表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラブメイズ(LoveMaze)   作者: 西野雪絵
第五章 失敗 (Manquée)
31/49

第三十一話 封筒

ーこの小説はすべてフィクションです!実際に存する人や団体、地名、宗教などとは全然関係ありません。

 覚悟だけは決めたが、でもただそれだけだった。

どこへ向かったらいいのかまだ迷っている。実は、ここがどこなのかもよくわからないままだから。ただ、あの城の北から、ずっと詰め走ってきた。そんなことしか覚えない。



 私の記憶が正解ならば、ここは城の北のどこかだろう。いったいどこまで走ってきたのかはわからないけど、ずっと前だけ向いて走ってきたのは確かに覚えているから。



 そうなら、今からどこへ行けばいいのか。なんとなく、南へ走れば、またその迷路の城と会う可能性が高い。それはあまりよくないな。東には奴らの本拠地である、あの赤い国がある。敵の本拠地の方になんの準備もしなくて進むのも当然、無理なのだ。特に、今のような状況では。



 ここよりもう北に上がっていくのも意味なし。目的地の南の国とも正反対側だし、そこではなんでもできない。つまらない冬の国々だけがかわいらしく集まっているだけ。

そんなに迷い続けた果て、私は右側に目をそらす。選択肢(せんたくし)は西の方しかなかった。



 西ならば、黒い旗を使う新興国(しんこうこく)がある、と聞いたことがある。実は、あの国の国王も見た覚えがあるらしい。初目は、あの迷路の城に引っ越した日に、二目は、彼女に引っ張られてあの国との会議なんかに参席した覚えがある。二つとも、遠いから見ただけだが、あの王の容姿は特に悪くなさそうだった、とかすかに覚えている。



 元々は私たちの国とはあんまり仲が悪かった国だが、あの王の治りに入ってから、順々に仲良くなったらしい。少なくとも、彼女が私の前であの国について悪いことを言ったことはなかった。他の国については、たびたび陰口(かげぐち)(たた)いたこともよくあったけど。はぁー、なんとなく、また懐かしくなっちゃった。

 そこなら、行ってもいいんだろう、と思って、西に体を向かうことにした。



 体を起こそうとすると、左手から白い紙が弱い風にひらひらと揺れていく。私は右手を伸ばし、彼女の手紙を取り直した。もしかしたら、あの手紙を落としてしまうところだった。やっと、取り戻したあの手紙をゆっくり見流しながら



 彼女の手紙の後ろになにか違う感じの紙々が私の目に映る。形はつまらないあの条約書(じょうやくしょ)などと似ているらしい。だが、他の書類とは違って、それも彼女の筆跡で書いてあるらしい。

 そのため、私はこれまでは読んでみようとしていた。



 皇位継承(こういけいしょう)認定書(にんていしょ)、って書いてある。ちょっと、子供の悪戯(いたずら)っぽい気がするけど、確かに彼女の印章(いんしょう)もおされている。その一つ一つの曲線も、すべてその穏やかが感じてくる。なに一つも乱れはなく、まるで、悠々(ゆうゆう)と流れていく一筋の雨足のように。そんな美しい曲線が紙の上を踊っている。



 それがなにを意味するのか、私はよくわからなかったが、なんとなくわかった。今は、ただの意味(ちから)のない紙切れにすぎないが、それ以上に、特別な意味(こころ)がある。少なくとも私にはそうだ。



 そこに皇位継承者(こういけいしょうしゃ)として書いてある名前は、私のものだった。彼女に、それほど認められたのだ。



 私は……ただのバカ者にすぎないのに……



 彼女は、私を信じてくれたのだ。私を、本当に愛してくれたのだ。こんなに不器用な私を……


「もしかしたらの話だけど、私が皇帝(こうてい)になれなくなっちゃったら、君がなりなさい。」


 一瞬、あの夜の言葉が思い出した。そこまで、考えていたのか。とは言え、もしかして、これも罪なのか。私なんかにはどうしても重すぎる名、「皇帝(こうてい)」。この重さを背負わなきゃならないのか。それすらも、私の務めなのか。



 いや、これは最後の最後の手段だ。彼女が私に頼んだのは、ただのそんなもんじゃない。ただ、それも一つの手段にすぎない。目標を達成するための、いろいろな手段の中でただ一つ。



 だが、とにかく、こんな状況でそんなものは全然使えないものだ。ただこれだけで皇位(こうい)を認められるわけがない。皇位(こうい)を取る者は、力があるものになるのに違いない。



 でも、それよりも、私はそんなことを望んだこともなかった。ただ、彼女が皇位(こうい)(のぼ)ると、ただ、二人きりの時間を送りたかっただけだった。今さら、私なんかが皇位(こうい)(のぼ)ったとしても、意味ないことだ。そして、もしかしてこの紙切れが効力があるとしても、私は、これを使う資格なんてない。



 私は、ただ壊してやるだけ。



 私たち二人を壊した奴らを。

ー足りない私の作品を読んでくださいましてまことにありがとうございます!もっといい作品を書けるように頑張ります!

ー連載は基本的に毎週日曜日に、一章ずつ投稿する予定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