chapter04
もう何度死んだか分からない。
切り裂かれて、食われて、潰されて。
何度も何度も死んだ。
だが、何度死んでもこの地獄は終わらなかった。
死に抗うことはない。
ただ、されるがままだ。
しかしまだ、辛うじて心は壊れていない。
いや、壊れていないというと語弊があるだろう。
死に慣れている時点で、多分僕はどうかしている。
だが、辛いという感情はちゃんとあった。
何故僕がこんな目に合わなければいけないのか。
いつになったらこの地獄は終わるのか。
何度目か分からないモンスターの蹂躙にあいながら、そんなことばかりが頭を巡る。
もういい。
終わらせてくれ。
こんなことになるくらいなら、いじめられていた方がずっとマシだ。
時間は嫌という程あった。
持て余してしまうほどに。
だから考えた。
どうしたらこの地獄を抜け出せるのか、と。
どうしたら。
どうしたら。
どうしたら。
どうしたら。どうしたら。どうしたら。どうしたら。どうしたら。どうしたら。どうしたら。どうしたら。どうしたら。
やがて、僕は一つの結論に至った。
「──あぁ、そっか……」
全部、ぶっ壊せばいいだけか。
目の前のモンスターも、この空間も。
全部、ぶっ壊せばいい。
壊すだけの力がないだろうって?
だからどうした。
どうせ何度だってやり直せるのだ。
出来るまでやればいい。
出来るまで死ねばいい。
簡単な話じゃないか。
死ぬのはもう慣れた。
拳を握り締め、肉薄するグールを殴り付ける。
所詮は僕の拳だ。
体重を乗せて、全力で殴ったところで、大したダメージになるはずがないと思っていた。
しかし結果は違った。
予想外にも、グールは吹き飛び、よろめきながらたたらを踏んだ。
「ガッ! ガァ……」
唸るグール。
「──ハッ、ハハッ、ハハハハッ!」
なんだ、お前。存外に弱いじゃないか。
僕は地面を蹴り、グールに追撃を加えた。
技術も何もない。ただ、大振りに殴るだけの粗末な攻撃。
それだけで僕は、グールを圧倒していた。
しかも幸いにして、今回のモンスターはグールが一体のみ。
いける。これなら勝てる。
しかし、何故僕如きの攻撃が通じるのだろう。
グールのランクはゴブリンよりも上だ。
たった一体とはいえ、ゴブリン如きに蹂躙されていた僕が勝てる相手じゃない。
それとも──僕ってやれば出来るのか?
「いや、まさか……な」
そんなことはないだろう。
自嘲するように笑う。
僕にそんな力があるはずない。
しかし、考えてみても答えは分からなかった。
分からないが、僕にしてみれば好都合だ。
僕は、鬼になった。




