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第41話 迷宮三階層、三たび

迷宮地下三階層に三たび挑むことにした俺たちパーティーは、どう戦うか作戦を練っていた。

 迷宮に入り、三階層の奥、昨日MPを絞り出して粘土壁を作っておいた所へと向かう。


 ラルークの“索敵”と俺の“地図”をフルに使って魔物が途中にいないらしいことは把握できていた。そこで最初から早足で一気に進んだのだが、それでも迷宮入口からは3km以上の道のりだ。ある程度の起伏もあって暗い洞窟を歩くし、ロープで下りるところもあるから、やはり1時間半ぐらいかかった。


 途中で小休止を挟んで携行食をとったこともあるが、街を出てからだと3時間近くかかってる。下層に進むにつれて、大変になってくるな。


 昨日壁で封じる前に探ったところ、この先は魔物の巣になりそうな横穴は2つだけ。そして、迷宮の主の結界に至るはずだ。



 壁の向こうでも、俺たちの接近を察した者がいるのだろう、気配がうごめいている。だが、ある意味では横穴にこもられているより、やりやすい面もある。


 作戦を再確認し、きょうは先に硬化セラミックの大盾を2枚作り出す。


 俺とグレオンがそれぞれ持って歩けるギリギリの重さのものだ。他のメンバーが弓を射られるよう、のぞき穴もあけてある。

 こいつを移動式トーチカのように使うのが、きょうの基本スタイルだ。


「スケルトンが30、グールが20ってとこかな。ゾンビも少し残ってるが、アンデッドロードの気配は今のところしないね」

 最初は尽きることがないかのように思えた三階層のアンデッドも、さすがに残りは少なくなっているようだ。


 ラルークの報告に互いに頷き合って、それを合図に粘土壁を消す。

 同時にベスが炎の魔法で掃射する。


 壁の向こうに集まっていたスケルトンたちが、前列の者は火線に両断されるが、後ろにいて仲間の陰で助かったものは弓に矢をつがえて放つ。とは言え、粘土壁を消すタイミングはこっちが決められる分、数秒は遅れる。

 スケルトンの矢がこちらに届いた時には、既にベスは俺の盾の陰に隠れていた。


 そして、ラルーク、カレーナ、セシリー、リナが、盾ののぞき窓から放った矢は、スケルトンたちを飛び越え、その後ろに続くグールたちを狙う。


 スケルトンたちが、矢は防がれると判断したか、錆びた剣や斧を手に押し寄せてくる。


 のぞき窓から、ベスが今度は“麻痺!”と唱えて、新たに覚えたらしい魔法を放つ。が、

「ダメです」


 どうやらアンデッドには、この手の魔法は効果がないらしい。だが、ベスも半ばためしに使った、ということらしく、結果は予想の範疇だったようだ。

 間髪おかず再び炎を掃射。

 接近してきた数匹がなぎ倒される。


 それでも、アンデッドに恐怖心はない。足の速いスケルトンがまだ10匹以上、その後ろからグールやゾンビの群れが迫ってくる。


 迷宮の通路は、大盾を二つ並べると横を抜けられるのは、2,3人程度の幅しか残らない。

 俺とグレオンは中央に隙間が出来ないよう接近する。


 そして、もう彼我が近づきすぎて、スケルトンの方も矢は使えないと見たセシリーが、盾の陰から出て、盾のサイド、壁とのわずかな隙間を埋める位置で迎撃する。 反対側の隙間はリナが剣を構え、カレーナとラルークが、それぞれセシリー、リナを支援する。


