10話 狩り
ボクたちはエルフの里を目指すことになった。
ゴブリンの洞窟を脱出したのは真昼だったので、そのままエルフの里に向かうことができた。
正確では無いがカンナギによると、ここからエルフの里までは大体1週間ほどで着くらしいが。
恐らく追っ手にはホブゴブリンが来ている。
彼らは狩猟部門として毎日外へ狩りに出ているので、森の地形を知り尽くしているはずだ。
進行速度はボクたちの数倍と考えてもいい。
……正直、逃げ切れるかは分からん。
そんな相手に捕まったら即ゲームオーバーとか、どんなクソゲーだよ!と言いたくなる。
だから、最悪を考えることにした。
もし追い付かれたら、ボクらは逃げるしかない。
逃げられる可能性を僅かでも上げるには、ステータスを底上げするしか方法はないだろう。
つまり、レベルアップだ。
今のボクのステータスはこんな感じ。
ソリス Lv.3
種族:邪妖精
ステータス
HP:20/20
MP:5/5
攻撃:8
防御:8
魔力:3
速度:11
スキル
うーん……貧弱ゥ。
スキルも無いし、ステータスも軒並み低い。
アトラス君に比べたら、天と地ほどの差がある。
アトラス Lv3
種族:邪妖精
ステータス
HP:38/38
MP:4/4
攻撃:28
防御:26
魔力:10
速度:25
スキル
え、ホントに同じゴブリン?
三本の角が生えている時点で普通とは違うと思っていたケド、まさかこんな差があるとは思わなんだ。
そりゃ狩猟部門のホブゴブリンにも認められるわ。
てか、これならイけるのでは?
レベルアップすればステータスは上がる。
アトラス君を前衛にボクが後衛として戦えば……。
なんて、一縷の希望を抱いたボクも一瞬だけ居た。
ただ残念なことに。
ホブゴブリンのステータスは更に上らしい。
アトラス君から聞いた話だが平均60はあるそうだ。
そんなのが何体も襲い掛かってくる。
やはり、真正面からの戦闘は現実的じゃあない。
できる限りのレベルアップをして逃亡に注ぐべき。
弱肉強食の世界なのである。
ボクとアトラス君は茂みから魔物を観察していた。
「あ、あれがカンナギの言ってた魔物?」
「だね。たしかホーンラビットだったかな」
魔物の見た目は、頭上に一本角が生えた白い兎だ。
あの一本角に刺されたら痛いじゃ済まない。
逃亡に当たって、致命的な負傷は避けたいところ。
魔物との殺し合いに良い悪いも無いので、不意打ちで有利な状態から戦闘を始めることにする。
「ヨシ……準備はいいかい?」
「うん。ボクがソリスを守る盾になるよ」
そこまで意気込まんでもいい。
「ボクは兎の頭蓋に石をぶち当てる。
そして混乱の隙を狙って君が叩き潰すんだ」
ボクはアトラス君の手元を見ながら言った。
アトラス君には拾った木の棒を持たせている。
かなり大きく、ボクが持ったらよろけてしまう。
まさしくこんぼうと言ったところだ。
「それじゃ……いくよ」
そう言ったと同時にボクは石を投擲。
前世の暗殺者としての経験が生きてくる。
体格は変化したにもかかわらず、投擲の感覚は健在で、兎の頭目掛けて石は中空を走っていった。
バカンッ!
石は無事に命中。
「きゅ……きゅう」
兎は何が起きたかすら把握できていない。
ぐらぐらと勝手に揺れる脳味噌と身体を何とか持ち直そうとしている状態だ。
「ッ!」
茂みからアトラス君が飛び出した。
兎は飛び出てきた棍棒持ちのゴブリンに気付いたようだが反応はできていない。
そのまま、
「ら……あっ!」
ドゴッ!
アトラス君は棍棒を兎に叩きつける。
骨が軋むような音が鳴り、兎は地面に伏した。
手ごたえを感じたのだろう。
「やった!」
アトラス君は笑みを浮かべて振り返る。
ボクに褒めてほしかったのかもしれない。
しかし、その背中は完全に油断しきっていて、
「油断しちゃダメだよ!」
瀕死ながらも起き上がって来ていたホーンラビットに、ボクは石を命中させる。
アトラス君の背中に、肉薄していた兎の角の軌道がズレて虚空を貫いた。
「もう一度だ!」
ボクの言葉でアトラス君が動く。
棍棒を先程よりも強く兎に振り下ろした。
ドガンッ!
凄まじい音。
兎はピクピクと地面で痙攣する。
やがて動かなくなり今度こそ完全に息絶えた。
ホーンラビットの死亡を確認してボクは、
「ふう」
危ないところだった。
あと少し近ければアトラス君は貫かれていた。
ま、初戦だし及第点だろう。
終わりよければすべてよし!ってやつだ!
「ソ、ソリス」
「ん?」
「ありがとう……それと……ごめんなさい」
と、沈んだ顔のアトラス君が頭を軽く下げた。
「なんでそんなに落ち込んでるのさ」
「だ、だって……」
聞くと、アトラス君は胸の内を語り始めた。
どうやら彼は狩猟部門で狩りに参加したらしく。
魔物との戦闘をしたことのないボクを引っ張って、イイとこ見せようと考えていたようだ。
しかし、結果は真反対。
むしろボクに命を助けられてしまった。
ナニヤッテンダ。
「盾になるとか……は、恥ずかしいぃー」
「あぁ……」
だからあんなに意気込んでたのね……。
ボクがソリスを守る盾になる(キリッ)ってか。
「別に落ち込む必要は無いよ。
2回目の戦闘にしては上出来さ。そもそもアトラス君は前衛だ。注意深く戦場を見極めるのは、後衛であるボクの仕事だからね!」
「そ、そうなのかな」
「うん。これから慣れていけばいいんだよ」
そうしてボクは外の世界での初戦闘を終えた
「んじゃ、カンナギの所に戻ろうか。
今日は木の実じゃなくて肉が食べれるぞ!」
「やったぁ」
死体は痕跡を残さぬよう持ち帰る。
そういやエルフって肉とか食べられるのかな……?




