chapter03
少しずつ、少しずつ。
肉を剥がされていく。
鼠達は僕の体に群がり、肉を貪っていた。
まるで、終わりのない拷問だ。
だが僕には、抵抗する気力も体力も残っていなかった。
それどころか、最早声も出せずにいる。
身体の感覚が殆どなかった。
きっともうじき死ぬのだろう。
いっそ、一思いに殺して欲しい。
ミノタウロスの悪夢によって齎された活力も既に底をついていた。
僕にしては頑張った方だろう。
あの悪夢がなければ、もっと簡単に諦めていたに違いない。
今だって、殺してくれとは思うが死にたくはない。
けれども今の状況は、生きているよりも辛かった。
これこそが本当の生き地獄なのだろう。
これまで僕が感じていた生き地獄など生温いものだった。
じわじわと忍び寄る死の足音。
こんなにも恐ろしいことはない。
あるいは、ミノタウロスの悪夢の方がマシだったとさえ思える。
あるいはこれも悪夢なのだろうか。
感覚は確かに現実そのものだが、置かれている状況があまりに非現実的過ぎて実感が湧かない。
これも悪夢なら早く覚めて欲しい。
自殺を願った罰なのだとしたら、自業自得という他ないが、それにしたって些か重罰が過ぎる。
もう楽になったっていい頃合いだろう。
あー……、もうなんでもいいから早く終わってくれ。
やがてゆっくりと、僕の意識は闇に沈んだ。
──だが。
「どうなってんだよ……」
目の前に広がる光景に僕は震える。
まるで、何事もなかったかのように。
これまでの体験が全て泡沫であったかのように。
あるいは時を遡ったかのように。
僕はまたしてもあの白い空間に立っていた。
意味が分からない。
理解が出来ない。
これを夢と片付けるのは無理がある。
一体、僕の身に何が起きているのか。
混乱の中、またしても虚空が輝き始めた。
「またかよ……!」
しかし空間全体が輝いていた先程とは違い、狭い範囲だけが輝きを放っている。
そこに何の違いがあるのか。
前回はこの光が収まると同時にインプラットが現れた。
だとすれば、これはモンスターが現れる合図なのだろうか。
そういえば……と、思い出されるのはミノタウロスとの邂逅。
あの時も確かに一瞬視界が白んだのを感じた。
……間違いない。
この眩い光は、モンスターが現れる前兆なのだ。
そして、光の終息と同時にまたしてもモンスターが現れる。
現れたのは、三体のゴブリン。
醜い容姿の人型モンスター。
全身がくすんだ緑色で、腰にはみすぼらしい布を巻いていた。
インプラットよりは強い。
けれど、弱い部類に入るモンスターだ。
だが、それはあくまでもモンスターの中では弱いだけであり、人類の最底辺といっても過言ではない僕よりは強い。
それに、インプラットがそうだったように、ここのモンスターは僕が知るものよりもずっと獰猛で、ずっと危険だ。
ゴブリン達は僕を見付けるや否や、涎を撒き散らしながら襲いかかって来た。
「う、うわああああ!!」
──そうして僕は、三度目の死を迎えるのだった。




