第五話 決意
ーこの小説はすべてフィクションです!実際に存する人や団体、地名、宗教などとは全然関係ありません。
いつも通り、今日も冷たい日差しが私を起こしてくれる。その後、聞き慣れた扉を叩く音が耳に届く。その音のせいで、やっと体を起こした。
「いらっしゃいましたか」
この台詞ももう慣れている。
だが、彼女はちょっと違っている。いつもの笑顔はなく、少し冷たい顔。視線も全然合わせていない。
「はやく準備してきて。今日は、私と一緒にいくところがあるよ」
彼女は変わらない表情で言ってくる。昨日、やっぱり大変だったのか。反対側のせいで落ち込んでしまったのか。だが、挫折した顔とは違う気がする。なんか決意を決めたような顔。そういえば、彼女の衣服もスタイルも、普段とは違う。
黒色の角張る制服が彼女をはっきり包んでいる。普段ならよく着ない暗い色の衣服。肩の上には金色の華麗な肩章が輝く。前には見えなかった、新しい服のようだ。彼女の金髪も後ろに束ねて上げている。
でも、変わらなかったことと言えば、相変わらず美しい。まるで、女神の様子。
「なにしてるの? 君も制服着て来なさい」
彼女は声まで文字通り、シック、その自体。
「は…はい!」と言って私はすぐ体を動かせる。
あっという間に、準備を終わらせた。私も驚くほどの速さで着替えを終えた。まぁ、私だって、特に準備することなんかないんだろうが。彼女からもらった制服。内はやわらかく私を抱いてくれる一方、外は格好良く整えている。そのまま、彼女の元へ戻る。彼女は顔を下げたまま、私の左手を引っ張っていく。扉を開けて、扉の外へ出て行く。この迷路の中を進め、まもなく迷路の中央にある皇城に至った。
完全に圧倒されるほど大きい大門が目の前に黙々と建っている。その門を、彼女に左手が強く開ける。すると、広い皇城の内の風景が私の目を引く。周りの壁は華麗な色のカーペットようなものが並びにかかっている。帝国内の諸国の旗を合わせたようだ。
目を回して前を向くと、皇帝を中心し、左右に金色の旗が二つかかってあった。帝国の権威を告げろうとしているように。それらを左右にして、皇帝は自分の身長よりも大きな椅子に座っている。あの椅子は赤いクッションを背につけてあり、その周りを金色の金属が囲んでいる様子だ。
私はどこを向いていればいいのかわからなくて、ちょっと下に向いている。けれど、彼女だけは堂々と皇帝を正面に目を合わせている。まぁ、とにかく父と娘の関係だから、特に怪しいところではないが。でも、先の緊張感はどんどん膨らんでいる。
華麗に輝いている皇城の中には、ただ静かな空気だけが流れている。だれも安く話を出せない。その寂寞をやっと壊したのは彼女の堅い声だった。
「決まりました」
「なにを?」
皇帝が冷たい声で問い返す。品位なんか全然感じられない。まぁ、公式的な場合ではないからだろうな。
「私が皇位を継ぐことを」
彼女がきっぱりと言い出す。皇帝は言葉を口にせず、彼女の続きの言葉を待つ。
「確かに決まりました。昨日確かに感じました。私がならねばならないと言うことを」
彼女が言葉を重ねて言い出す。顔を下げていたせいでちゃんと見えなかったが、皇帝は不満も、満足もない、ただなんの関心もなく、情けなさそうな顔をしているらしい。
「だったらもういいんだ。私がどうでもやってみるから。」
その言い方には、「その話なら、もう終わったじゃないか」と、面倒がりそうな声がちょっと混ざっている。
「そして……」
彼女がまだ終わらなかったと告げるように言い続ける。彼女の右手が、いきなり私の左手を取ってくる。私は顔を上げてきた。彼女は私の手をもうしっかり握りしめてくる。
「この人と……結婚することも!」
一瞬、この空間が大きく静まる。もう無能な皇帝はなにも言わない。なにも言えない。
