chapter03
勉強をする時、僕はあえて少しだけ空腹の状態で勉強に臨む。
その方が集中出来るからだ。
しかし、逼迫した飢えというのは想像以上に辛く、苦しい。
判断力は鈍り、思考は散漫になる。
身体は思うように動かない。
それでも、戦わざるを得なかった。
戦わなければ死ぬだけなのだから。
何度も潰され、何度も切られ、千切られ、嬲られ、裂かれ、齧られ、噛み砕かれ──そうして殺された。
ウルフの群れ。
オーガ。
ゴーレム。
天狗。
猫又。
河童。
メドゥーサ。
ポイズンスライムの群れ。
キラーラビットの群れ。
ワイバーン。
中には、妖刀なんて変わり種もいた。
妖刀との戦いもある意味では忘れられないものであったが、何よりも忘れてはならないのが、最初に僕を殺したモンスター。
ミノタウロス。
他にも色々いたと思うが、もう覚えていない。
忘れてしまうほどに何度も殺された。
そして、殺した。
あるいは壊した。
されど、今に至ってもまだ──殺せずにいるモンスターがいる。
ヴァンパイアだ。
あれから何度か相見えているが未だ殺せていない。
殺せていないだけならまだいい。
しかし、僅かな勝機さえ見えないのが致命的だった。
何度殺しても、どんな殺し方をしても奴は死ななかった。
驚異的な、あるいは脅威的な回復速度で、致命傷さえも回復してみせる。
殺しても死なないなんて、まるで僕と同じじゃないか。
もっとも僕の場合は確実に死を体験しているので、ヴァンパイアのそれとは似て異なるものだけれど。
【35/36】
カウントは残り1。
後、一歩。しかしその一歩がもどかしい程に遠い。
「そろそろか……」
天狗。ゴーレム。ミノタウロスと続き、次で四連戦目。
好調だが、飢餓感はかなり酷い。
それでも、臆していないのだから僕にしては前向きだ。
この空間で過ごした時間が、繰り返す生と死が、僕の性格を変えたのだろう。
気弱で臆病なかつての僕は、もうどこにもいなかった。
瞬間、虚空が輝きを放つ。
現れたのは、漆黒のドレスに身を包んだ赤髪の女であった。
金の双眸。
鼻筋はすっと通り、仄かに色付く唇は引き締まっている。
しなやかな四肢は、透き通るように白かった。
誰もが振り返る美女。
人間となんら遜色のない外見をしている。
人間であれば、二十歳くらいの歳の頃であろうか。
初めて見た時には、思わず見蕩れてしまったほどに美しい。
しかし、その外見に騙されちゃならない。
こいつは正真正銘のモンスターなのだから。
Sランクモンスターのヴァンパイアなのだから。
「さて、存分に殺し合おうじゃないか。ヴァンパイア」
お前を殺して、僕はここを出る。




