!もっと下げる!
心の中で何度もつぶやき、なんとか蛍光灯レベルにまで光量を下げる。
ナイフといっても形状はある程度自由にできるようで、今の形状は棒のようだ。ただし短い。あれだ、アイドルのコンサートとかで使うやつ、ウミホタルだっけか。
自分で作った魔法をまじまじと見ていたが、とりあえず体を起こして辺りを見てみると、隣のベッド(すさまじく簡易な)に若い兄ちゃんが眠っていた。
あれだけ明るい光を放ったのに、何もなく寝ていられるのはすごいと思ったのだが、サンダーナイフで顔を翳して見てみると顔色が悪い。
この人がルードの言っていた父さんか?若いな。
「とりあえず何の病気か判ればいいんだが」
とりあえずタブレットを触ってみるが特に"鑑定"というようなスキルはなかった。
ついでに”パームアイテムクリエイター”の文字に触れてみると、自分が想像できる非生命体を半径10m以内に出現させることができるらしい。
「…醤油」
小さく呟くと、ごとっ、と音を立ててペットボトルの醤油が転がる、この醤油はよく家で見たな。
蓋は確り綴じられており、プラスチックの蓋を回して、中身を舐めてみると見事に醤油だった。
すごいチートだ、これは、武器を大量にと念を込める、出てきたのは木刀と竹刀、それからゴブリンが持っていたぼろい剣と槍だった、日本刀なんかは出てこない、うまくイメージできないからか?車とか出せると楽なんだろうが、万が一ここで出せると大変なことになってしまう。
ぶつぶつ言いながらタブレットを触っていたが、
「おっとそんなことしている場合じゃなかったな。」
ルードの父の事を思い出し、とりあえずタブレットを消そうと意識してみると、タブレットが消えた。
やはりこれがあるのはスキルの効果だったんだなと、納得した。
それから病気か、病気。解病魔法なんてのはないんだが、解毒と解呪でなんとかならんだろうか。とりあえずかけてみることとした。
「解毒、解呪」
手の平から靄というか湿気のようなものが「ずずず」と出ていく感じがある。
それはルードの父を包むために広がる湿気が、なにかに抵抗される気配を感じた。
その抵抗される気配をどんどんと押しのけ、靄が完全にルードの父を覆うと達成感にあふれてくる。
間違いない、成功した。
「これで大丈夫っぽいが、どうかな」
ルード父の頭に触れると熱も無いようだ、蒲団を今一度かけなおしてやると、俺は照明となったサンダーナイフを持ち、扉を開く。
開いた先にすさまじい美人がいた、俺は驚いたことを見透かされないように後ろ手で扉を閉じる。
そうすると、目の前の美人さんが「ルード、マリー。スプーキーさん目が覚めたみたいよ」というとバタバタと子供二人が走ってきて俺の足につかまる。
「スプーキー!もう大丈夫なの!?」
「おうおう、俺はもう大丈夫だよ。多分ルードの父ちゃんも大丈夫だ。一度確認してくれ」
「…えっ!父さんを治せたのか!?」
「おそらく、これで大丈夫だと思うよ」
そういうと、ルード・マリー、そして美人さんが部屋に入り込む。
ほんの少しして、男性の声が聞こえてきた。。
空気を読んで中を覗くことはしなかったが、子供二人と女の人の泣き声が漏れ聞こえてくる。俺は魔法が成功してよかったと心から思えた。