第八話 また明日
ーこの小説はすべてフィクションです!実際に存する人や団体、地名、宗教などとは全然関係ありません。
いつから寝たのか。そんなのは全然覚えない。そんなに不便だったなのに、よく寝たようだな。人間はやはり適応の動物なのか、と思うながらゆっくり目を覚めた。
目を覚めると、晴れる大空が私を迎えてくる。あの東の方から斜めに降り注ぐ日の光が目を刺してくる。片手をあげて、その光を塞ぎながら、白い布団の上で体を起こしていく。
足元を床に下げ、ちょっとぼうっとしている。そのままなん秒を動かず待っていた後、今日の始まりを告げるあくびを吐いていく。体を回し、彼女のベッドに体を向けてみると、綺麗に整えているあの白い布団だけが私を見つめている。
やっぱり皇族は勤勉なのかなー、と思って、ベッドから腰を上げる。
「おはよーございますー」
ちょっと瞑られている目に、もつれている髪のまま、開けられている扉の外へ足を踏み出す。霞んでいた目の前の景色がずんずん明るくなってくる。
そのまま居室の方へいく。なんとなく、狭かった居室が普段より広く見えてくる。なんかもっと綺麗になった気もする。そして、そのまま視線をダイニングの方へ向ける。
彼女は私に背を向いたまま、ダイニングのテーブルの前に座っている。
その姿に一歩近づくと、彼女の手元から輝く銀色のなにかが見えてくる。その輝きは私の瞳を刺し、自分勝手にあっちこっちに光をまき散らす。ピカピカ輝く光線を避けて、やっと彼女の姿へもう一歩近づく。
その重い足音に、彼女がぴょんと顔をそらしてくる。一瞬、彼女の長い金色の髪が軽い風を起こす。共に美しく舞い踊る彼女の髪型に私は目を打たれてしまう。
「おはよー!」
彼女の清い笑顔。その姿にはなぜか強い後光が明るく輝いている。現実じゃない見たいほど、その顔はその自体に明るすぎている。話だけで聞いてた神様が実際にいたらそんな姿だろうと思っていた。
続けて、彼女の手からなにかがずっと輝いている。もう一歩彼女に向かって踏み出すと、そのシルエットがだんだん鮮やかに見えてくる。鋭くて、すんなりとしているあの小さなシルエット。その姿は、まるでナイフのように見えていた。
明るい笑顔で微笑んでいる彼女は、それを手にしたまま、手をあげて私を向いて横に振っている。その姿はとても明るくすぎたので、むしろ怖すぎるように見えてくる。このまま死んじゃうのかー、と目をとじて思ってしまう。
「なんでうかうかしてるの?」
口をもぐもぐさせながら、かわいい天使の声で私に問いかけてくる彼女。その姿はまるで天使なのか、あるいは死魔なんだろうか。なん度も目を瞬いてみても、彼女は手からあのナイフようなものを放さないでいる。怯える瞳で全身を震わせている私を見ても、なにが問題なのか全然わかっていない顔をしている。
「どうかしたの?」、と平然な声でまた聞いてくる。
その輝く瞳も、「なんかあったの?」と図々しく聞いている。
「あっ、これ?」
彼女がそのナイフを握っていた右手にゆっくり視線を回す。続けて、彼女はなんでか面白うそうな顔に変わっていく。その背景は漸々暗くなっていく。悪魔の微笑みだ、あれは。翻弄する相手を見つけた悪魔の微笑み。その瞳がゆるゆるとこっちへ向いてくる。
「なにを怯えているのかい、お前!」
けらけらと笑い声が聞こえる。私はもう正気ではいられなくなっていく。その光が…その鋭い光が…! こっちを向いている。私は一生の終わりを迎える人の心情で、徐々に目を閉じていく。眼を破ってしまうほど、強く目を閉じる。怯える心臓の走り声の真っ前から、静かな足音が近づいてくる。
「いやっー!」
いきいきとした声が私の耳に入る。って、まだ生きていることなのか。体のどこにもナイフに刺されたような感覚は感じられていない。ただ穏やかな温もりだけが全身に感じてくる。
