デビルズアイ
脱出まで連投します。
俺は意識を自分の内側から外側へ向ける。緑色の物体・・・ゴブ太は泣きはらした顔で、不思議そうにこちらを向いたまま様子を伺っていた・・・。
俺はそんなゴブ太を集中して‘ミタ’。
Name:ゴブ太
種族:ゴブリン
Level:1
ステータス:
STR 13
DEX 6(+1)
LUK 2
INT 3
ス キ ル:
★ランゲージ
(知性が身に付く、喋ることができるようになる)
装 備:
布の前掛け DEX +1
(・・・って、STR俺より上じゃねえか!!初見で舐められなくてよかった・・。)
襲われていたらやられる危険性だってあっただろう。俺はこの姿になって初めてこの醜い容姿に感謝した。
(それにしても・・俺の魔食[モンスターイーター]にも付いていたが、★ってなんだ?・・・もしかすると・・。)
「オイ、オ前ノ種族デ他ニ言葉ヲ喋レルヤツハイルカ?」
「イ、イナイゴブ。ボクハ喋レルカラココニ連レテコラレタゴブ。・・・ソレニ、喋レルカラ他ノゴブリンカラモノケ者ニサレテタゴブ・・・」
そういったきりゴブ太は俯いてしまった。
俺は考えをまとめる。やはり、★が付いているスキルは、その種族がもつスキルではなく、個体それぞれが持っているスキルのようだ。・・俺はこの世界のモンスターは、話すことが出来るだけの知性を持っていると思っていたが、どうやらそうではないようだ。
そうこうしているうちに、奥のほうで扉の開く音がした。コツ、コツ、コツと誰かの歩く音が段々と近づいてくる。・・・そして、鉄格子越しに白ローブ覆面が現れた。
「おら、今日の分の餌だ。ありがたく食えよ!・・と、いっても言葉なんて分からないだろうがな。」
そういって白ローブは肉の塊を俺たちの牢の中へ放り込む。気が付くと俺は白服の喉笛を引きちぎるつもりで鉄格子に突進していた。
「・・オ前ラ、俺ヲドウスル気ダ!!」
案の定、俺の牙は届くことはなくそのまま白服を怒鳴りつける。
「お前、自我が残ったのか!?・・・フフフ、フハハハ、はっはっはっはっは」
白服は多少驚愕の表情をみせたあと急に大声で笑い出した。
「何ガソンナニオカシイ!!」
「素晴らしい!!素晴らしいよ君は!!・・・今回も失敗してしまったかと思っていたが、どうやら成功のようだ!これで黒の大陸に進軍できる!・・おお、我が神よ!邪悪なる黒の大陸を浄化し、我が神に捧げる準備が整いましたぞ!!」
「・・・ドウイウ意味ダ?」
「・・フム、最後に教えてやろう。今までの失敗作は精神が壊れてしまって、ただの肉の塊に成り下がってしまった。しかし君は精神が壊れないどころか自我まで残している!!・・・莫大な費用と時間をかけて異世界から呼び出したかいがあったというものだ。異世界人はこの世界の住人よりも精神が強靭だといのは本当だったな・・・。」
さらに白服は続ける。
「君は魔物の蔓延る黒の大陸に我が教団の神造兵器として送り込まれるのだよ!!・・君の自意識は奪わせてもらうがね。だが、光栄に思いたまえ!我が神のために働けるのだから。・・・」
そういって白服は、ブツブツ言いながら部屋をでていった。
やはりここは異世界か・・・。しかし、白服の話は聞き捨てならない。自我を奪われて兵器にされるなんて、殺されたほうがまだましだ。
(どうやらすぐにでもここを抜け出さなければならないようだ・・・。)
白服の話通りならすぐにでも自我が奪われるはず・・・。どうにかこの鉄格子をぶち破らなければ・・。しかし、俺のSTRは10・・・Level 1のゴブリンにも劣る数値だ。
(だったらここで強化するしかない!・・俺の能力は‘物’を食すことでパワーアップする・・つまり、この体なら無機物でも取り込めるはずだ!!)
そう思い、手始めに落ちていた拳大の石を、意を決してほお張る。
(・・・む、意外にうまい。・・というか氷を食べているような食感で味もちゃんと感じられる。)
この体は大概のものを食べられるように出来ているらしい。これは俺としてもありがたかった。
石を食べ終わると頭の中で“ピコーン”という音が響き、変なアナウンスが流れ始めた。
『スキル:{硬いイシ}をLob。・精神安定補正 極微 が付きます。』
(・・・・・・)
(しょ、しょっペー・・。しかも駄洒落かよ!!体が硬くなるんじゃなくて意思のほうかよ・・・しかも、極微。)
頭の中で変なアナウンスが聞こえた気がしたがここまで完全シリアスできているのでスルーすることにした。ただの石だから期待はしていなかったが脱出にはなんの役にも立ちそうにない・・・。何かないか周りを見渡すと、白服が投げ込んだ肉塊があった。なにか得られるかもと思いかじり付く。
『スキル:{鉄頭[アイアンヘッド]}をLob。・自分の頭を鉄並に硬くできます。』
(おお!結構いいスキルが手に入ったぞ!・・・鉄並の硬さに出来るならこの牢をぶち破れるかもしれない!!・・・それにしてもこんなスキルが身に付く生き物ってどんなやつだ?)
少しの疑問は残るが今は時間がないので置いておく。・・・早速習得したスキルを使い鉄格子に突進をかます。“ズドン”という音とともに、鉄格子を固定していたレンガが割れ、鉄格子が外れた。
(・・今の音は確実に白服たちに気づかれたはず。早く脱出しないと・・。)
そう思い牢屋から出ようとする俺に声が掛けられた。
「マッテ欲シイゴブ!ボ、ボクモ一緒ニ連レテ行ッテ欲シイゴブ。連レテ行カレタ友達ヲ助ケタインダゴブ!!」
そう言いながら俺の足にしがみ付いてくる。
(・・・レベルの事といい、まだこの世界について聞くことがあるかもしれない・・連れて行ったほうが役に立つか?)
「・・・イイダロウ。タダシ、足手マトイニナルヨウナラ置イテイクカラナ!」
「・・分カッタゴブ!」
こうして俺とゴブ太の一人と一匹は・・・いや、一魔獣と一ゴブは冷たい牢獄を抜け出した。