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ちっぽけで空っぽな物語
これは地球上の秘匿された小国で起きた
未知の物質によって作られた鏡についての物語
「ねぇ、黒猫姫って知ってる?黒髪のとても可愛い猫ちゃんみたいなお姫様が出てくるお話。」
黒い布と糸がヒラヒラと揺らめく。軽快な靴の動きに合わせて床が鳴く。
「まるでメランのことを言ってるみたいだな。また何かお父さんの本を読んだのか?」
白い布に包まれながら眼鏡を付けた僕の目には、まるで人形のように可愛くて小さい友達が映っていた。朝日に照らされたその顔は少しだけ赤くなっていた。
「褒められちゃった!そうよ、私はみんなと違って、もう字が読めちゃうんだから!でもあの話は好きになれないわ。お姫様が最後に魔女として処刑されてしまうなんて!」
メランは本の感想を楽しそうに語る。しかし僕は知っている。この国にいる限り僕らはハッピーエンドを迎えることができないということを。