目をゆっくり開けてみると、彼女が両腕を広く広げて、私をきちんと抱きしめていた。視線を下げると、彼女が「キュン?」と言ってるようなかわいい顔をしている。そのまま、互いをずっと見据えている。ちょっと間を置いて、彼女が先に唇を動かせてくる。
「最後まで、油断しちゃダメだよ。」
なんか荘厳なその声。すぐに、彼女に抱かれた私の背中から鋭い鉄のようなものが擦れる音がかすかに聞こえてくる。一瞬、私は全身に鳥肌が立ち、体を動かずに慄いた。やがて、彼女が私を包んでいた両腕を離せていく。
「だって、あたしが君を傷つけるはずねーじゃん。」
また幸せそうな明るすぎる笑顔で戻ってくる。私は顔を逸らして、ほっとため息を吐き出す。今はなにか安心できるような笑顔なので、ちょっとだけ本音が混ざった冗談を投げ出した。
「でも、殺すはずはありますから。」
「まじバカか!」
彼女が明るく笑いを零す。その瞳はずっと、私を見守っていた。こんな世に、彼女と一緒に生まれらせてくれまして、ありがとうございます、と心の中で神様に言葉を届けた。
「今日、どこかにデートに行かない? 嫌なのかな?」
私に背を向いて、ダイニングへ戻りながら彼女が言い出す。私も徐々にその姿を追いかけていく。
「嫌がるわけないに決まってるんじゃないですか。」
なぜそんな当たり前のことを聞いてくる、と言っているようにそんなことを言った。デートか、なんかドキドキする。
「まぁー、あんまり君だっても、命までかけて拒否するわけはないんだな。」
いったい私をどこまで見下ろしたんですか、と言いたかったが、そうするとまた面倒くさい状況になりそうで、黙っておく。銀色のナイフをやっと腰にある小袋に差し込んでこっちを振り向ける。
「君、私のことにまだ負担感じてるようで、デートから徐々に始めばどうかと思ってさ。」
「ならば遠慮なく。」
私は一秒の悩みもなく、反射的にすぐ答える。彼女は意外にはやい答えに呆れた様子をしている。
「案外にこんなことには恥じないんだな。」
また、両目を大きく開けながら楽しそうな顔をしている。まったく、私をからかうのが一生のすべてのような人だな、と思いついてしまう。
「いつも朝飯はざっと食ってきたんだろう?」
ダイニングの中で忙しい様子で、彼女がそんなことを聞いてくる。たぶん、その続きの言葉が核心になるはずなので、言葉はなく、ただこっそり耳を傾いた。
「今日からは、あたしがちゃんと食べさせてあげるから。」
私が待っていた言葉は確かにその言葉だった。そう言いつつ、彼女は体を低めてなん度も引き出しを開けたり閉めたりを繰り返している。
「あたしは家出専門家だから、ご飯ならどんな悪条件でもできるんだぞ!」
その言葉は、まるで、ここが悪条件だと強調しているようだ。私はただ彼女の向こう側のテーブルに座って、そんな姿を見据えている。彼女はたびたび悪戯っぽい視線を私に届けた。
そのたびたびに全部私が応じてくれなければならなかった。丸く開けて私を見てくるその瞳を一度無視してみると、やがて彼女は動きを止めてツンケンとしたまま私を睨んでくる。明るく輝く包丁を手に握っているままで。見えなくても、なんとなく気づかれてしまう。そんな殺伐とした空気が、危なそうな雰囲気が、どこから見えてくる。
でも、すぐに瞳を合わせてくれると、彼女は明るく笑顔を作る。じっくり考えてみると、私も同じなんだ。
彼女を見る時しか笑えない。彼女がいる限り笑えるんだ。そのやわらかい微笑みを見ると、そんな想いしか浮かべない。幸せな想い、暖かい想いしか。
ー足りない私の作品を読んでくださいましてまことにありがとうございます!もっといい作品を書けるように頑張ります!
ー連載は基本的に毎週日曜日に、一章ずつ投稿する予定です!