王子との対面
「失礼します。」
とりあえずそういって部屋に入る。
部屋の中は、案外落ち着いた調度品ばかりであまり王子にはふさわしくないのでは?と思うほどだった。
ほとんど王子の人柄を知らないので”意外”だとは言えないのだけど。
まあ、世間一般の人が思う”王子”がいる部屋とはかけ離れているとでも言えばいいのかな?
奥へ進んでいくと机にむかって、黙々と書類に何か書いている人影が見えた。
多分あれが王子であるキース様なのだろう。
顔は見えないけど。
その横には、騎士?それとも王子の側近の方?らしき人がいる。
もしかしたら騎士兼側近の方なのかもしれない。
ひとまずヒロトじゃなかったことに安心。
ちょうどわたしが執務机の前あたりに来たところで王子は顔をあげた。
顔を見たことはあるのでとくに思うことはない。
そこらへんの人と比べれば顔は整っているとは思うけどそれ以上のことはわたしにはよくわからない。
お茶会やら舞踏会やらではみんながワアワア騒いだりしてるけど、わたしはそうなんだ~としか言いようがない。
要するにそこまで興味がわかないってことなんだけど。
王子のほうはといえばことらを一瞬みたあと、おもむろにくちを開く。
そして出てきた言葉は
『・・・こんにちは? 』
まあ何と言うか言いたいことがいっぱいある。
まず、その間は何だろう?
それにわたしに対してこんにちはでいいのか?
それから、なぜ疑問系なの?
そしてそして、最大の疑問はこれ。
何でわざわざ母国語であるポーリア語を使わず古代セオラ語で話すのでしょう?
それも他にもこの辺の国で使われているカルミア語やオーバ語ではなく、一番面倒くさい古代語。
たしか日常会話ではほとんど使われていないはず。
・・・・・・。
わたしを試すため?
教える方がバカじゃ意味ないから?
・・・・・・。
うん、それ以外考えられない。
(自問自答だし。)
それならわたしもセオリ語で返すべきよね。
『こんにちは、王子殿下。
メアリと申します。
どうぞ、これからよろしくお願いします。』
言い切って頭を下げる。
おお!いつもより、会釈しやすい!
やっぱ服は質素なのがいいなぁ。
てか、そんなこと言ってる場合じゃない。
あの返事でよかったの?
『メアリどの、か。
こちらこそよろしく頼む。』
どうやらよかったらしい。
ローズ様とは違って何か威厳さがあるような。
たしか王子はわたしより1つ下だった気がするんだけど。
「ところで、どっかで会ったことあるか?
何かみたことあるような気がするんだが。」
あ、言葉戻った。
こっちのほうが聞き取りやすい。
あたりまえなんだけどね、母国語だし。
てか、質問に答えないと。
と、わたしが一人そんなことを思っているなか。
前方からコソコソと話し声が聞こえてきた。
「キース様。それ口説き文句ですか?
古いですよ。」
「・・・別にそんなつもりはないが。」
王子の隣に立っていた人が王子にコソッと話しかけている。
勝手に寡黙な人などと思ってたけどそんなわけではないらしい。
というかむしろ真逆かもしれない。
王子に、にやけてつっこんでるし。
そして王子もほんとはこっちが素なんだろうな。
完全にすねてる。
返事がすごくぶっきらぼう。
半分くらいはあきれてそうなんだけど。
慣れてるのかな?
「ほら、王子。
メアリさん? が困ってますよ。」
「・・・うるさい。
おまえが余計なこと言いだすからだろ。」
「申し訳ない、メアリどの。
こちらで話しこんでしまって。」
いえ、思いっきり聞こえてましたから。
とは言えず、礼儀正しく返しておく。
「こちらこそ、紹介不足で申し訳ありません。
わたしはメアリ・グランテーヌと申します。
これで、おわかりになるでしょうか。」
王子にこの問いかけはまずかったかな。
でも言っちゃったし。
すると王子の方はなんと、今日はじめての笑みをこぼした。
「・・・かしこいな。あの古代語といい。
グランテーヌ家の令嬢だったのか。」
「いえ、それほどでも。
それよりわたしはこれからどうしたら良いのでしょうか?
何も聞いていなかったので。」
そうよね。まずはこれを聞かないと始まらないわ。
ほめられるってのもうれしいことはうれしいんだけど。
メアリは王子の前でも全然変わりません。
一国の王子に会えたというのに。
また中途半端なとこで終わりました。
次もそのうち更新します......たぶん