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第7話 孤独とさようなら。

 それから俺はこの5年間のあらましを両親に語った。

 少し悩んだが異世界転移していたという事実は隠さなかった。幸いにも両親は俺の話を信じ、受け入れてくれた。


 身寄りのないステラについても、しばらくウチで預かれないかと頼み込む。

 すると父はすんなりと頷いて、予想の斜め上の発言を口にした。


「ウチの子として迎えるとしよう」

「は? え、それって……?」

「養子にするということだ」


 結婚するにはまだちと年が足らんからな、と父は豪快に笑う。


「い、いやいや。養子って。なんか、手続きとか難しいんじゃないのか? そんな簡単にできるものなのか?」

「そんなものは父さんに任せておけばいいさ。幸い、ツテもいくらかある。問題はない」


 父は大学教授をしている。そのため色々な知り合いがいるのは知っているが……。その決断の速さに俺は息を呑むことしかできなかった。


「ステラくん。君の意見を聞きたい。うちの娘になる気はないかね?」


 父はステラに投げかける。


「私、ずっと娘が欲しいって思ってたのよねぇ。だから、ステラちゃんなら大歓迎よ」


 当然のように父と同意見の母は笑顔でそう言って後押しした。


「……ぁ、わ、わたし…………」


 ステラにとってもこれはさすがに想定外の事態であったらしい。赤の瞳を右往左往と彷徨わせて、ついには助けを求めるように俺を見た。


「(…………いいのでしょうか)」


 両親には聞こえない念話で問いかけてくる。


 俺の方は魔法を使えないがステラの補助によって、自分の想いをステラへ伝えることができる。


「(まぁ、いいんじゃねぇのぉ? 知らんけど。これも嫁とか言って好感度爆上げしといたおまえの成果だろ)」


 俺もこの話の流れには振り回されている側だが、それでも、こくりと頷いて見せた。


「(あ、あはは……そう言われるとさすがの私も罪悪感が湧きますね……)」

「(完全に墓穴だったかもな、あの発言)」


 今思えば俺とステラの関係がどんなであろうと、結局は今と同じ状況になっていた気がする。自分の両親がそんな人間であることを俺は思い出し始めていた。


「……あの」


 ステラは背筋を伸ばして、重い口を開く。

 いつものふざけた様子はすっかりなりを潜めてしまっていた。


「……よろしく、お願いします」


 ゆっくりと、深く頭を下げるステラ。


「ああ。よろしく頼むよ、ステラくん」

「これからよろしくね、ステラちゃん」


 ひどく緊張していたステラを両親は温かく迎える。母は席を立ってステラの方へ向かうと、その華奢な身体を柔らかく抱擁した。


「…………………」


 ステラはあまり反応を示さなかった。

 それが俺にはただ、感情がぐちゃぐちゃでどうして良いのか分からない子供のように見えて、やっぱり妹だなと、なんとなく腑に落ちた。


「ひとつだけ、お願いをしてもよいでしょうか」


 やがてステラは父と母を改めて見つめ直す。それから2人が快く頷いたのを見て、意を決してこう告げた。


「私に、新しい名前を付けていただけないでしょうか」

 

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