chapter04
五十年前に現れたものは、ダンジョン以外にもう一つある。
スキルと呼ばれる理外の力だ。
つまり、その者が持つ性質や異能、あるいは特殊能力のことを指す。
発現する者は極僅かであり、数万人に一人とも言われている。
神に選ばれし者にのみ与えられた天恵。
当然、僕にそんな才能はない。
仮にあったとするならば──きっと、もっと違う人生を歩めていたはずだ。
一方でモンスターは、どんなモンスターであれ当たり前のように必ずスキルを持っている。
ランクが高いモンスターである程に強力なスキルを有しているとされており、Sランクモンスターに認定されているヴァンパイアともなれば所持するスキルは最早常軌を逸していた。
〈眷族召喚〉
〈不死身〉
〈霧化〉
〈吸収〉
それが、僕が奴のスキルに付けた名前である。
正しい名称が分からないので、便宜上の名前を付けた。
厄介なスキルは数多あれど、中でも特に厄介なのは〈身体支配〉だ。
奴の唾液を体内に取り込んでしまったら肉体を乗っ取られる。
つまり、噛まれたら終わり。
それで何度殺されたか分からない。
反則が過ぎる。
どうやって倒せばいいのか。
とはいえ、スキルはあくまで僕の予想でしかない。
〈不死身〉というのも体感であり、実際どこまでの不死性なのかは分からない。
殺し続けていれば。
壊し続けていれば。
いつかはきっと死ぬはずだ。
それが希望的観測に過ぎないのだろうことは薄々察しがついている。
だが、そう思わなければやってられない。
だから僕は幾度もヴァンパイアに致命傷を与えた。
召喚される蝙蝠を躱しつつ、奴に噛まれないように細心の注意を払いながら。
首を折り。
心臓を抉り。
身体を両断し。
頭を破裂させた。
されど、ヴァンパイアは死なない。
どれだけ致命傷を与えようとも瞬く間に復活するのだ。
「……クソ……っ!」
どうやったら死ぬんだよ。
化け物の中でも更に化け物。
勝ち筋が見えない。
一方的に消耗させられるばかり。
これまでの経験のおかげで、こちらはまだ殆ど傷を負っていない。
辛うじて躱せている。
奴の攻撃パターンは身に染み付いているのだ。
だが、いずれ限界が来ることは目に見えていた。
ただ壊すだけじゃ足りない。
再生され続ける以上、突破口を見付けなければジリ貧だ。
「何か……何かないのか……!?」
懸命に弱点を探すが、空腹のせいで頭が回らず、焦燥ばかりが募る。
──その時だった。
ヴァンパイアが〈霧化〉したのは。
「──んっ?」
〈霧化〉した刹那。
僕は妙な違和感を覚えた。
普段なら見過ごしていただろう小さな違和感。
だが、極限であるが故に見逃さなかった。
ヴァンパイアの身体が霧に変わる際、心臓とは反対の位置にある小さな赤い宝石のような何かだけが霧になるまでに僅かな誤差があったのだ。
もしもあれがヴァンパイアにとっての弱点なのだとしたら──。
見付けたかも知れない。
突破口を。




