第三話 彼女
ーこの小説はすべてフィクションです!実際に存する人や団体、地名、宗教などとは全然関係ありません。
当たり前に、彼女の皇位継承などはできないだった。
私はなぜそんなことが当たり前になったのか全然分からないけど。とにかく、「当たり前だった。」と彼女が言ってくれたから。たびたび、彼女が明るい表情でそんな真剣な物語を語ってくる。まるで他人事のように、微笑みながら彼女の痛みを語ってくる。そんなことを聞くと、あんまり神聖な皇室の血が走っている彼女も、色々無視されたようだ。その理由を私はわからない。でも、彼女と初めて出会った時、彼女が家出をしたのも、たびたび私に家に訪ねてくるのも、またそんなものが原因だと思えた。
とにかく、彼女は原則的には皇位を継ぐなんてできないはずだった。
それなのに、彼女の父親、つまり現存の皇帝、カール6世には男の子がまったくできなかった。以前にあった息子たちもすべて死んだ。その上、唯一の娘であった彼女に皇位を継がせることに決まった、と彼女が言ってくる。
でも、女が皇位を継ぐことは法で禁止されてあったため、その法をカール6世が他の国や国内の貴族らと交渉を続き、彼女が皇位を継ぐことができるように法を変えろうとしている。今日が、その表決をための会議があると聞いた。それも、まだ反対の意思を表している国々がまだ少なくなくあったため、苦も無く済ませるのかはまだわからない、と言ってくる。
「そんな馬鹿な…」
私ができるだけ静かに声を出した。なのに、だれもいないこの空間には大きく響いていく。彼女はまだ微笑んでいた。こんな話を交わしながら、いったいなにがそんなに幸せなんだろうか。
今、こんな物語を彼女から聞きつつ歩いているここは、城の中にある彼女の別荘。その真っ白い廊下だ。この城で二番目で大きい建物だと聞いたことがある。その名にふさわしい広さだ。彼女もこの別荘の雰囲気にふさわしい綺麗な制服を着ている。諸国を率いる皇帝という名にふさわしい姿だ。そのあほうのような微笑みだけ抜ければ。皇帝になるにはあまりやわらかすぎる。
今日は、彼女の皇位継承権を他の国々から認められるために、帝国会議が行われると聞いた。彼女を包んでいる真っ白い制服も、公式席上に立つために着たものだと思われる。そんな大きなイベントを目の前にしているのに、彼女は相変わらず落ち着いていた。逆にのんびりと笑っているほどだ。プローというのはそんなものなのか。
彼女はこの二人っきりの雰囲気を全身で感じながら、ひそかに目を閉じていく。本当にかわいすぎる。目を閉じたままでも、なぜか幸せそうな顔を私に向いている。愛しい彼女のその姿のせいで、私はうっかり彼女の頭をやわらかく撫でてしまう。彼女はその金色の髪から異変を感じて、目を覚めてくる。彼女と目が合うと、彼女はすでに「あえてなにしてるの?!」って叫んでいるような表情を作ってきた。
「触るな! 機嫌悪い!」
彼女の頭の上に触れていた私の右手が、彼女の左手に強く打たれて、つい均衡を失ってそのまま白い廊下に倒れてしまう。私はちょっと時間がすぎた後に、いよいよ状況を認識する。顔を上げると、彼女が慌てた表情と恨めしい表情が交わる顔をしている。
「ご、ごめん…」
彼女が弱い声で謝る。視線はこっちを避けている。
「けどね、皇室の者を自分勝手に触ったり触れたりしやがって、それはいけないことでしょ?」
なんとなく、彼女がまた声を上げて、怒ってくる。反駁の余地がない。そのように私を困らせる時の彼女は、いつも楽しそうだった。つまり、悪意はないと、思いたい。まぁ、私にとってはどっちでも構わない。大事なのは、それではないから。
「わかってるんでしょう? 私がなにを望んでいたのか。」
「いいえ、全然知りませんですけど。」
私はちょっと尖っている口振りで正直に言った。もしか、私はわかっていたのかも知れないが、確信できなかった。
「そんなバカヤロー! なんぜそんなことも……。」
急に上げられた彼女の声は、ますます低くなっていく。そのまま落ち込んで、顔を下げていく。
