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キメラLife  作者: 日陰
2/4

目覚め

脱出まで数話かかります。


 次に目覚めたとき、そこは牢獄のようなジメジメした鉄格子のはめられた部屋だった。体に違和感をおぼえる。自分の手を見ると緑色の小さな手だ。目線も低く周りのものが大きく感じる。そして、部屋に唯一置いてあっ桶の水に写った自分の顔を見て夢じゃないと確信する。そこに写っていたのは、剥き出しの牙と蛇のような目をもつ爬虫類のような醜い化け物の姿だった・・・。


 


 ひとしきり泣いた後、泣いてばかりいても状況は好転しない!と自分を奮い立たせまわりの様子を見る。さっきは気づかなかったが、部屋の隅に緑色をした物体が振動していた。

少し観察していると、緑色の物体と目が合った・・。


「・・ボ、ボクヲ食ベテモオイシクナイゴブヨ。」ガタガタ


 (!?・・・緑色の物体?がしゃべった・・だと・・)


「オ、オイ」


思わずしゃべりかけてしまった。(しかし思った通りに声が出ないな・・)


「ヒー、食ベナイデホシイゴブー。」ガクブル


 どうやらこの緑色の物体にとって俺はよほど怖く見えるようだ。


(なら、そういう風に装えば情報をつかめるか?)


「・・・オマエニ質問ガアル。答エタナラ食ワナイデオイテヤッテモイイ。」

「ホ、ホントゴブカー?」


 そういうと緑色の物体はこちらを振り返った。


(・・つぶらな瞳で上目図解だと!?・・というかこいつって・・)


「・・オマエノ種族ト名前ハナンダ?」

「ゴブリン族ノゴブ太ダゴブ。」


(やはり・・小人妖精[ゴブリン]。)

 

 俺はこいつの見た目に見覚えがあった。昔やったゲームにでてきた小人妖精[ゴブリン]に見た目がそっくりなのだ。どうやら俺はこんな生き物がいるということを受け入れるほか無いらしい・・。信じたくはないが自分のこの姿が何よりの証拠だろう・・。


「・・ココハドコダ?・・イヤ”何ヲスル”トコロナンダ?」


とりあえず、モンスターがいる事実は置いておいて、これから自分の身になにが起こるのかを知る必要がある・・・。牢獄にモンスターと一緒に入れられているなら何が起きてもおかしくないだろう。


「・・コ、ココハレベルノ低イボクミタイナ・・人間タチガ言ウトコロノ魔物ヲ捕マエテキテ融合実験ヲスル白ノ教団ノ施設ラシイゴブ・・。ボクノ友達ハ昨日連レテ行カレタママ帰テコナイゴブ・・。今日ハ向カイノ檻ニ入レラレテイタピクシーガ連レラレテイッタゴブ。明日ハキット僕ノ番ダゴブー。」


 一頻りしゃべった後、ゴブ太は泣き出してしまった。それにしても聞き漏らせない単語がいくつか出ていたな・・。レベル・・融合実験・・光の教団・・ピクシー。

特に”融合実験”には身に覚えがありすぎる・・・。


(どうやら俺が恨むべきは”光の教団”という組織のようだな・・。)


教団というからには宗教組織なのだろう・・。しかも魔物を人工的に融合させるなど、あきらかに組織の”裏”の施設のようだ。


(だったら俺は成功例・・なのか?)


 もし成功例ならこのまま剥製にされるかもしれない・・失敗例なら処分されるだろう。どちらにしてもここから逃げなければまずいことになりそうだ。

(逃げるためにこの世界の”ルール”を知る必要があるな・・。)

ゴブ太は先ほど”レベル”といった。レベリングシステムはRPG[ロールプレイングゲーム]の定番だろう。

(それが自分にも適応されるかもしれないのは予想外だがな・・・)

俺は内心でため息をつきつつゴブ太に問い詰める。


「オイ、レベルニツイテオシエロ。」

「レ、レベルヲ知ラナイゴブカ?」


 そしてゴブ太からレベル・・つまりこの世界のシステムについて聞いていった。

それによると、ある程度予想通りの結果となった。


1、レベルは上がるたびに体が強化される。

2、レベルは生き物を殺すことで殺した生き物の生体エネルギー吸収することで上げることが出来る。

3、レベルが高い生き物は多くの生体エネルギーを持つ。

4、自分のレベルおよび強さは頭で念じることによっていつでも確認できる。



1,2,3は予想通りの結果となった。問題は4つ目だ。自分の強さを確認できるのは生き残るうえで重要なファクターになるはずだ・・。そう思いつつ俺は頭で“ステータス”と念じる。

