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第73話 王都の冒険者

王都の冒険者ギルドで登録しようとした俺は、難癖をつけられてLV21の戦士と模擬戦をすることになった。

 連れて行かれたのは、ギルドの建物の裏にある20メートル四方ぐらいの空き地だった。試し切り用と思われる人形やら、弓の的とかも設置されていて、これは単なる裏庭ではなく、本格的に訓練や模擬戦ができるように用意された場所だな。


 下は少し雑草は生えてるが、やや軟らかめの土だ。倒されたときに大けがをしにくいように、とか考えてるのかな。

 そしてまわりの壁面というか、となりの建物との間に、うっすら半透明の光の幕みたいなのが見える。あれは、結界かな。ベスが使ってたし、迷宮ワームのまわりにあったやつにも似てる気がする。


 そんなことを考えながら、見物人の冒険者たちをぞろぞろ引き連れ、俺たちは空き地に出た。


 バルトンより若いギルド職員が、俺とゾッグに希望の武器を聞く。俺は剣を、ゾッグは両手持ちのハンマーを希望すると、それぞれ適当なサイズの木製の剣とハンマーを持ってきた。

 ゾッグのハンマーはでかくて、木製と言ったって解体工事で家でも壊せそうな重量級のやつだ。アレでこの大男に殴られたら、死ぬよね? なんか既にハンディじゃね?


 バルトンがもう一人、ローブ姿の初老の男を連れてきた。

<魔導師LV31>だよ、巡検使のノイアンよりずっとレベルが高いじゃん。


「立ち会いは、副ギルド長のアトネスク師に務めていただく。不正があれば強制的に止めていただいた上で懲罰対象だからな?」

 強制的に止められるんだ、さらっと言うけど、それがまずすごいな。


「一方が戦闘不能か、降参した時点で終了とする。木製武器だが、その上で、相手に致命傷を与えることを意図する攻撃はせぬように。あくまで腕試しだからな。冒険者精神にのっとって戦え、他に質問は?」

「ねえよ」

 ゾッグは即答だ。慣れてるんだろう。けど、俺は魔物退治以外の経験は少ないから、わからないことだらけだ。

「えっと、確認なんだけど、時間制限とかはないんだね。要するにこいつを戦闘不能にするか、参ったさせればいい、でも殺さないように、ってこと?」

「はー?お前、なめてんのかっ!」


「ゾッグ! まあそうだ。時間制限はないから、不利になったら逃げ回ってもいいんだが、それでは互角に戦ったとは認められんぞ。それと、あんたは合格したいなら、二戦やることになるからな、それも忘れるな」

 バルトンっておっさんは、見かけはいかついが、悪い奴ではないようだ。


 ゾッグのステータスをフル表示で再確認する。


<ゾッグ 人間 男 33歳 戦士(LV21)

    スキル HP増加(大)

        近接攻撃力増加(中)

        物理防御力増加(中)

        筋力増加(大)

        近接命中率増加(中)

        物理回避率増加(小)

        闘志   威圧

        剣技(LV3) 鎚技(LV4)

        騎乗(LV2) >


 典型的な前衛、肉弾戦特化型だな。見たところ、特殊スキルとかはない。なら、やり方はシンプルだ。


 そんな俺の様子を、副ギルド長と呼ばれた魔導師が興味深そうに見ている。

「・・・では、準備はいいか? はじめ!」


 ゾッグには判別とか人物鑑定スキルはないが、経験上、冒険者LV15の俺が、自分のスキルを見られることは知っているかもしれない。ただ、冒険者である俺には魔法とかはなく、武器戦闘になると考えているはずだ。


 いきなり飛び込んできたりはせず、じりじり間合いを詰められる。俺はそれに応じて下がるから、だんだん結界の近くまで追い込まれる。仕掛けてもらった方がやりやすいんだが、そこは歴戦の冒険者なんだろう。こっちの力を見極めようとしているようだ。


 そこで、小細工だ。

「粘土」と小さく叫んで、手の中に硬いトゲトゲのセラミック球を出し、至近距離で投げつける。

 なかったものが急に現れれば驚く。大きな鎚で遮るが、重い得物は次々投げつける小さな粘土玉を弾くには向いてない。


 身をひねってかわそうとするがいくつかは命中する。

「いたっ、この野郎!」

 やっと襲いかかってきてくれた。


 あとは得意の、“足引っかけ戦法”だ。

 突然、足もとに出現した粘土の塊に足を取られたゾッグは、それでもバランスを取ろうと踏ん張ってこらえた。さすがだな。でも、足止めできれば十分だ。上から粘土の塊がドカッと降り注いだ。

