chapter04
街灯に照らされた少女の姿は美しかった。
歳は同じくらいだろうか。
どこか儚げな雰囲気を纏う少女は、何故か僕に強烈な敵意を向けてくる。
「少しでいいから話をさせてくれよ……っ!」
敵意というか、これはもう殺気だ。
「話なんてする必要はないわ。あなたの特徴は聞いていた話と一致しているもの」
──……特徴?
彼女は一体何の話をしているのだろう。
いまいち要領を得ない。
しかしこのままではマズイのは間違いなかった。
幸いにも、痩せたおかげか僕の身体はよく動いてくれる。
考えるよりも先に身体が動くのだ。
彼女の動きは流麗で速く鋭いけれど、どうも当たる気がしなかった。
僕はもっと強い相手を知っている……気がした。
マズイのは僕の置かれている状況だ。
深夜十二時過ぎに美少女と路上で喧嘩している底辺男子高校生。
字面がヤバ過ぎる。
ただでさえ補導されたらマズイ状況なのに……。
警察にでも見付かったら、それこそ大事だ。
しかしこれだけ騒いでいたら、誰かが通報するのは時間の問題だろう。
そうなる前に彼女を説得しなければ。
「頼むから落ち着いてくれ!」
僕の叫びは、しかし彼女には届かない。
「私は冷静よ」
「どこがだ!?」
彼女の表情や声色は、確かに冷静であるようにも見える。
だが、行動が伴っていない。
冷静な人間なら、殴り掛かったりはしないだろう。
取り付く島もない。
時間は刻々と過ぎていく。
それに比例するように、状況は悪化していく一方だ。
やるしかないのか……。
女の子相手にやりたくはないけれど、しかしこのままではいられない。
怪我をさせないように無力化できれば重畳。
しかし最低でも逃げる隙を作れるだけでも上出来だろう。
多少の怪我はご愛嬌。
話も聞いてくれない彼女が悪いのだ。
問題はそれが僕に出来るか、だった。
避けるのは難しくないが、攻勢に転じるとなると話は別になる。
だが、やるしかなかった。
幸いにも、彼女の動きは良く見える。
捉えることも、出来なくはないはずだ。
見極めろ。
隙を突くタイミングを。
──ここだ。
僕は突き放たれた拳を躱し、手首を掴むと、そのまま背後に回り込んだ。
「クッ! 離しなさい!」
完全に肩が極まっているのが分かった。
これなら抵抗は出来ないだろう。
「あんたが暴れないなら離すよ」
「……分かったわ」
今の間はなんだよ……。
絶対暴れる気だろう。
離したくない。
「あんたはなんで僕を襲うんだ?」
「あなたが連中の仲間だからでしょう」
おいおい、僕が連中の仲間だって?
「僕が仲間なわけないだろう」
「惚けても無駄よ。あなたの外見は、連中のリーダーと思しき人物と一致しているもの」
彼女の言葉に得心がいった。
そうか。だから彼女は僕を連中の仲間だと思い込んでいるのか。
だが、それは完全に誤解だ。
僕が連中のリーダーなはずがない。
ただ、無実の証明は非常に難しい。
どうしたらその誤解が解けるのだろうと思っていたその時。
「おいおい。なんだこりゃあ」
唐突に、低い声が響いた。




