第七話 初の夜
ーこの小説はすべてフィクションです!実際に存する人や団体、地名、宗教などとは全然関係ありません。
「あ、そういえば、ベッドは一つだけ?」
私に背を向いた彼女がいきなりそんなことを聞いてくる。「一人っきりの家だけど、もう一つあります。」、というつもりだったが、彼女のためらう声がすぐに私の考えを止めてくる。
「そうならば……一つだけでいいけど……。」
「な…なにをおっしゃっていらっしゃるんですか……。」
私は急に出した彼女の言葉にあたふた。正常的な思考が止まり、ゆらゆらとする。
「だって、しっかり聞いたんでしょ? ベッドが一つだけでもいいって。」
彼女は困っている私の顔を見てにやにやしている。彼女はちょっと恥ずかしがりつつも、こんな会話を楽しんでいるらしい顔をしている。
「笑ってる? それはわかりましたと言うこと?」
彼女は手を唇の上にあげて、薄い微笑みを浮かべている。そんな顔はしているが、とても大胆な態度だ。続けてくる言葉は、もっと直接的に私に近づいてくる。
「私たち二人、もう一緒に寝てももういいじゃん。」
「へ……。へぇっー?」
私は形式的でも、その言葉に驚かざるを得ない。なぜ彼女はそんな言葉を口にしても平気なのか。他人がなくても他人の視線のようなものを気にすることが慣れていた私としては、どうしてもそんなこと言えるわけない。言ったとしても、そんなに平気ではいられない。
なのに、彼女はもっと楽しんでいる顔を作り上げる。そうながら悪戯っぽい表情で口を開ける。
「私、嫌いのか? それじゃなければ、私たち公式的に夫婦でしょ? なんか問題ある?」
でも……、と小さな声を出したが、私はなにも言えなかった。なにも、間違えた言葉はない。なにも、やり返す言葉は全然思いつかなかった。心の一方にはこんな状況を喜んでいるのに、なんとなくこれだけでは許されない気がする。
「ですが、まだ結婚式も行わなかったし……」
「そんな暇はないよ。君もよくわかってるんでしょ?」
彼女は残っていた言い訳すら奪っていく。
「あたしが嫌じゃないなら、なにも問題ないんじゃん。」
私はなにも言えず、ただ適当な言葉でごまかそうとしていた。そんな私を見て、楽しそうな顔をしている彼女。
「まぁ、冗談で言ったつもりじゃないけど、冗談だったとしとく。」
私を直接的にからかっているその声。いつかは必ず同じベッドで寝ると言っているような顔をしている。
とにかく、私たちは同じ部屋で、だが、各々のベッドで寝ることで合意した。そうだとしても、なんか負担感が感じられて、よく眠れなかった。隣で眠っている彼女がずっと気にする。なんか他の人と一緒に眠るのは初めてだったので。まったく慣れない。
そう感じながら真っ夜の中で寝転がっていると、窓の彼方から星々がきらきら煌めく。布団が摩擦する音が静かな夜を動揺させている。丸く開いている私の目は、なんとなくあの大空を見つめつつ、ずっとぼやぼやとしている。
目の前に映る大空は、深い青色で彩っている。左の半分だけを明るくしている半月が、深い青色の大空に独りっきりで出ている。あの月の光が窓から漏れて入ってきた。
「ふぁー、全然眠れないな」、と心の中で叫びつつ、一瞬彼女が寝ているベットの方へ体を回した。すると、暗闇の中でなにかがネコの瞳のように輝く。その光は急に私の瞳をきりきりと刺してくる。
「なんだ?」
そのネコの声が私の耳へ届いてくる。目を戻してちゃんと見ると、煌めく星々に照らされた彼女の瞳だった。ずっと見つめていたように、体は完全にこっちを向いている。
「な…なんて… それより、なんで見つめてるんですか!」
慌てていたまま言葉を落としてしまう。それと共に、声も気まずく上がってしまう。そんな言葉を口にした後から、なぜか両側の頬は熱くなっていく。恥ずかしさのせいか、きっと赤くなっている。その中でも、彼女だけは平然としている。
「へぇー。頬、完全に赤くなってるんじゃん?」
真っ白くて一粒の汚れもない顔を持っている彼女が、にやにやと笑いつつ、そんなことを口にする。怖いほど明るい笑顔。その怖さを続ける暗い夜の静かさが膨らませた。震える瞳で彼女を見ると、彼女さえも震えて見える。
「ずっと見ていたんじゃないから安心しろ。私も眠れなくてさ。真っ先に体を回したんだから。」
やわらかい笑顔は暖かく私のすべてを溶かしてくる。それてもやっぱり夜の光に映る彼女の姿は怖い。夜は一人だけが慣れていた私には全然慣れないそうだ。
「そっちに、渡して行ってもいい?」
彼女が布団の中で体を縮めながら聞いてくる。光があまり少なくて、そのシルエットだけがかすかに見えるだけ。やっと平静を取り戻そうとした私の心がまた乱れてしまう。
「そんなことできるわけじゃないって決まってるんじゃないんですか!」
私はそのまま声を上げてしまう。彼女も一瞬、驚くほど。やがて彼女が唇を尖らせて布団の中に顔を隠していく。確かに拗ねてる。けれど、そんなことを許すわけにはまだいけないんだ。心が、この心臓が、許せないんだ。
「今日は、ぜひ静かに寝てください。後でちょっと慣れたら考えてみますから。」
布団の中に身を隠していた彼女が徐々に目だけを密かに出してくる。
「ぜひ、静かにって……。あたし、なんの騒ぎもしなかったのに?」
布団に埋められた口から少し濁った声が聞こえてくる。彼女は恨めしそうな眼差しで私を見すえてくる。
「今、私の心を乱れていますから。お願いします。」
静かに言いきれて、ベッドにちゃんと寝ていく。目を閉じると、甘い彼女の声が小さく聞こえてくる。
「わかった。お幸せな夢見て。」
でも、私は全然眠れない。私が見ているのは夢ではない。
じっと、夢のように暗い黒色だけで塗れている世界を見つめている。
ー足りない私の作品を読んでくださいましてまことにありがとうございます!もっといい作品を書けるように頑張ります!
ー連載は基本的に毎週日曜日に、一章ずつ投稿する予定です!