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転生スキルは「お人形遊び」と「粘土遊び」なんですが、これでどうしろと?  作者: 柴野ましろ
第二部 ハーレム冒険者篇

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第88話 オザックの迷宮

オザックの迷宮が冒険者らに解放される初日、夜明けと共に迷宮前に向かった俺たちが目にしたのは、先着十組という制限を聞いて、既に夜明け前から並んでいる冒険者たちの姿だった。

 しまった、出遅れた・・・

 そういえば、迷宮は狭いから一日十組とか張り出しがあったよな。


「とりあえず順番に並んでくれ。早期にリタイヤするパーティがあれば、繰り上げもあるからな」

 王都の兵装をした男が、詰め所の前から呼びかけてきた。


 俺は一応、その男のところに行って、ギルドで聞いた話を伝えた。

「あの、俺たち、一応この迷宮の発見者でさ、ギルドからは優先的に参加権を与えるって言われてるんだけど・・・」


 まわりがざわついてるぞ。

「なんだと?」

「じゃあ、あの若造がシロー卿って奴か?」

 なんだよ、“あの”って。


 兵も意表をつかれたようで、「ちょっとお待ちを」と言って詰め所に駆けていった。すると、上官なのか一応、騎士LV12の男が何やら書類を持って出てきて、ギルドカードを見せろという。

「・・・確かにシロー卿ですな。では、参加権を与えますが、既に夜中から並んでいたものたちもおるので、順番はきょうの最終組、10番目でご了承いただきたい。また明日からは夜明けに間に合うように来ていただきたいですな」


 なんとかセーフだ。一人銀貨一枚の登録料を払ってから列に入る。並んでた連中のうち、ギリギリ十番目だったグループが文句をつけていたが、冒険者の間では迷宮の発見者の特権っていうのはそれなりに知られているらしく、まわりの者たちがなだめてくれた。


 でも、迷宮討伐ってこんなに人気があるものなのか?そう首をかしげてたら、聞き覚えのある声がかけられた。

「来ると思ってたけど、遅かったわね」

 模擬戦を戦った召喚士のイリアーヌだった。

 一番近くに新居を借りてたにも関わらず出遅れちまったのは、お楽しみだったから、だなんて言えないよね。


「あれ、イリアーヌさんたちも来たんだ?」

「これだけ近場に迷宮が見つかるのはさすがに珍しいからね、一度はのぞいてみようと思うわ」


 王都周辺は冒険者の数も多いし、強力な迷宮には国軍も投入されるから、近くで迷宮討伐を経験できる機会は少ないらしい。

 魔石を相場より高く買い取ってくれると知らされたこともあって、既にきょうの仕事が入ってしまっているのでなければ、挑戦してみようと思う者は多いそうだ。


「ただ、面子を見ると迷宮は初めてっぽい連中が多いから、ちょっと荒れるかもね。キミたちは大丈夫だと思うけど。それにしても、またカワイイ娘を増やしたのね、おねーさん妬けちゃうわ」

 カーミラの耳がぴくっと動いた。否定はしないけど、ハーレム女王のイリアーヌさんには言われたくないです・・・


 ちょうど夜明けになって防壁が開門されるようだ。

 先頭パーティーから、こっちの世界で「半小刻」と呼ばれる大体6分ぐらいか?ずつ間を置いて、入ることになってるらしい。


 イリアーヌのパーティーは前から4番目だそうで、作戦の最終確認に戻っていった。

 遠目に例のイケメンぞろいの奴隷男子5人衆が見える。

<戦士  LV18>

<僧侶  LV16>

<冒険者 LV17>

<スカウトLV16>

<戦士  LV16>


 これに加えてイリアーヌが魔法使い呪文の使える召喚士LV19だから、バランスもいいよな。今のところ、うちのパーティーじゃとても相手にならないだろう。

 俺もようやくLV16に上がって追いつけたところだったのに、またLV1からやり直しだ。


 一方、兵が開いた門から勇んで入っていく最初のパーティーはイリアーヌのハーレム軍団よりかなり落ちるな。

<戦士 LV15>

<戦士 LV 7>

<戦士 LV 5>

<冒険者LV 9>

<僧侶 LV 6>


 レベル2桁がリーダー格の戦士だけだし、5人編成で攻撃魔法が使える者もいない。どんなレベルの迷宮かわからないのに大丈夫か?


