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第60話 疑惑

虎の威を借る狐のような尊大な巡検使たちに、迷宮の討伐を完了したことを証し立てるため、案内することになった。

 馬に乗った3人を、迷宮を攻略した俺たち6人のメンバーが案内することになった。


 当初は王使の案内と言うことで、俺やグレオンのような奴隷あがりではなく、セバスチャンやザグーが付き添おうとしたのだが、メイガーが、「本当に貴家のパーティーで迷宮討伐を完遂したというなら、ぜひその実力者たちに自ら案内してもらいたい」と言い出したのだ。

 要は、こんな弱小貴族の領兵で本当にやれたのか?と疑われているらしい。


 おまけにトリウマに乗って案内すると言うと、

「自由に転移できる魔法使いもおらぬとはな」

とか、最初からイヤミを言われた。レベルを見ればわかるだろうに。


 迷宮までの道のりは、いつものように騎乗で約1時間。それがこんなに長く感じたのは初めてだ。

 メイガーの横にカレーナがついて先頭に立ち、道中色々質問されていたが、それが口調だけは一応丁寧だが内容は露骨に、“こんなことも知らないのか”的なもので、後ろのセシリーがイライラしているのが筒抜けだった。


 デラシウスという冒険者は、なにやら器用に馬上で羊皮紙にメモをとっている。おそらくは地図スキルなどを駆使して一番調査らしい仕事をしているようだ。

 そんな中で、ベスは空気を和らげようとしていたのか、ノイアンという魔導師に魔法のことをあれこれ質問していた。

 このあたり、イヤミを言われた相手に俺だったらとても素直に教えを請うたり出来ないと思うけど、ベスは素直というか、これまで魔法談義が出来る相手がいなかったから知識欲がまさったのかもしれない。


「じゃあ、ドウラスまでは王都から一度で転移されたんですか!すごいです・・・」

「うむ、魔法使いでもLV15で転移を習得するが、距離はMP次第だ。一度は行った経験がある場所にしか転移できぬから、スクタリに直接は飛べなかったが、今回の経験で、次からは自在に行き来できるようになったわけだ」

 おじさん魔導師は、娘ぐらいの年の女の子に手放しで賞賛されて、まんざらでもないようだ。


 聞き耳を立てたそれぞれの会話をつなぎ合わせると、こういうことだな。

 カレーナが3日前の夕刻に送り出した早馬は、翌々日、つまり昨日の午前中に王都に着いた。

 そして、幸いすぐに内務大臣らの耳に届き、昨日の午後、事実確認のためにメイガーらが派遣されることになった。奴らは“転移”の呪文でドウラスまで飛び、そこで現在の領主である子爵から馬を借りて、夕暮れにスクタリに入ったというわけだ。


 どうも、使者の態度が冷淡なのは、この子爵からあることないこと吹き込まれている節がある。


(現在のドウラスの領主ブレル子爵は、元々はオルバニア伯爵の部下のような立場だったんだけど、伯爵家が凋落した時に実力でドウラスを手に入れた人。できれば伯爵家が滅んでくれて、名実ともにこの地域一帯を手に入れたいと望んでいても不思議はないわね)

 リナ先生の念話もキナ臭い。


 ラルークは一人、我関せずという顔で最後尾についているが、館を出る前から、何かまわりの気配を気にしている。


 番所について、当番の兵(きょうは奴隷仲間のスピノがいた)に異状がないか聞いていると、突然、魔導師と冒険者が消えた?

 少し離れた場所だったので、カレーナたちは気づいていなかったようだ。


 そして、ほんの数秒後、また2人が少し離れた場所に現れた。たまたま木の陰になったのを見失っただけか?

