2話
「我は感動したのです!このアニメは15年も前の作品だというのにまだ観てくれている方はいるのですね!我は人間界に飛び立つと決まった時からこのアニメについて語り合える人間様を探していたのです!我の世界ではアニメを観ているのは我くらいで誰ともお話できなかったのです!皆が人間界のいろんな国に理由もなく飛び立つ中、我にはこの明確な理由があったので日本にきたのです!」
なんだこのマシンガントークは。メリーは小さい口を一生懸命に動かし話してきた。まあいい。顔が可愛いんだから。仲良くなればいずれ本当の彼女を知ることになるだろう。だから今は話を合わせておくか。それにこのアニメはかなりアニメオタクの中でもニッチな作品だ。俺も高校時代、アニオタ仲間に勧めたことがあったが「絵柄が無理」だの、「50話もあるなんて長い」だの言われ誰にも観てもらえず話せる相手がいなかったのだ。彼女とは気が合いそうだ。
「そういえば人間様のお名前はなんと言うですか?」
「俺は篠宮紫苑だ。紫苑とよんでくれ」
「紫苑!紫苑はどの子が好きなのです?我はこのバイオリンは下手だけど天才少女の子が好きなのです!」
ああ、確かに雰囲気は似ているかもしれない。
「俺はやっぱりヒロインだな。病弱でありながらも一生懸命前を向いているところが好きだ」
「わかるです!!最初は長い日常回があるけどそれでどんどんヒロインの一生懸命さが伝わってきて主人公もヒロインの行動で成長するからこそ最後が泣けるのです!」
「おお!わかるか!俺もあの話はマジで泣いて〜」
何時間喋り続けただろうか。気がつくと窓の外は真っ暗だった。
ぐー
メリーの方を見ると恥ずかしそうにお腹を抑える。
「お腹すいたな。ご飯食べようか」
俺がそう言うとメリーはこくりと頷く。その仕草が子供のようで可愛らしい。最初は痴女だと電波少女だの拒絶していた俺も数時間彼女と話をしていたからかすっかり心を許していた。いつものようにカップ麺にお湯を注ぐ。ただ、いつもと違うのはカップ麺が2つあると言うことだ。
「いい匂い〜」
メリーは早く食べたくて仕方がないらしい。
「まあ待て、もうすぐだから。それより聞いていいか?」
「なんでしょう?」
アニメキャラのように首を傾げるメリー。現実にいたらかなり痛々しいがメリーの可愛さで不思議と不快感は感じない。
「なんでそんな格好しているんだ?」
俺は初めて見た時からずっと疑問だったうちの一つを聞いてみた。メリーに心を許した今、目のやり場に正直困る。顔は可愛いしなんだかいい匂いもするような…
「サキュバス界ではこれが普通なのです!!みんなこんな感じのお洋服をきていて我もこれしかもっていないのです…でも人間界だとこんな格好している女の子1人もいないからちょっと恥ずかしいのです…」
メリーにも恥じらいがあったとは。メリーは顔を赤くしている。そんなメリーを見ていると俺まで恥ずかしくなってきた。俺は腰を上げ数歩歩くとクローゼットからロングTシャツを一枚取り出しメリーに渡す。
「まだ寒いだろこの時期にその服は…これ着とけ」
「いいのですか?」
「気にするな」
メリーは嬉しそうに痴女服の上から俺の服を被った。そうこうしているうちに3分が経過し、カップ麺の蓋を開ける。湯気とともに食欲をそそるいい匂いが漂う。一人暮らしを始めてからはや2ヶ月経つが以外にもカップ麺生活は飽きない。味のレパートリーも豊富だし意外と栄養バランスも悪すぎはしない。ちなみに今日は王道のシーフード味だ。
「できたぞ、食べな」
割り箸を割ってメリーに渡してやる。メリーは頭が弱そうなので割り箸を使えるのか疑問に思っていたが普通に食べ始めた。
「あ、あちゅっでも、美味しいです!」
「ちゃんとふーふーして食べろ」
俺も麺を啜る。やはりカップ麺は最高だ。メリーはどうやら啜れないらしくはむはむと食べている。
「紫苑は天才です!こんな美味しいものを作れるなんて!!」
カップ麺は俺の努力じゃない。企業努力だ。俺がしたことといえばお湯を沸かし、淹れたくらいだ。だが可愛い女の子に褒められるのは嬉しかった。
「もしかしてメリー。カップ麺初めて食べたのか?」
「はい!見たことはありましたがこんなに美味しいものだとは知りませんでしたなのです!」
か、かわいい〜こんな可愛い子が俺の彼女でいいのか?今すぐ抱きしめたい。もっとうまいものを食べさせてやりたい。
「メリー、ずっとここにいていいぞ」
俺は思わず口に出していた。
「でも、さっきは出ていけって…」
「いや俺たちもう恋人同士だろ。出会ってすぐ付き合って同棲ってのはまあレアではあるが俺もメリーのこと好きだし、メリーが家に帰れないなら彼氏である俺が助けるしか…」
俺は恥ずかしくて顔が赤くなっているのをメリーに悟られないよう、早口で説明する。しかし
「彼氏?恋人ってなんですか?」