第74話 逆ハーレムの女
王都のギルドで認められるための二戦目は、イケメン男子をはべらせた美人召喚士と戦うことになった。
(あんたの願望と同じじゃないの?なに腹立ててんのよ)
うっ、そうなのか?
イケメン男子をそろえたパーティーを率いる、女召喚士イリアーヌ。
リナが言うとおり、男女逆だがハーレムパーティーだよな、これ・・・男女逆だったら確かにうらやましい。けど、人から見ると結構むかつくな、これ。
よかろう、参考に出来るものはしっかり盗むまでだ。メンバーのバランスとかな、観察しとこう。
(おバカ、今はそこじゃないでしょ?集中しなさい)
そうだ、個人戦だったな。つっこみ感謝だ、リナ先生。
「戦いはあくまで自分自身の力で、ただし、召喚や使い魔などは本人の力の一部とみなす」
アトネスクの念押しは、おそらくさっきイケメンのスカウトが、イリアーヌに俺のスキルとかの情報を伝えてたことを踏まえてるんだろう。
「では、準備はいいな。 はじめ!」
第二戦は、アトネスクの合図があった途端に、先攻された。
ほとんど無詠唱で、小さな火球が飛んでくる。やっぱり魔法使いの力も持ってるってことだよな。面倒な。
俺は横っ飛びで身をかわした。下が軟らかいおかげでそんなに痛くはないが、後で洗濯が必要だ。
その隙にイリア-ヌは長めの詠唱を始めた。これは聞き覚えが無い、召喚か?
イリア-ヌの前に、小さな影が1つ、2つ、3つ現れ次々実体化していく。数の制限はないんだろうか?
現れたのは魔狼だ。LV3だからそう高くはないが、動きが速いんだよな、こいつら。それが複数か。
連携のとれた動きで襲いかかってくる。
俺は肩までの高さの粘土壁を出して、それを遮る。その壁の下にしゃがんだ姿勢の魔法使いリナを等身大で出す。
召喚を終えたイリア-ヌが、今度は魔力を練り始める。強化魔法は直撃を喰らうと終わっちまうな。非殺ルールじゃないのかよ。
そう思った途端、いったん下がって助走をつけた魔狼たちが壁を飛び越えてくる。 だが、これは思うつぼだ。リナが下から火球を放ち、2匹を次々火だるまにする。
イリア-ヌにはまだ何が起きたかわからないはず、いや、「透視」なんてスキルもあったはずだ。
俺がもう一匹を木剣でたたき伏せようとした瞬間、強力な炎の渦が飛んでくる。あつっ! やばかった。とっさに出したセラミック大盾で防ぐが、炎が巻き込んできて、それだけで軽いやけどを幾つか負った。
最後の魔狼はリナの魔法とは段違いの威力の炎に、一瞬で炎上した。自分の召喚獣も平気で巻き添えかよ、容赦ねーな。
その間にイリア-ヌはまた詠唱を始めている。また召喚か?今度は、頭上に一斉に多数の影が浮かぶ。5つ?
大鷲LV4、さっきよりレベルが高いし数も多い。本気出したってやつか?壁の上からってのが面倒だ。リナに魔法で迎撃させながら、セラミックの投擲用ナイフを何本もイメージして創り出す。久しぶりに投擲スキルの出番だ。
俺のナイフ投げで飛んでる鷲に当てられるなんて期待はしちゃいないが、牽制ぐらいにはなってるか?本命はリナの火球が当たるまでの時間稼ぎだから。
リナに盾を渡して、その陰から狙わせ、俺はあえて頭上は無防備でナイフ投げをする。当然、こっちが狙われるから、俺に向かって舞い降りてきたところを、焼き鳥にしてもらう。
しかし、3羽退治したところで、次の召喚魔法ででかい熊が現れた。
そいつが、粘土壁にぶち当たって、一気に肩までの高さの壁は壊されてしまう。これ、まじに襲われたら死んじゃうじゃん?ダメじゃ無いの?立会人をチラ見するがなにも言わずに見てる。
木剣を振り回して牽制しながら、大量の粘土の塊を降らせて押しつぶす。
そろそろMPがきつい。
ようやくリナが最後の鷲に火球を命中させてくれた。
イリア-ヌがさらに呪文を唱えるが、足がふらついた。あっちもきついのか?
ここは勝負だ。粘土壁の残骸を吸収してMPを回収し、木剣を構えて距離を詰める。あっちは近接戦は苦手なはずだ。
俺が剣の間合いまで近づいたと思った時、目の前に魔物が出現した。骸骨戦士、スケルトンLV5だ。こいつの剣は本物とか、ずるいだろ!