 ふと、ラルークがじっと奴らを見つめているのに気づいた。目が合うと、深刻そうな顔で首をかしげている。

 俺の見間違いではなかったようだが、どういうことなのかわからない。数秒でトイレでもあるまいし、ジグソーパズルの大事なピースが欠けてるような感じだ。


 一階層の奥までは騎乗で進み、そこからは徒歩になって、番兵たちが取り付けておいてくれたハシゴで下の階層に降りた。


 巡検使たちは、迷宮内部の様子を注意深く調べて図面に記録したり、出現した魔物の情報も聞き取りながら進むので、足取りは遅めだ。

「二階層の魔物は?オーク中心と、ふむ、矛盾はないですな・・・」


 ただ、いちいちこっちの説明を疑ってかかってる口調なのが、ただ後ろに付いて歩いているだけの俺にも不快だ。

 アンデッドの大群と戦った話の時には、数を盛りすぎじゃないか的な言い方もされた。


 その三階層で、ちょうど魔物の気配があった。ゾンビが何匹か湧いているようだ。

「ちょうどいい、私たちの戦いをご覧いただきましょう!」

 鬱憤が溜まっていたんだろう。セシリーが嬉しそうに言うと、俺にあるよな?と確認する。


 はいはい、銀の武器だよね。

 俺はアイテムボックスから、念のため最小限持ってきた銀の武器を出す。剣3本と矢筒2つだ。セシリーとグレオンが剣を、カレーナとラルークは矢を受け取る。


 だが、一番乗りはベスの魔法だ。火の呪文が放たれ、あ・・・はずれた。

 ベスが思い切りへこんでる。


 しまった。きょうのベスは王都の使者を迎えるのにちゃんとした格好で、とか意識したんだろう、メガネをしてない!命中率の低いドジっ子に逆戻りだ。

 それで調子が狂ったのか、セシリーとグレオンも一太刀では仕留められず、一匹は危ういところでカレーナが浄化して片付けることになった。


 巡検使たちは無言でうなずき合う。


 その後は、階層の主の結界ではワームの抜け殻をチェックするなど、黙々と記録を取り続け、あまり俺たちに説明さえ求めなくなった。

 幸か不幸か魔物にも出会わず、地下五階層まで降りた。


 メイガーがぽつりと言った。

「まことに五階層あったのですか。そうすると魔物のレベルは15~20ぐらいになるはずですが?」

「はい、四階層の主がレベル16のメデューサ、五階層ではレベル17のナーガにも遭遇しました・・・」


 ふぅー、とメイガーがため息をついた。

「もう、よろしいのではないですか?」


「どういうことでしょうか?」

 カレーナが首をかしげた。


「いかに権益を守りたいとは言え、自力で成し遂げてもいない迷宮討伐を己が功と報告するは、貴族として恥ずべき振る舞いとは思われぬか?」

「な、なんですって」


「どう見ても貴女たちに、このレベルの迷宮討伐など出来るはずがない。おそらくは有力な冒険者か傭兵団を頼み、極秘に討伐させたのでしょう」

「無礼な!なにを根拠にそのような難癖をつけるか!」

 セシリーがブチ切れて、剣を抜いた。気持ちはわかる。


 貴族以外の言葉など聞くに及ばず、の態度を見て、カレーナが深く息を吸って少し震えた声で言葉をつないだ。

「セシリーの言うとおりです。いかに巡検使といえど、非礼ではありませんか。私たちが迷宮ワームの討伐を成し遂げたことは、きのうご覧いただいた魔石を鑑定にかければ明らかになるはずです。根も葉もない中傷をなさるなら、相応の根拠をお示しいただきましょう」


「まず最初にお断りしておくが、私が丁重に話しているのは、あくまで、亡き伯爵家のご令嬢に対する儀礼的なものであって、現時点であなたは伯爵でもなければ伯爵家の後継と認められたわけでもない、公式には貴族の身分でさえないのです。そこをお忘れなきよう」

 カレーナが言葉を失ったのを冷淡に見下ろして、メイガーは続ける。


「長年、巡検使を務めてきた私の経験上、五階層の迷宮の討伐には、少なくとも平均レベル15以上のパーティーが必要だ。貴女方にはとても無理でしょう。三階層のあの程度のアンデッドに手こずるようでは・・・」

「それはっ」

 泣きそうな顔で声をあげたベスを、カレーナが手振りで止める。


 メイガーは、五階層の奥の方に目を向けてから振り返った。

「だいいち、この先には水域がありますな。下層に水域のある迷宮は特に難易度が高い。迷宮の奥で大がかりな普請をするには戦闘力だけでなく、財力・動員力ともに必要だが、失礼ながら貴家にはどちらも欠けていることは調べがついておりますよ。どう渡ったのです?」


「姫さま、見せてやっていい?」

「シロー」

 結局、こいつらは俺たちが討伐したって事実自体を、ねつ造だと思ってるわけだ。だとしたら、それが可能だと示すしかないよね。


「ついて来てよ、おっさんたち」

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