 とはいえ、考えてみたらカレーナたちと迷宮に挑んだ時のレベルより上だし、今の俺たちなんてレベル1桁ばかりの3人パーティーなんだから、人のことを言える立場じゃないか。

 本来はこの迷宮チャレンジは「代表者のレベルが10以上」って条件だったはずだから、事前にギルドで登録しておかなかったら、俺がレベル1に戻ったことで断られても仕方なかったところだ。


 俺たちがスタートするまでちょうど1時間あるから、ぼーっと立ってても仕方がない。各パーティーは登録料を払って番号札をもらうと、仲間と軽く稽古や準備運動をしたり、昨日作られたばかりの店をのぞいたりしている。


 店と言ったってカウンターひとつだけなんだが、魔石の買い取りの他に、薬と松明、携行食と飲み水を売っているようだ。村が運営しているようで、どう見ても戦えそうには見えない、老人が店番だ。

 売ってる薬は、「HP回復薬」が小金貨5枚、「毒・麻痺に」と書かれた状態治療薬は10枚もする。薬ひとつが数十万円ってすごく高いと思うが、今の俺たちは状態治療の出来る者がいないから、毒を喰らったりしたら、即これを買いに来ないと行けない。ほぼ全財産だな・・・


 そう考えると、今の俺たちが迷宮に挑むのはかなり無謀な気もしてきた。とにかく無理せず慎重にいかないと。

 そして、「MP回復薬」ってのは売ってないんだな?と思い訊いてみると、

「そんな貴重な薬は王都の高級店にいかなきゃ手に入らんぞ」

と、じいさんにあきれられた。

 ベスが作ったMP回復丸は本当にすごい薬なんだな。大事にしよう。


 ノルテとカーミラが落ち着かないな、と思ったら店で売ってる肉まんじゅうの匂いにひかれてるらしい。朝ご飯食べてきたばっかりだろ?

 こっちは一個銅貨3枚だから、それでも普通の値段よりずっと高いけど、買ってやるか。

「まだ食べちゃダメだぞ、後でな」

とクギを刺して、アイテムボックスに入れておく。ワンコにお預けしてる気分だ。

 夜明け前から順番取りに並んでた連中は小腹が空いてるらしく、肉まんはすごい売れ行きだ。オザック村に迷宮特需がありそうだね。


 詰め所と売店がある場所の迷宮側のところに、魔物の漏れ出しを防ぐための防壁が突貫工事で築かれている。

 4メートルぐらいの高さまで隙間なく木の板を立てて、さらにその外側に土を盛ったものだ。オークとかコボルドぐらいならなんとか食い止められそうだが、飛行できる毒コウモリとかはどうするんだろう?それに、オニウサギみたいに穴掘りが得意な奴は、下を掘って出られなくもなさそうだ。

 ひょっとすると、昨日俺たちが倒したオニウサギもそれで出てきてたのかもしれない。そう思うとかなりいいかげんな仕事だな。


「10番のパーティー、そろそろだぞ!」

 ようやく声がかかった。

 俺たちはパーティー編成して、とりあえずリナは人形サイズのスカウトにして、門を通った。


 目の前に先日見つけた迷宮の入口がある。穴の上に、何か紋章が刻まれているのは、この間の魔法使いが何らかの監視のためにつけたものか、あるいはいざというときに結界を張れたりするんだろうか?


 考えてみたら、今回挑むパーティーの中で、内部に既に入ったことがあるのは俺たちだけだな。入口をくぐってすぐ、リナを等身大にする。

 先頭はカーミラ、その左右にノルテとリナ、LV1に戻った俺は後衛にさせてもらう。


 先日入ったことがあるから、地図スキルで一階層の途中までは表示され、そこに赤と白の光点がいくつも示される。赤は魔物、白は他のパーティーだな。

見える範囲に白い点の塊は4組、後の5組は既に俺たちが入ったところより先まで行ってるってことか。

こうした情報がパーティー連携で他のメンバーにも共有されるのがいい点だ。ジョブチェンジしても獲得したスキルは失われないのも確認できた。


 カーミラが鼻をヒクヒクさせてる。

「ちょっと先に魔物いる」

 地図スキルでは見えてないのがいるらしいが・・・しばらく進んで入口の光が届かず、ワームの粘液による壁の光はまだ発していない、そんな中途半端に昏い場所で、さらにカーミラが警戒している。

 持ってきた松明をつけて、壁や天井をよく見ると壁面の下の方に小さな横穴があいていた。薄暗くてそうと知らないと見つけられない感じだ。


 俺やリナの察知スキル以上に、カーミラの「嗅覚」の方が見えてない魔物を見つけるには強力なようだ。ここへ来て、ようやく俺たちの察知でも何かいるのがわかった。穴の大きさ的にはオニウサギかな。