(RPG的にステータスが一番分かりやすいだろう・・・。)


頭で念じた瞬間、目の前に青白い半透明なディスプレイが現れる。


「オウェア!」


頭にイメージとして思い浮かぶと思っていた俺はいきなり目の前にでてきたディスプレイに驚き、素っ頓狂な声をあげてしまった。


(本当にゲームじみてきたな・・!どうなってやがるんだこの世界は!!)


俺は内心で悪態をつきつつ恐る恐る青白く光るディスプレイを覗き込む。



Name:■■■■■


種族:合成魔獣[キメラ]


Level:なし


ステータス:

STR 10 

DEX 10

LUK 8

INT 0

ス キ ル:

★魔食[モンスターイート]、悪魔の目[デビルズアイ]


装   備:

なし



(・・・色々と突っ込みどころの多いステータスだな。)


まず目に付いたのは”Name”・・つまり名前のところがバグっている。


(そういえば俺の名前は・・・)


そう思い自分の名前を思い出そうとしても・・思い出せない。それどころか、家族、友人がいたことは思い出せても、彼らの顔と名前が薄霧でもかかったかのように思い出せなかった。


(どうやら、白の教団は俺の記憶まで奪っていきやがったらしい・・)


 人間としての尊厳も・・名前すらも奪われたということに、はらわたの煮えくり返る思いをどうにか抑えつつ、なんとかステータスに考えを戻す。


 次に”Level なし”これはどういうことか・・・現時点では分かりそうにない。

ステータスはゲームにありがちな表記方法だったためわかりやすいが、いかんせんこの数字が低いのか高いのか分からない・・。さらにINT・・・これは、ゲームでいう魔法力に影響するパラメーターのはずだが・・。


(やはり、魔法のようなものが存在するのか・・・。)


 あの白服集団の呪文や文字を見て、もしかしたらと思っていたが、どうやら魔法のような何かが存在しているようだ。


(やはりここは、異世界なのだろうか・・)


いままで確信をもてなかった考えが、多すぎる判断材料のせいで限りなく確信に近づく。


(確かに、こんな化け物や魔法じみたものなんて、現在では考えられない・・。どちらにしろ、こんな姿になってしまった俺は元の暮らしには戻れないしな・・・。)


 自虐的な考えが湧いてきて絶望しそうになる。だが、意地汚い生きることへの執着で己を奮い立たせる。


 


次に気になるのがスキル。俺は青白く光るディスプレイに写る“魔食[モンスターイート]”の文字に触れた。すると説明のような文章が浮かび上がる。



魔食[モンスターイート]


・物を食らうことでその物のスキルと強さの一部を奪い取る。


・食らった質、量、鮮度が良いほど奪える力は多くなる。


・同じ種類、種族の物から奪える力は限界がある。



 このスキル、とんでもない内容だ。つまり、物を食べれば食べるほど強くなることが出来る・・・。うまく使えれば生き残るだけではなく、光の教団とやらに復讐も可能かもしれない・・。

(・・・だから俺は“Levelなし“なのかもしれないな。俺の種族が合成魔獣[キメラ]というのも関係ありそうだ・・・。)


 次に悪魔の目[デビルズアイ]だ。そう思いディスプレイに触れる。



悪魔の目[デビルズアイ]


・自分よりステータスの合計値が低い生き物のステータスを盗み見ることが出来る。


・精神安定補正 大



すごく便利そうだ。俺より弱いやつ限定だが、ステータスを覗けるのはありがたい。それにしても・・・

(“精神安定補正 大”か・・。)

不思議にすら‘思えなかった’が、こんな状況で、ものの数分で落ち着けるのはこいつのおかげか。・・・だが、‘思えなかった’。つまり、これは精神を麻痺させる効果があるようだ。

(気をつけなければな。・・・さて)


俺は早速このスキルを使ってみることにした。先ほどから意識の外に放り出していた緑色の生き物に対して・・・・。


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