せいぜい数百kgぐらいだし、軟らかい粘土にしておいたから、間違っても死ぬことはないだろう。


 粘土の山の下敷きになったゾッグの首のあたりに剣を突きつけてから、“お片付け”する。

「降参しろよ」

 首筋に木剣を押しつけられて、ゾッグはしぶしぶ負けを認めた。


「なんなんだ、これは?」

 ゾッグだけでなく、見ていた連中もあっけに取られている。それもそうだよな。


「えっと、俺は特殊なスキルを持ってる。これはそのひとつだ。スキルは使ってもよかったんだよな?」

「もちろんだ。たしかに、この男は“粘土遊び”っていうスキルを持っているようだ。自分の力だけで戦っていたのは間違いない」


 立ち会いのアトネスク副ギルド長も人のスキルを見られるようだ。そして、一呼吸置いて宣言した。

「シローの勝ちだ」

 どっと観衆が沸いた。ゾッグは冒険者たちの間ではそれなりに名の知れた存在だったようだ。ギルドの職員がゾッグの怪我に“癒やし”をかけてやっている。


「じゃあ、二戦目だな」

 バルトンが取り囲んでいる冒険者たちを見回す。

「シローのスキル的に、魔法とか特殊能力持ちが試した方がいいんだがな・・・」


「あたしがやってやろうか?」

 予想外のハスキーな女の声が響いた。がらの悪い男ばかりだと思ってたんだが。


 人波をかき分けて、場違いな派手なドレス姿の女が現れた。

 グラマラスで妖艶な美女だ。左目の下の泣きぼくろが妙に色っぽい。


<イリア-ヌ・メレト 人間 女 31歳 召喚士(LV19)

    呪文  召喚(中級)  召喚獣帰還

        魔物召喚(初級) 魔物帰還

        火 水 地 風 盾 遠話

        麻痺 帰還 結界 魔力強化

        雷 透視 魔槍 重力制御 転移

    スキル 馴致 調教 契約 意思疎通

        召喚獣遠話 飼育          >


 なんか、見たことない内容がずらっと並んでる。ジョブは「召喚士」?

 スキルとかを見ると獣とか魔物を呼び出して使うってことか?ただ、魔法も使えるみたいだ、ってことは、ひょっとして魔法使いからジョブチェンジしたのか?すごく手強そうだ。


「あらあら、もういいかしら?そんなに熱い視線で見つめられたら、おねーさん、困っちゃうわ」

「あ、っと、ごめん・・・」

 いや、謝る必要はないって。


「まあ、かわいい。でも、ざんねんね。あたしのパーティーに入れてあげるのはイケメン限定だから、きみはもうちょっとね・・・」

クスクス笑われた。傷つくな。


 気がつくと、この女の後ろに5人の男が並んでる。

年齢は俺より年下から20代後半まで、全員ジャ○-ズ系のイケメンだよ。おい。

 こっちの世界には珍しい、おしゃれなデザインの、おそらくオーダーメイドの革ジャケットみたいなのを着込んで、髪型も美容院とか無いはずなのにどうしてんの?って聞きたい感じだ。

 しかも、全員がイリアーヌの奴隷で、ジョブは戦士とかスカウトとかまちまちだがレベルも全員俺より上だよ。


 いかん、戦う前から敗北感だ。MPがみるみる削られてる感じがする。


「イリア-ヌ、そりゃあんたはレベル的には近いが、上級職だしな・・・」

 バルトンが難色を示したのは、さっきの奴とは段違いで強いって意味だろう。だが、アトネスク副ギルド長がそれを遮った。

「よかろう、イリア-ヌに頼もう」

「ふふっ、承知」

 すっとイリア-ヌの目が細くなった。


 うしろのイケメンの一人、スカウトスキル持ちが耳元でささやいている。俺のスキルとかを伝えてるんだろう。そういうのはありなんだ。

 もう一人のイケメンが、すかさず飲み物とハンカチを差し出し、別の一人は肩のマッサージをはじめた。ここはホストクラブかっ。


(あんたの願望と同じじゃないの?なに腹立ててんのよ)

 リナに突っ込まれた・・・

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