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ラブメイズ(LoveMaze)   作者: 西野雪絵
第一章 迷路(Labyrinthe)
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第一話 冷たい都市

ーこの小説はすべてフィクションです!実際に存する人や団体、地名、宗教などとは全然関係ありません。

 今日も冷たい太陽の光に目を覚める。いつもの通りに冷たい灰色の壁が隣を囲んでいる。


「この都市は冷たすぎる。」


 いつもの通りそんな虚しい一言を虚空に投げ、体を急に起こす。ちょっと目を丸く開けて、なにも動かず、そのままぼんやりとしていた。そうすれば、いつか急に気がつく瞬間がくる。

 しかし、今日はなんか違う感じだ。どうしても夢から覚められない。なんか変な夢を見ったようだ。その夢の内容はただ一つも覚えられないのに。



 いい夢だったのか。たぶん、悪夢の方だろう。こんなに夢から逃げられない私をみれば。その頬の上に流れる冷たい水を感じれば。

その時、静かに扉を叩く音が私を覚ましてくる。



 私が扉を開くと、さながら一幅(いっぷく)の絵のようなパステル・カラーの平原が目の前に広がっている。あの前に、輝く金色の髪を持っている彼女が私に向いて立っている。その明らかな笑顔が一番はやく私の目に入ってくる。


「こんにちは! 今まで寝てたんでしょ?」


 彼女が私に声をかけた。やわらかい彼女の声が私の耳を溶ける。まだ朦朧(もうろう)精神(せいしん)状態(じょうたい)の私は、なにも(こた)えられなかった。答えを望んで聞いたこともなさそうだったから、強いて答えはしないように。でも、挨拶(あいさつ)はしなければならない雰囲気(ふんいき)になってしまうようので、


「いらっしゃいましたか。」


 と、まだ眠そうな声を出す。けれど、私の目だけは、いつの間にか完全に開けられている。彼女の美しい姿を、ぼんやりと見据(みす)えている。目を離れない姿。真っ白い雲のようにふわふわそうな肌色に私の瞳が引っ張られている。


「はい、いらっしゃいました! 文句でもある?」


 片手で扉を支えていた彼女は、そんな私を見ながらぷっと笑ってくる。彼女が浮かばれた笑顔に、私の心臓(しんぞう)が暖まっていく。いつものような明るい笑顔。いつものようにからかうような声。はじめてみる景色(けしき)もないのに、今や見慣(みな)れたと思ったのに、まだその姿をみると、なぜかこんなに心が踊り狂う。ジャメ(Jamais)ビュ(Vu)と言われる感じだ。



「なんだよ、そんな口振りは。あたしの権威(けんい)がそんなに落ちていたとは……!」


 彼女も軽い口振りで大人たちの言葉を真似している。悪戯っぽいその声には、愛おしさが宿っている。

間もなく、彼女はうちに足を踏み出した。私は後ろから彼女が完全に入るのを待って、扉を閉じてくる。そのまま彼女の後ろについていく。


「なにか起こりましたか。」


 なんとなく、私に背中を見せている彼女に向いて聞いてみる。

 考えてみると、いつもの通りだったら、今日のような平日には朝から私に(たず)ねることはよくなかった。少なくとも昼間になった後で訪ねてくるのが普通だった。いきなり、こんな早朝から私に訪ねるとは、なんか怪しい感じがする。


「あたしがそんなに早朝からきて嫌だ?」


 彼女は直接的な答えは避けて、そんな言葉で私を冷かしてくる。私は口は開けず、強く顔を横に振ったが、彼女は私を見ていない。ずっと私に背を向いているまま、ダイニングにある小さなテーブルに近づいていく。彼女は水差しを見つけて、水をコップに注ぐながらまた口を開ける。



「特に、なんでもない。」


 彼女の低い声は水を注ぐ音と一緒に止まる。彼女は徐々に私に向いて目をそらしてくる。一瞬、私の心が落ちてしまう。慌てた心を強くつかんで、私は平然とした声で会話を続けようとする。


「へぇー? そうならば、なんのためにここまで、こんな早朝に。」


「君、ほんとに嫌そうだな? あたしがくるのが。」


 またそんなからかうような明るい声。その声が、私が言葉を間違えたことを告げてくる。私はただ下を向いてしまうだけ。


「なんでもないって言ったんでしょ。ただ家出だよ。なんか気持ち悪くて。」


 ちょっとムカついてるような彼女の声。その対象(たいしょう)は私なのか。だけど、その顔はずっと笑顔を失わなかった。でも、私はなぜか罪を犯した人になって顔を落としてしまう。そんな私を見たのか、彼女は私を向いて優しい声を出してくる。


「君がそんな顔している必要ないよ。」


 私が顔をゆっくり上げると、彼女が私に向いて微笑んでいる。左側の窓から暖かい日差しが彼女の横顔を照らしている。やっぱり彼女は血から違うんだろうか、と思ってしまうほど美しい。現実ではあり得ない美しさ。



「実はなんか気持ち悪い夢を見たようでさ……。」


 彼女がちょっと笑顔を下ろし、顔をそらしてあの窓の彼方を見つめながら言い始める。彼女も私と同じ夢を見ったのかな。一体なんの夢か。全然覚えていない。


「まぁ…とにかく、今日はなにもしたくないし、ただ今日はずる休みしたくて。」


 彼女はそのように言い終えて、もう一度水を飲み込む。コップを空けるあと、彼女は居室へ向かって、ふわふわしてるソファーに腰をかける。彼女は家出をした人とは思えないほど、全然平気だ。逆に家に戻った人のように見える。彼女はいつも、このように微笑んでいた。だが、その微笑みにはなんか隠しているような気がする。



なんか起こったに違いない。



ーあるいは、なんか起こるに違いない。ー

ー足りない私の作品を読んでくださいましてまことにありがとうございます!もっといい作品を書けるように頑張ります!

ー連載は基本的に毎週日曜日に、一章ずつ投稿する予定です!

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