chapter02
奇異の視線は学校に着いても続いた。
割合としては女性の方が多い気がする。
やはり、女性の方が美醜に敏感なのだろうか。
驚きだったのは、僕に危害を加えるあいつらだ。
僕と目が合っても、顔を顰めるだけで何もして来なかった。
いじめが始まってからというもの、こんなことは一度としてない。
あいつらにさえ素通りされる程、今の僕は酷いのだろうか。
絡まれなかったのは喜ぶべきなのだが、そこまで酷いのかと思うとそれはそれで釈然としない。
なんとも言えない複雑な気持ちを抱きつつ歩いていると、気付くと僕は教室の前まで辿り着いていた。
僕のクラスは所謂落ちこぼれの集まりだ。
あるいは力無き者達の集まりと言い換えてもいい。
何かが、あるいは多くが欠けた者達を集めた龍ヶ崎高等学校の掃き溜め。
それが僕の通うクラス──二年Z組だった。
他のクラスからは侮蔑の対象とされている。
しかし、そのクラスにおいても僕は底辺であった。
底辺の中の底辺。
つまりは最底辺だ。
音もなく、光も届かない。
自分以外は存在しない。
そんな世界に僕はいる。
這い出ようにも、簡単には抜け出せない。
多少勉強が出来たとしても、他でのマイナスが大き過ぎるらしい。
故に、クラスメイトであっても僕に関わろうとする人間はいなかった。
いじめを受けているわけではない。
ただ、存在しない者として扱われているだけだ。
僕と関わってもいいことがないからだろう。
それもある種のいじめかも知れないが、僕としては悪くない居心地だ。
何もされないのだから何もしなくていいというのは、案外気楽だったりする。
だから僕が教室に入ったとしても、気にする人間はいない。
こちらに一瞥もくれることなく、それぞれが思い思いの朝を過ごしている。
しかし、今日はクラスメイト達の様子が違った。
扉を開き、教室に足を踏み入れたその瞬間。
全員の視線が、示し合わせたかのように僕に注がれる。
そしてヒソヒソと何かを話し始めた。
内容は「ヤバくない?」などというもの。
いや、聞こえてるから!
ヤバいのか……?
そんなにヤバいのか!?
ここに来るまでにも十分過ぎる程に感じていたが、やはり僕の顔は醜いようだ。
かつてない居心地の悪さに、いっそこのまま帰ろうかとさえ思う。
だが今更帰るのも勿体ないからと自分の席に着くと、教室が更にどよめく。
さしもの僕も、これには疑問符を浮かべざるを得ない。
何故自分の席に座っただけでこんなに教室がざわつくのだろう。
それとも他に何か原因があるのだろうか。
しかしそれを誰かに訊いた所で答える者など皆無だろう。
何せ、僕は空気なのだから。
……いや、その不文律も、今日に限っては若干崩れつつあるのだけれども。
その時だった。
「──君は、どうしてその席に座っているのかな?」




