ワイヤレスイヤホン
「この度はすいませんでした。はい。もうご心配・ご迷惑をお掛けしないように致します・・・はい、すいません。はい、失礼致します。」
上司からの電話。せっかくの休日なのだから、仕事のことを持ち込まないでほしいというのが本音なのだが。まあ、とりあえず一見落着だ。
――そうそう。せっかくだからあれを使ってみよう。
あれとは、納会のビンゴで当たった商品――ワイヤレスイヤホンだ。
――へえー。コードが繋がっていないのに、これでイヤホンになるんだ。
説明書を読みながらペアリング・・・とかいうことをして、実際に使ってみると、これは便利そうなものだった。コードがないから、音楽を聞きながら家事ができるし。どうやら、イヤホンについているボタンの操作で再生や一時停止、早送りまでできるらしい。なんて便利なんだ。
――えっと・・・これが再生ボタンね。
カチッと押すと、音楽が・・・・・・流れなかった。
――あれ、おかしいなあ。
カチカチカチッと連続して押しても、反応がない。
――え、壊れた!?
それから何度押しても反応がない。慣れないものは使うなということなのだろうか。
「ピポパポパポン!ピポパポパポン!」
ちょうどその時、電話がかかってきた。上司からだ。
――えええ、またかよ・・・。
今さっき話したばかりだ。それもくだらない話で。
今回は出ずに放っておくことにした。
しかし・・・それからというもの、上司からの着信が連続してかかってきた。
――これは、何か、緊急事態なのか!?
もしそうだったらまずい。僕は意を決して着信に出た。
「もしもし。すいません、すぐに出れなくて。何かあったんですか?」
「はああ?それはこっちのセリフだよ!お前こそ何があったんだよ。こんなに連続して電話かけてきて。」
「え、電話ですか?掛けてないですよ。」
その瞬間、ブチッと電話が切れた。
――なんなんだよ。あの上司は。こっちから電話をかけるはずがないじゃないか。
一応着信履歴をチェックした。
まさかの・・・自分から連続して上司に電話を掛けている。
――はあ!?なんで、なんで?
リダイヤル機能の存在を。俺はこの時、知らなかった。
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