「だって、ただちょっとキスがほしかったのに…」
聴けられないほどの小さな声で彼女は呟く。その瞬間、「もしか」が「やはり」に変わる。私は全部わかっていた。だけど、それを私一人で勝手に決めつけてるのではないか、ずっと疑っている。それを確かめられない限りは、私はなにもできない。なぜか、もう勇気が出せない。こんな不器用な私を見ると。
一瞬、彼女はなにかが思いついたように、急に顔を上げてくる。
「なぜそんなことをあたしの口から言わなきゃならんだよ?! 機嫌悪い! 」
そんなにもう一度怒り出して、また私に背を向く。
「情けないやつ……。」
彼女の明るい金色の後ろ姿から、彼女の独り言が聞こえてくる。私は、その姿に引かれて、足を運ぶ。足の速さをだんだん上がっていく。そのまま、彼女の後ろ姿に飛び込んで、背中からキュッと抱きしめた。彼女は一瞬、小さい笑い声を出したが、すぐに元の状態に戻っていく。
「そんなことにこのあたしが負けるかな!」と言っているらしい。でも、私はその手を彼女から離せなかった。
「それでもいいのかなー。そんなに卑しい私がご神聖な玉体を触っても。」
ちょっと緩んだ声で話をかけてみる。だけど、心の底からはすごく緊張している。これが正しいのかないのか、相変わらず疑っている。
「わかってるならさっさとやめなさい」
ここは全然向かずに、無味で低い声で命令してくる。でも、まだまだだ。
「抱きしめるほどもダメなのに、どういう精神でそんなことができるのでしょうか」
「もういや、話しかけないで」
逆に、彼女の声は心の海の底まで沈んでいく。でも、私は止まれない。どうしても、この雰囲気を、生き返せなきゃ……
「私はいったいどうすればいいかなー。皇帝陛下になるお姫様に、嫌われちゃったなー」
ただそんな口喧嘩だけでも、心が震えてくる。理由はわからない。その震えが、彼女にも伝えられたかな。私も気にしない間に、彼女にもっと持たせていく。
「だって、わかってるんでしょう? 君の罪」
急に、硬くて真面目な声で変わってくる。
「なんですか」
「私の心臓を走らせた罪……」
彼女が急に顔をこっちへ逸らして笑ってくる。私の緊張感すらも、彼女は楽しんでいたのかも知れない。私だけが、ずっと勝手に考え過ぎていたのかも知れない。そんな私とは違って、彼女はずいぶん平気だった。そんな手足が縮こまる言葉を言った後にも、なんの恥ずかしさも感じていない。
「……」
そんな彼女の台詞を聞くと、もう言葉が続けない。顔も上げられない。この世界に存在することまで、できなくなっていく。赤く沸き上がった頬を隠し、彼女から顔をそらして座り込んでしまう。
いよいよ元々の普段に状態に戻れた二人は、軽く手を繋ぎ、この空間を二人っきりで歩いている。その中、だれも先に言葉を出ず、ただ足だけをいそいそ運んでいる。
「さっきの言葉、あんまり恥ずかしすぎたかな?」
「そんなの当たり前でしょーー!」
図々しい彼女の態度に、うっかり声があがってしまう。でも、私の右側で手をつないでいる彼女はずっと微笑んでいる。その瞳には若干の心配が宿っているらしいだ。
「そっか」
ちょっと寂しそうな顔でずっと前を向いている。白い別荘の扉があの彼方から見えてくる。その扉に十分に近づいたころ、彼女が体を芸術的に回して私の前に立つ。そのまま目を合わせてくる。
「あなたが私のそばにいて嬉しい」
「私、あんまり政略結婚なんか気に入らなくてさ。君のような運命の人と会えて嬉しいだと」
急に真剣な声を出していた。そんな声を聞こえると、私もそれに合わせて真剣な声を出すことになる。
「けど、私にそんな資格がある……?」
一瞬、そんな嘆きを、独り言のように口に出してしまう。瞬間、白い廊下の中に重苦しい静寂が流れた。
「ある。そんな資格」
影に隠されている姿の彼女が、確信に満ちた口振りで言ってくる。
ー君は、私が認めたから。ー
ー足りない私の作品を読んでくださいましてまことにありがとうございます!もっといい作品を書けるように頑張ります!
ー連載は基本的に毎週日曜日に、一章ずつ投稿する予定です!