11話 装備
魔物を倒しながら森を進むこと3日が経過した。
「---止まって」
「どうしたの?」
「……あの魔物は今の私たちじゃ倒せない」
「分かった。迂回しよう」
息を潜めてボクらはそんな会話をする。
あれは……蛇の魔物かな?
大きさは人間の腰くらいはある。
ホブゴブリンでさえ丸呑みにしてしまいそうだ。
今のレベルじゃ倒せないような魔物も森に生息しているので、ソイツらを避けながらの行軍。
立ち塞がってきて倒せそうな魔物は討伐する。
そんなこんなでボクらのステータスは、
ソリス LV3 → 6
種族:邪妖精
ステータス
HP:20/20 → 32/32
MP:5/5 → 8/8
攻撃:8 → 14
防御:8 → 13
魔力:3 → 6
速度:11 → 18
スキル
アトラス LV3 → 7
種族:邪妖精
ステータス
HP:38/38 → 50/50
MP:4/4 → 6/6
攻撃:28 → 36
防御:26 → 34
魔力:10 → 12
速度:25 → 33
スキル
ボクは相変わらずのカスだが、
アトラス君の成長はめざましい。
魔法系統以外のステータスが軒並み上昇していて、既に40越えをしそうなものもある。
HPなんて50の大台に乗っているくらいだ。
その強力なステータスで様々な魔物を屠った。
この3日間で討伐してきた魔物は、
・ホーンラビット。
初日にボクらが倒した角が生えた兎だ。
油断しなければステータスの差で簡単に押し潰せるが、体重の乗った角攻撃は侮れない。
相当の差がない限りは致命傷を負うと思われる。
・シェルダーホッグ
見た目は四足歩行をする小さめの豚だ。
攻撃方法も特筆するべき点は無く、強いて言えば頭の辺りに硬質化している部分があるくらい。
そこはかなり硬かったのだが、側面は普通に柔らかいので硬質化した意味が分からなかったぜ。
・レッサートレント
蔦や草木を手足とする植物系の魔物だ。
ボクたちは木陰で小休憩を挟んでいた。
ずっと歩きっ放しで精神を切り詰めていては、必ずどこかで破綻してしまうからね。
休み過ぎは良くないが小休憩程度なら問題無い。
「ソリス」
「うん? なあにアトラス君」
ボクは手元から目を離さずに聞き返す。
「それ、何を作ってるの?」
アトラス君はボクの作業に興味津々なようだ。
目をまん丸にして、ボクの手元を覗き込んでくる。
「んと、ちょっと待ってね」
もう少しで作り終わりそうなのだ。
そして、
「できた!」
完成だ!
ボクは出来上がったものを掲げて見せる。
「……な、なにソレ?」
アトラス君は首を傾げている。
ソレは小さな袋のような皮に、伸縮性のあるレッサートレントの蔦が括り付けられてあった。
ふふふ、これでボクの戦力も強化されるだろう!
「分かった。物を入れて運ぶ袋だ」
「間違ってはないケド、不正解かな」
「間違っていないってなんだろう……?」
むむむ、とアトラス君は悩みに悩んでいる。
と、
「もしかして、投石機?」
カンナギがアトラス君の代わりに答えた。
「正解! 流石はカンナギ博士だね!」
そう。
僕が作ったのは投石機、所謂スリングだ。
スリングを使えば素手の何倍もの力で投石できる。
まさに、今のボクにうってつけの装備だ。
「私は博士じゃない。
エルフの里で同じようなのを見ただけ。
まぁ基本的には皆、弓を使っていて、あまり目にするようなものでもないのだけれど」
エルフの武器=弓。
これ鉄板だ。
どうやらこの世界でも同じらしい。
「カンナギも弓を使うの?」
「いや、私には風の魔法があるから。魔法力が尽きない限りは弓を使うことはあまり無い」
「なるほどね。……にしても、魔法かぁ」
老若男女問わず魔法に1度は憧れる。
ボクなんかゲーム好きだったから余計だよ!
「いいなあ……」
魔法への憧憬から溜息が出るほどに。
すると、
「あ、後で教えてあげる」
カンナギがそう言ってくれた。
「いいの!?」
「うん。でも期待はしない方がいい」
カンナギはふるふると頭を振って、
「魔法は才能が無いと使えない。
才能が無ければどんな努力をしても無駄になる」
「うわぁー……シビアな世界なんだねぇ」
産まれた時から決まるってわけか。
でも逆を言えば、環境が最悪でも一発逆転を狙える可能性を誰しもが秘めてることになる。
才能の有る無しは、調べるに越したことはないな。
「そうだ。アトラス君も一緒に」
「うぅ……」
うわ。
アトラス君が何やらジメジメしてる。
「湿っぽいなぁ……どうしたのさ」
「ソリスとカンナギの会話に着いていけない」
乙女か貴様!
「僕も2人と対等に話せるようになりたいよ……」
「そればかりは仕方ないさ」
ゴブリンの社会は勉強という文化が無い。
恐らく単純で従順な労働力を生み出すために、わざと知識を与えていない節があった。
そして、稀に頭の良い奴が現れると、別の場所に隔離して他のゴブリンに近寄らせない。
……先輩ゴブリンが賢いかは置いといて。
そんな環境で知識が付けられるはずが無いんだ。
「僕も勉強ってやつをしてみたいな。
そうすれば、2人に追い付けるかもしれないのに」
アトラス君は溜息をつきそうな顔でそう言った。
彼、ステータスは強いんだケド。
如何せん女々しいところがあるんだよな。
特に仲間の話になると、それが顕著になる気がする。
「男の子なんだからクヨクヨしない!
ほら、これあげるから。機嫌直してよ!」
ボクは地面に置いてあった物を渡した。
その物とは、盾だ。
木の盾にシェルダーホッグの硬質化部分を切り取って貼り付けただけの粗悪品だけどね。
何も無いよりかは幾分マシになるだろう。
「こ、コレ……!」
目をキラキラと輝かせるアトラス君。
おお……そこまで喜んでくれるなら、ボクとしても作りがいがあったというものだぜ。
「それと、エルフの里に着いたら勉強を教えるよ」
学びたいと彼は言った。
意欲のあるやつには教えたくなる性なのだ。
「え!? ソリスが教えてくれるの!?」
暗殺者の一環で教師に成りすましたこともある。
深い処までは無理だが、基本的なことは教えられる。
「なんだい、カンナギの方がいいのかな?」
「そ、ソリスがいい! ソリスに教わりたい!」
ほほほ、愛いやつめ。
「それじゃあ約束だ。
エルフの里に着いたら一緒に学びを得よう」
「うん! 約束する!」