一合あわせた途端にこっちの木剣にひびが入り、あわてて剣を引きながら横に転んで身をかわした。
追いすがってくるスケルトンから逃げながら、リナを変身させる。間に合った。俺を仕留めようとするスケルトンの背後に駆け寄った僧侶モードのリナが“浄化”をかける。
スケルトンの骨格が震え、じわじわと砂のようにかすんで崩れていった。
イリア-ヌがMP枯渇で膝をついたまま呆然としている。
「まだ続ける?」
「・・・いえ、降参するわ」
「勝者シロー!」
アトネスクが宣言する。おぉーっと歓声があがる。
「文句なしだな、あとで登録カウンターに来い」
バルトンのおっさんが言う。これで合格ってことか。
ノルテが目を輝かせて喜んでくれてる。俺の戦うところを見せたのは初めてか?好感度アップだ。
だが、まわりのざわめきは収まらなかった。
「おいおい、イリア-ヌ姐さんに勝ちやがったぞ?」
「マジかよ、上級冒険者並じゃねーのか」
イリアーヌ親衛隊の若い男が、抱きかかえるように起こして声をかけた。もう一人が何かの薬瓶を出して飲ませてる。あれはMP回復丸の類か?苦くないのがあったら俺も欲しい。
ギルドの職員の男が、俺のやけどを“癒やし”で治してくれた。
「ありがとう、たすかる」
MP回復丸は、餞別にベスからもらったのが1粒だけあるが、あれは本当に命がかかった時までとっておきたい。
「きみ、それが“お人形遊び”ってスキルなの?」
回復したイリアーヌが近づいてきて、リナを指さす。やっぱりスキル名自体は把握していたようだ。
「うん、変身させると、初心者レベルだけど魔法使いにも僧侶にもなれるんだ」
「すごいわ、それ。世の中まだまだ面白いスキルがあるもんねー」
本気で楽しそうだ。
「きみ、顔はいまいちだけど、ファッションセンスは磨けば伸ばせるから、あたしに囲われない?」
びしっと指さしてきた。まじ、ジャ○ーズにスカウトか?
顔はほっといて欲しいんだけど、この色っぽいお姉さんのチームにってのは、ちょっとひかれるかも・・・
「だ、だめです、ご主人様は私のご主人様です!」
ノルテのことをすっかり忘れてた。
「あらあら、こういうロリ巨乳ちゃんが好みだったか。若い子には勝てないわねー、でもちょおっと若すぎない?」
「いや、違うから! って、いやノルテ、好みじゃないとかそういう意味じゃないから!」
ノルテとイリアーヌに挟まれて、必死に言い訳したら、イリア-ヌは
「じょーだんよ、まあ、どっかで一緒にクエストやることもあるかもね。あたしはこのギルドでは顔が利く方だから、困ったことがあったらおねーさんに相談しなさいな」
そう言って、笑いながら親衛隊と去って行った。
カウンターに行くと、バルトンが新たなギルドカードをくれた。前の青銅製のより全体にちょっと立派な鉄のカードだ。少しだけ読めるようになった文字で、俺の名前と冒険者というジョブ、あとは発行日かな?オルバニアって字も小さく入ってるようだが。
「オルバニア家が認めた騎士身分、ってことも記載されてる。ギルドカードは一種の身分証明書だからな。ただし、この冒険者ギルドでは貴族だろうと平民だろうと、特別扱いはないぞ、冒険者は冒険者だからな」
それは構わないよ、こっちも貴族なんてがらじゃないし。
俺はさっきは途中で話が途切れたノルテの登録についても聞いてみた。いきなり模擬戦とかさせられるようだと困るが。ノルテは俺が手取り足取り育てるのだ、色々と。
「ステータスを見せてみな。16歳なら年齢的には可能だが、そもそも奴隷は独立した冒険者としての登録はできん」
無理なのか。
「ただ、奴隷の所有者が冒険者登録されていれば、その奴隷も限定的にギルドに出入りすることはできる。主人の代わりに使いや手続きに来ることがあるからな。それに、お前さんが騎士身分だから、騎士の従者としての扱いにできる」
結局ノルテには、俺がスクタリで作ったような青銅製のカードを作ってくれた。そこにはノルテの名前と並んで俺の名前が彫り込まれていた。これが所有者表示ってことか。
ともかく、これで二人とも王都でやっていける立場になったようだ。
ついでに住まいをどうしたらいいか聞いてみたところ、ギルド住居部ってカウンターを教えてくれ、年配の痩せた女性職員に相談することになった。
「1泊か2泊なら、3階にギルド会員用の宿舎があるから安く泊まれるよ。それ以上になるなら、提携してる宿がいくつかある。ただ、もし部屋を借りるなら市内はやめな、高いから、城壁の外の街で借りるのが賢い選択だね。どうせ依頼を受けたり魔物狩りとかに行くには壁の外が多いんだからね」
たしかに、どこに住むといいかは、冒険者として受ける仕事とか、活動内容にもよるな。
判断がつかなかったら、今夜はギルドの宿舎に泊まることにすればよさそうだ。そこで、俺はまず仕事、つまりギルドに寄せられている依頼とか、要するにクエストだな、そっちを見てみることにした。