 リナを魔法使いに変えて、中に火球を放り込ませる。と、小さな影が幾つも飛び出してきた。


「カーミラは逃げる奴をやってくれ」

 そう声をかけて、近くにいるのは俺たちが剣やハンマーで狙う。俺はやっぱりかなり動きも力も落ちてるようだ。それでも、僧侶モードに変え剣を持ったリナとノルテが2匹ずつ、カーミラが3匹を倒して、ここの穴にいたのは掃討したようだ。

 リナに全部魔石に変えさせて先に進んだ。


 ワームが掘った迷宮特有の壁に変わる前の暗い部分には、さらに3カ所、オニウサギの巣穴が見つかった。どうも先発のパーティーは、大物狙いで先を急いでいるんだろう。

 俺たちは最終組と言うこともあって、後ろを気にせずじっくり残っている低レベルの魔物を狩った。落ち穂拾いで合計18匹か、それなりに経験値を稼げたはずだ。

 特に横穴のひとつはすごく奥行きが深そうで、火球を放り込んでも反応がなかった。匂いを嗅いでいたカーミラは、どこか地上につながっているかもしれない、と言う。風が通り抜けてるそうだ。

 一応、粘土で迷宮内につながる部分は塞いだが、はっきりするまでは村のパトロールも時々した方がよさそうだ。


 そうして、俺たちが壁が発光する本当の迷宮部分にさしかかったところで、戻ってくる連中がいた。

 俺たちの2,3組前で入った連中だと思う。カーミラが血の臭いがいっぱいする、という。


<戦士LV10><戦士LV5><冒険者LV6><魔法使いLV5>

 姿を現したのはまだ若い、といっても俺たちぐらいだが、4人組だ。

 戦士LV10以外の3人がかなり大きな怪我をしているようで、魔法使いは杖を武器でなく歩く支えとして使い、戦士LV10が冒険者に肩を貸して歩いている。


「大丈夫か?」

「うるせー、ちょっと油断しただけだ!」

 リナに治療させる必要があるかと思って声をかけたのに、態度悪いな。しゃべれるぐらいの元気はあるようだから、放っておいても大丈夫か。


 年齢的にもレベル的にも、ギリギリ登録可能になった連中が背伸びして迷宮に挑んだ、ってところかもしれない。4人だってのが、犠牲者を出した結果でなければいいんだが。


 そいつらとすれ違ってまもなく、もう1グループ戻ってくるのに出くわした。

 けさ1番に入ったパーティーだ。戦士・戦士・戦士・冒険者・僧侶の5人組だったはずだ。そのうち3人が固まって歩いてくるが、真ん中のLV5の戦士の片足が無い!


「どうしたんだ?」

「・・・魔狼に食いちぎられた、止血はしたんだが」

 こいつらのパーティーには僧侶がいるから軽傷なら治せるが、部位欠損までいくとおそらく「大いなる癒やし」でもないと、あるいはそれでも治すのは無理なんだろう。


「俺たちも、僧侶のレベル的に力になれそうにないな・・・」

 そう伝えると、意外そうな顔をした。

「いや、それは気にするな、クエストでの負傷は自己責任だからな。だがありがとうよ、お前らも気をつけな」

 リーダーのLV15戦士がそう言って、仲間を率いて引き上げていった。


 厳しい世界だな。先頭でなくてよかったかもしれない。


 その先には横穴がいくつかあったが、既にほとんどは先行したパーティーが討伐済みだった。

 一本だけ魔猪が残っている穴をカーミラが見つけて、3頭を掃討した。俺たちは中に入らなくても、カーミラの嗅覚で魔物がいるかどうかわかるし、種類もある程度わかる、これは大きなアドバンテージだ。


 そして、一階層の一番奥までたどり着くと、先行したパーティーの連中が集まっていた。その先には迷宮の最奥に特有の、白くぼんやり光るもやが見える。結界があるんだ。

 その状況を初めて見るノルテとカーミラに説明してやる。


 現時点で俺たちは結界を破れるようなレベルの魔法使いも僧侶もいないから、他のパーティーが「階層の主」を倒してくれない限り、この先には進めない。

 初日だし、きょうはここまでかな、と思いながら近づいていくと、ちょうど白いもやの中から、忽然と6人組が出現した。結界を抜けて戻ってきたのかな。


 重傷者がいるらしい。

 結界を抜けてすぐ、ばったりと2,3人が倒れ込んだ。

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