ブラウン管テレビ
「なろうラジオ大賞2」応募作品です。
①作品タイトルに以下のワードを入れる。
ブラック企業 / 必殺技 / 忍者 / おにぎり / ドラゴン /
文学少女 / 名探偵 / ボロアパート / 大魔王 / 聖女 /
サラリーマン / 幕末 / ブラウン管 / 伝説 / 農民 /
おねぇ / 入道雲 / 暇つぶし / 偽物 / 牛乳 /
コントロール / 森の /
②オリジナル作品であること
③1000文字以下の作品であること
「なぁ、ブラウン管って知ってるか?」
男子高校生二人が、休み時間中に机を挟んで雑談をしている。
「テレビのことだろ」
「おっ、よく知ってたねぇ。もう液晶に変わって大分経つっていうのに。偉いねぇ」
「馬鹿にしてんのか。それくらいの知識は俺だって持ってんの」
「じゃあ、なんでブラウン管っていうか知ってるか?」
「知るか、そんなもん」
「まぁまぁ、当てずっぽうでいいから言ってみ? 君のその小さい脳の、え~っと、ぜ、前頭葉かなんかを働かせてみ」
「知らねぇよ、ブラウンさんが作ったんだろ」
「えっ!?」
「えっ、なんだよ? 当たったのか?」
「ぶ、ぶ~っ! はずれ! いや~惜しい! 実に惜しい!」
「じゃあ正解は?」
「せ、正解は……ぶっ、ブラウン……茶色の部品を使っているからでした!」
「本当かよ、怪しいな。どこらへんに惜しい要素があんだよ」
「もうそんなことどうでもいいわ!」
「お前が言いだしたんだろうが」
「僕が言いたいのはそんなことじゃないの。ブラウン管っていうと、みんなテレビのことを想像するでしょ?」
「まぁ、そうだな」
「私はそれに異議を申し立てるものなり」
「誰だお前」
「ブラウン管って聞いて、テレビのことを想像するのはおかしいんじゃないですか? って言ってるんです」
「なんで敬語なんだよ」
「だって考えてみ。ブラウン管はテレビの一部でしかないんだから。例えば、車のことをエンジンって言う奴いないでしょ? エンジン乗っていこーぜとか、言わないわけ」
「あぁ、そういうことね」
そういうと男子は、引き出しの中から教科書を取り出して、次の授業に備えだした。
「ちょっと待て。話はまだ終わってないぞ」
「なんだよもう」
「車のことをホイールって言う奴はいないわけ。ホイール乗っていこーぜとか言ったら、なんだこいつ、頭おかしいんじゃねぇの、と思われるわけ」
「わかったっつーの」
「タイヤ乗っていこーぜとか言ったら、なんだこのわんぱく小僧は、とか思われるわけ」
「しつけーなもう」
「チャリンコのことを、ケッタマシーンとか言わないわけ」
「待て、そりゃ言うだろうが」
「つまり、なにが言いたいかっていうと、僕のことを、眼鏡を掛けているからって眼鏡って呼ばないで欲しいってこと」
「……あぁ、そういうこと」
「天パだからって、僕のことを天パって呼ばないで欲しいってこと。眼鏡も天パも、それは僕の一部でしかないのだから」
逆向きに座った男子は、悲しげな表情をしながら背を向けた。
ブラウン管は、ブラウンさんが発明しました。