ただ、「君の勝手にせよ」 と言うだけ。
とにかく、公式的な許可を得た彼女は、やっと笑顔に戻ってくる。そんな冷たい口ぶりだったにも構わず。
「じゃ、お父さんは認めたんだぞ?!」
と、もう一度問い直して、
「うんー。君が好きな人と結婚せよ。」と、
また確言をもらう。
その後に、彼女はぼんやりとしている私の方に向く。そのまま、私の頬を襲ってくる。やわらかい唇の感触が、私の右頬を引き込んでいく。一瞬、精神が乱れて、目の前はちらちらし、体すらもゆらゆらする。なんか変な薬を飲んだように。
やっと目を覚めると、彼女が私の両手を軽く握ったまま、明るく笑っている。
「それで確かめたんだよ! 後で言葉変えたらダメ! これで完全に決めたんだぞ!」
と、なん度もなん度もあの椅子に向いて叫んで、「わかった、わかったから。」と、また確言を取っていく。
そのまま、私はまた彼女に引かれ、皇城から外に出ていく。彼女はいつよりも明るい笑顔を浮かべている。私はまだちょっとぼうーっとしているまま。でも、なぜか顔から幸せそうな感情は隠せない。
結婚……。その重い言葉には、色々な意味が含めている。なによりも、彼女が公式的に、私を認めてくれた。私にとってはそのことが一番大切なことだった。長い時間、私を苦しめた不安感がちょっとだけ、溶けて消えていく気がする。
いつの間にか、あの太陽はパステル・ブルー色の大空に高く昇っていた。ただいま城を出ていた私たちを明るく照らしてくる。あんまり明るすぎて、目が開けないほど熱い。そのせいで、目を閉じてしまう。そうしても問題はなし。彼女が私の手を握ってくれているから。それ自体が、私の目になってくれている。見えない地図になってくれる。
彼女に引かれてどれほど歩いた後、やっと目を開けたのは、とある小道の隅。この瞬間、目の前に彼女の顔が近くついてくる。あまり近すぎる距離。私はまたその時の感情を蘇らせる。心臓がはやく走り始まって、その音は外にも大きく響いていく。
私の視野は彼女だけが満たしている。私は目を瞬くことを繰り返す。目を開けるたびに、彼女はもっと近づいてくる。私は迷い果て、目を完全に閉じってしまう。
細い唇からやわらかい感触が感じてくる。その感触が全身を震わせてくる。そのまま、二人はきゅっとくっついている。私は震えさえも、できなくなっていく。そのまま、少ない時間が流れた後、彼女の唇を離れる。同時に、私も目を開ける。二人は互いに目を合わせていく。
彼女の美しい顔は強く降り注いている太陽の光にも負けず、ずっとそのままで私の心を刺してくる。黒い制服のせいで、もっと致命的に見えてくる。
彼女はそこで止まらなく、また私に近づく。私の耳にその唇を向いてくる。そこで甘い声を私にささやいた。
「これで契約完了だよ。異議はないんでしょ?」
彼女は後ろに一歩退いた。彼女はいつもの通りに微笑んでいる。今はいつよりも気分が上がりすぎているようだ。
黒い制服の帝の姿が私の前に立っている。すごく綺麗に、シックだ。彼女にはだれもあえて挑められないカリスマがある。それにふさわしい決断力なども持っている。まったく、皇帝になれる人は、こんな人を呼ぶのだろう、と思ってしまう。
彼女と互いの手を握り、歩いてきた道を引き返す。とっても細くて美しい彼女の手。それでも、だれも勝てない強さで私の手を握っている。もう私の家が見えてくる。お日様はまだ明るく輝いている。彼女はもう一度私の頬に唇を合わせてくる。
「また明日ね。」
その一言を残した彼女は帰り道を進めていく。
私は、太陽に照らされるその黒色の後ろ姿を眺めながら、ただぼんやりと立っている。
ー足りない私の作品を読んでくださいましてまことにありがとうございます!もっといい作品を書けるように頑張ります!
ー連載は基本的に毎週日曜日に、一章ずつ投稿する予定です!