 その間も、ベスは盾ののぞき窓から正面の群れを焼き払い続ける。

 トーチカからの機銃掃射のイメージだ。


 前衛のスケルトンが壊滅し、グールたちも半数以下になったところで、俺たちは盾を構えたまま前進を始める。

 重いから速度は出ないが、安全確実に進める、スクラムトライを目指すフィフティーンだな。


 目指すは、横穴のところだ。

 グールを駆逐し、最後の2つの横穴が見えてきたところで、ラルークが中の気配を探る。


「左が20、右は15ぐらい。スケルトンはいない。左に・・・アンデッドロードが1匹いる!」

 昨日一度戦っている魔物の気配を、ラルークが的確に捉えてくれるおかげで、すごく助かるな。


 俺は、数の多い左の横穴を粘土壁で塞ぐ。そして、数が少ない右の穴へ。


 横穴は例によって壁が光らず中が暗い。そこに照明弾代わりの炎。ベスのMPを節約するため、打ち込んだのは、魔法使いモードに変えたリナだ。

 リナのMPが俺から供給されてるなら、こっちが先に枯渇するだけ、ってことになるんだが、なんとなくリナが魔法を使っても、すぐに俺に影響は出てない気がする。


 飛び道具のないグールだけ十数匹なので、ここはベスの魔法に頼らず、銀の矢と剣で戦う。皆、レベルが上がってきているのと、狭い横穴では数の差はハンディにならないこともあり、さほど苦戦せず殲滅できた。


 一息つくと、残る左の穴に向かう。

 こっちにはアンデッドロードがいるらしい。つまり、魔法を使えなくなる可能性があるが、レベルアップでカレーナも同じ“静謐”を唱えられるようになっている。


 だから十分な勝算がある。考えた段取りを確認してから粘土の封印を消す。


 その瞬間に詠唱を完了していたベスの炎が叩き込まれる。それに続いて、カレーナの詠唱が“静謐”を完成させる。


 アンデッドロードも静謐を唱えようとしていたのか?あるいはもっとヤバい魔法を使おうとしていたか?それはわからない。

 その前に炎が魔物の半数以上を焼き払い、その直後にこの場の魔力の波動が押さえ込まれて、彼我共に魔法が使えなくなったからだ。


 魔物たちの中央にいたアンデッドロードが動揺した様子を感じた、というと擬人化が過ぎるだろうか?

 

 残り数匹のグールたちに、銀の矢を放つ。残ったのは5匹。さらにもう一斉射。残りは3匹とアンデッドロードだ。


 グールより動きの速いアンデッドロードが、槍を持って突進してくる。こいつは剣でなく槍か。俺は大盾を構えて他のメンバーの前に立つ。

 奴の槍が俺の盾を強烈に突き、俺は勢いに押されて体勢を崩したが、なんとか盾で槍を受け流す形になる。


 グレオンの斬撃を、奴は槍を引き戻してかろうじて弾く。

 だが、そこにセシリーとリナが左右から斬りつけた。やったか。


 アンデッドロードの体から瘴気が立ち上り、鎧兜を残して実体が消えていく。


 ようやく残るグールたちが迫ってくるが、ラルークとカレーナが立ちはだかる。

 俺も盾を手放し、剣を抜いた。


 これまでで最も多くの魔物を相手にした、3階層の掃討がようやく終わった。



 横穴から迷宮のメイン通路に戻る前に、俺は新たに「粘土遊び」のスキルアップで得た“とっておく”という、またも脱力ネームの能力を使ってみた。

 これは、リナ先生の知識によると、手間をかけて成形をした粘土作品を、吸収してなくしてしまうのでなく、そのまま取っておけるというものらしい。


 つまり、リナのセラミック鎧のように可動部分などの細かい加工をしたものは、いったん吸収すると、また作るのに時間がかかるが、それをいつでもまた取り出せるというわけだ。

 実際はセラミック鎧は、冒険者スキルのアイテムボックスに収納できたのでそうしているが、大盾はアイテムボックスには大きすぎて入らなかった。

 そこで、こいつを“とっておく”で収納したのだ。


 もっとも、収納と言ってもどこに消えたのかはわからない。粘土スキル専用の、より大きなアイテムボックスみたいなのがある、ということになるがナゾすぎる。


 もう一つ、これがありがたいのは、MP消費が結果的に減ることだ。粘土を消して回収できるMPは最初に作り出した時の数分の一程度、というのが実感だ。

 これに対して、“とっておく”やアイテムボックスに入れておいたものは、再び出して使うときにMP消費がないからな。


 ともあれ、こうして俺たちはついに3階層の最奥、階層の主の結界の前にようやくたどり着いた。


 この迷宮が発見されたのは3年前だと言う。

 理屈上、運が良ければ、ここが迷宮の終着点と言うことになるはずだ。

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